234話 地脈の異変
反乱の情報を聞いた俺たちは、急いで岩塩の採掘場へと向かった。
白のカード使い、鳩村由依と連絡を取るためである。
渦中にいるであろう彼女から話を聞ければ、色々なことが分かるはずだった。
採掘場の現場責任者は、リシュー子爵の配下である。こちらについてある程度の情報を与えられており、ソルベスの村の人間と言えば会ってもらうことはできた。
本当はここでユイと接触できれば最高だったんだが、さすがにそこまで都合よくはいかない。どうやら、前線に出てしまっているらしい。
一応、ユイには伝言を頼んでおいたが、どこまで伝わるかは分からなかった。
とりあえず、俺たちが連絡を取りたがっていること、重要な話があるということが伝わればいいんだが……。
あと、ここでも反乱に付いて話を聞いてみたんだが、目新しい情報は手に入らなかった。ただ、北部全てが反乱に参加しているわけではないらしく、ゼニディアは反乱に不参加であるらしい。
一旦、樹海の拠点へと戻り、今後の事を相談する。
「主、これからどうするのでありますか?」
「うーん……。そうだなぁ」
本来であれば、ソルベスの村を経由してナール国へと入り、領都フーラを目指す予定だった。
しかし、反乱が起きたとあっては、予定通りは難しいかもしれない。
「一度村へ戻って、情報収集をするか……」
「そうでありますなぁ。急ぎたいのはやまやまでありますが、内乱中の国は危険でありますからな」
「安全第一。いのちだいじにだ」
「儂も賛成だ」
ワフとゼド爺さんも賛成してくれたし、じっくり情報収集をしてから行動開始だな。
そう思っていたのだが、それに待ったをかける存在がいた。
「待ってください」
「フォル? どうした?」
それは大精霊のフォルだった。しかも、彼女だけではない。その足元には小型化したガルフ=ナザがおり、俺の背嚢からはメーが顔を出している。
精霊達から何か話があるらしい。
「地脈に混入する混沌の量が、数日の間にかなり増えています」
「ゴォ」
「メー!」
フォルの言葉に同調するように、ガルフとメーも体を震わせた。彼らにも、同じことが感じ取れているらしい。
「それって、俺たちが塔を攻略して、混沌の王の居場所を知ったからか?」
「それが切っ掛けとなっていることは確かでしょう」
「影響はどれくらい出そうなんだ? 確か、混沌の量が増えたら、魔獣や精霊だけじゃなく、そこらの動物や人間が混沌化することもあるって……。そう言ってたよな?」
「今日明日、この近辺で急激に混沌憑きが湧き出すほどじゃないわ。でも、このまま混沌の量が増え続ければ……」
「混沌憑きが、湧き出す?」
「ええ。地脈の近くから段々と広がり、その内世界中に広がるでしょう」
ある日突然、隣人が混沌憑きに変貌し、暴れ出す世界。地獄だ。
「猶予は?」
「およそ15日」
「まじかよ!」
短すぎる! それじゃあ、移動するだけでもギリギリだぞ?
「ゼニディアを抜けて、一気に南下するか?」
ポーション類や食料など、買い足す必要があるから、どこかの町によらなくてはならない。理想はフーラだったが、その時間があるか?
「それに、足の問題はどうする? 手札には足になりそうなカードはケツァールの王だけだが……」
樹海ならともかく、ナール国内を飛んで移動するのはかなり目立つだろう。夜にだけ移動するとか?
俺がブツブツと悩んでいると、ゼド爺さんが口を開いた。
「トールよ。焦れば事を仕損じるぞ。落ち着くのだ」
「あ、ああ。すまん」
「ゼニディアではまだお主の手配は解かれておらぬだろう。それに、ワフの顔も見られておる。拘束されるようなことにでもなれば、それこそ間に合わんぞ」
「それはそうか……」
一度発見された後に力ずくで逃げ出せば、今まで以上に厳しい追跡があるだろう。そこで、顔がハッキリと割れてしまえば、今度こそ正確な手配書が出回るかもしれない。
「急がば回れっていうしな。フーラを経由しよう」
「うむ。村で馬を借りても良い。迷惑をかけるのは本意ではないが、そうも言ってられんしのう」
「そうだな」
結局、俺たちは当初の予定通りに、ソルベスの村へと戻ることにした。
俺たちはケツァールの王を召喚して、跨っている。
ケツァールの王
黄4 0/1 SR
飛行、破呪、増殖1
場から墓地に送られた場合、このカードを手札に戻す
モンスターを1体生贄に捧げる:ターン終了時まで+1/+1強化される。
増殖能力を使ったことで、今は6体のケツァールの王がいた。俺、ワフ、エミル、ゼド爺さん、強化個体である虎人の大剣士、コボルトの狙撃弓兵が乗っているのだ。
水原は自前のモアに乗りながら、バルツの森の主たちとともに陸路で追従してきている。
足手まといである俺と水原がモンスターに乗っているおかげで、道程は驚くほどに順調であった。
村には霧豹や黒煙火山の魔術師長を駐留させている。そこから戦力を補充すれば、樹海で減った俺の配下も賑わうだろう。
「村が見えてきましたぞ!」
「よし、何とか今日中には到着できたか!」
何か、反乱について新しい情報があればいいんだがな。




