236話 青のデッキ
「あと少しで森の入り口だ。そこからなら、フーラが見えるだろう」
「そうか。思ったよりも遅れなかったな」
「まあ、お主らの呼び出す魔獣たちの力は規格外だからな。馬だったら、到着にはあと数日必要になっていたと思うぞ」
村を出発してから4日後。
俺たちは領都フーラ目前までやってきていた。
本来であれば昨日到着しているはずだったのだが、予定通りのルートを大きく外れることとなり、旅程に遅れが出てしまっていた。
反乱軍の部隊がフーラ周辺を巡回しており、かち合いそうになる度に迂回せねばならなかったのだ。
本来予定していたルートの倍近い距離がかかっているかもしれない。
それでも1日の遅れで済んだのは、ゼド爺さんの言う通りモンスターたちのおかげだろう。
モンスターには多少無理をさせてしまったが、お陰でここまでは大きな問題なく、進んでくることができた。
「ここからは歩きでいく。お前らはこの森で待機していてくれ」
「ガオ!」
俺たちと一緒に行動するのは、解放されし闇の精霊・メーメック=ヌー、大精霊フォルタル=クルア、ダークアイズ、蔦鼠、岩甲殻の大犀の5体だ。
フォルは変装をして人間のふりをし、メー、ダークアイズ、蔦鼠は背嚢の中。大犀は荷車を引く使役獣として同行する。
森に残る組は、新しく召喚された虎人の大剣士×2、ガルフ=ナザ、バルツの森の主、ハーピーバーサーカー、霧豹、黒煙火山の魔術師長、コボルトの狙撃弓兵、ケツァールの王×6、水辺のモアたちだ。
できるだけ森の奥でひっそりとしているように命令しておいたので、見つかる可能性は低いと思う。
最悪、逃げればいいしね。騎馬部隊でもなければ、追いつくことはできないはずだ。
「町に着いたら、情報収集だ。場合によっては、イオリにカードを使ってもらうことになる」
「はい。任せてください」
道中、俺はイオリのデッキについて説明を受けていた。とは言え、彼女のデッキは初期のままだったが。
デッキを一周させる前に、塔へと突入したってことなのだろう。
一度死んでスフィンクスに吸収された訳だが、デッキはリセットされていなかった。カード使いとしての力はスフィンクスにそのまま受け継がれ、そして彼女に戻ってきたのだ。
手に入れた土地カードや、召喚しておいたオブジェクトもそのまま残っているらしい。
まあ、そのお陰で彼女は青魔力を毎日入手できているし、すぐに戦力になってくれそうなのは有り難かった。
そんな彼女のデッキは、特殊な能力のカードが多い。
対象のオブジェクトを破壊する『金属融解』や、コスト1以下のモンスターのコントロールを奪う『魔獣調教』。短時間姿を消せる『透明化』や、相手の手札を覗き見る『自白』など、面白いカードが満載だ。
コストの重いカードが多いんだが、それを解消するカードもデッキに組みこまれている。
吸い上げる貯水槽 青5 SR オブジェクト
青を生み出す土地を支配している場合にのみ、召喚することが可能。あなたは万能、青以外の魔力を得ることができなくなる。
毎日、青魔力を1点生み出す。
あなたの所持する青魔力は日を跨いでも消滅しない。あなたの所持する万能魔力は、毎日終了時に消滅する。
青以外の色魔力を得られなくなるという、青単色のデッキでなくては使えないカードだ。しかも、万能魔力が色魔力と同じように消滅するようになってしまう。
そのかわり、ターン終了時に消えるはずの青魔力をストックできるようになるという能力があった。
しかもこのカードの恐ろしいところは、万能魔力と違って溜めておける魔力の上限がないことだった。
20を超えて青魔力をストックしておけるのだ。
イオリはお世話になった村の一角にこの貯水槽を設置したそうだが、最大時で22点まで青魔力を溜めこむことに成功したという。
現在、貯水槽から得られる1点に、土地から生み出せる青1点が毎日ストックされている。
死ぬ前は雨乞い蛙を使役していたそうだが、スフィンクスに殺されてしまったらしい。
「ここ数日はカードを使わずに済んでいたお陰で、魔力が10点も溜まりました」
「手札のカードは全部使用できるってことだな」
「はい」
彼女の今の手札は、肉食トビウオ、透明化、自白、阿呆のアルバトロス、魔獣調教、島食い蟹の6枚である。
肉食トビウオ モンスター:魚類
青1 2/1 C
青1:5分の間、飛行を得る。
あなたが青の土地をコントロールしていない限り、このモンスターはフィールドに存在することができない。
透明化 青3 C スペル
対象は10分の間、透明を得る。
透明:全てのアタック、スペルの対象にならず、ブロックされない。
自白 青2 C スペル
対象プレイヤーの手札を見ても良い。
阿呆のアルバトロス モンスター:鳥
青2 2/1 C
飛行
他の飛行を持ったモンスターがアタックした後にのみ、アタックが可能。
魔獣調教 青4 C スペル
対象の、コストが1以下のモンスターのコントロールを永続的に得る。
コストのないモンスターは、コスト0として扱う。
島食い蟹 モンスター:蟹
青8 4/8 R
毎日、青2を支払わなければ、このモンスターは破壊される。
対象のあなたのコントロールするモンスターに飛行を与え、可能ならばアタックさせる。そのモンスターは、アタック後に破壊される。
モンスターは使い辛いだろう。肉食トビウオは水中でなければすぐに死ぬ。それこそ、飛行を得られる5分が限度であるらしい。
阿呆のアルバトロスは、とにかく頭が悪いという。先導してくれる仲間がいないと、命令を聞かないらしい。
島食い蟹を召喚したことはないそうだが、イラストからしてかなり巨大だ。いま召喚するメリットはない。
逆に、スペルは非常に優秀だった。透明化と魔獣調教は彼女が既に効果を実証済みだ。切り札になり得る。
そして、自白。これは能力だけを見ると、相手がカード使いでなければ意味がなさそうだ。
しかし、そんなことはなかった。その名の通り、相手をどんな質問にも嘘偽りなく答えてしまう状態にしてしまうそうで、事件の犯人探しに役立ったそうだ。
「フーラが見えたぞ」
「あれが……。ここらでも大きさが分かるぞ」
「確かに、ゼニディアとは比べ物になりませぬな!」
ワフが言う通り、平原の先にみえる領都フーラは、ゼニディアの5倍以上はありそうな都市であった。
「……よし、行くぞ」
「了解であります!」




