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232話 拠点への帰還


 樹海の深部を抜けた直後。


「ブモ!」

「な、何か来ます!」

「いえ、大丈夫ですよ。ミズハラさん。あれは仲間ですから」

「そ、そうなんですか?」

「はい」


 近づいてくるミノタウロスたちを見て身構えた水原を、エミルが宥めている。女性同士、この短期間で仲良くなったらしい。


「この周辺の見回りをしていたのか?」

「ブモ!」


 俺たちに挨拶をしたミノタウロスが、そのまま背を向けて駆けて行ってしまった。多分、他の仲間に俺たちの無事を知らせに行ったのだろう。


 まあ、フォルがいれば道に迷うこともないし、案内役が必要なわけでもないからいいんだけどさ。


 さすが樹海を己が領域とする大精霊だ。彼女は樹海の中でも一切迷うことがなかった。


 樹海深部からの帰還でも、その能力は大いに役立ってくれたのだ。フォルがいなければ、もう数日はかかっていただろう。


 あと、水原がモンスターの召喚に成功したことも大きい。


 やはり水原は運動が得意でないらしく、俺以上に体力がなかった。バルツビーストの背に乗せようにも、その揺れのせいで酔ってしまうのだ。


 最初は頑張って耐えていたんだが、元々酔いやすい体質らしい。さすがに意識を失った彼女を、無理やりバルツビーストに乗せる訳にはいかなかった。


 ただ、2日目になって魔力を補充できたことで、自分を乗せて移動できるモンスターの召喚に成功したのである。


水辺のモア モンスター:魔鳥

青4 2/3 UC

先制、防空


 要は、羽色が青い大きめのダチョウだった。体長は4メートル近い。しかも、翼を羽ばたかせることで15メートル以上の跳躍も可能だ。


 騎乗を想定していないのはバルツビーストと同じだが、その走り方は上下の揺れが少なく、人を乗せることに適していた。


 このモンスターのお陰で水原の足の遅さが解決された結果、次の足手まといは俺であった。なにせ、ダントツに遅いからね!


 おかげで、途中からはバルツビーストの背中に乗る羽目になったのだ。メチャクチャ酔ったけど、樹海で魔獣に襲われるよりはマシである。


 ポーションを飲んで誤魔化しながら、なんとか耐えたのだった。


「見えた、あれが俺たちの拠点の一つだ」

「ストーン・フォートレスですか?」

「ああ。とりあえず、今日はあそこに一泊しよう。いい加減、安全な場所で休息したい」

「賛成でありますぞ!」

「儂もだ」


 体力自慢のワフやゼド爺さんであっても、樹海での強行軍は厳しかったらしい。エミルもコクコクと頷いて賛同している。


 みんなも体バッキバキなんだろう。ワフやエミルが体をグーッと伸ばして、コリをほぐしている。


 ワフが水原にストレッチを教えてやっているな。その調子で仲良くなってくれ。



「エミルとワフは、水原を部屋に案内してやってくれ」

「了解であります!」

「わかりました」


 

 すでに日付が変わり、明け方になろうとしている。


 女性陣やモンスターたちは休憩に入ればいいが、俺にはもう一仕事残っていた。


「悪いが、ゼド爺さんは少し付き合ってくれ」

「無論だ。今後についてだな?」

「ああ。どう動くのがいいか……」


 俺たちが向かわねばならないのは、ナール国の王都。一応手配されてしまっているし、向かうルートも複数ある。


 どの道をどう使うのがいいのか。この世界の常識に疎い俺では、判断が付かなかった。


「儂としては、一度ソルベスに向かうのが良いと思う」

「ソルベスに? ああ、そっちから南下してナール国に入るってことか?」

「そうだ。手配書がでたらめとは言え、ゼニディア周辺では危険が残る。町にはお主の顔を見た者もいるからな」


 僅かでも危険が残るゼニディアを避けるのは当然か。ゼニディアの領主はゼニドーという男爵だったが、そこから西側はフール伯爵という貴族の領地だったはずだ。


 それなりに広く、北部では有数の貴族と言う話だった。俺たちが世話になったソルベスの村の東側に位置し、大きな領都もあるという話だった。


「領都フーラなら大きな冒険者ギルドもある。そこで、樹海で倒した魔獣の素材を売ればいい」

「俺たちは冒険者じゃないけど、上手くいくか?」


 売れたとしても、素性を調べられるんじゃないか? 樹海の魔獣なんて、メチャクチャ珍しいはずだし、出所を聞かれるだろう。


 しかし、ゼド爺さんは大丈夫だという確信があるらしい。


「フーラには少々伝手がある。素材を売りさばく際に手を貸してもらう程度はできるはずだ」


 元々、ゼド爺さんはこの国の騎士だったんだ。色々な場所に知り合いがいるのだろう。


「なら、フーラでお金を稼いで準備を整えて、そのまま南下するのがいいか」

「うむ。フーラであれば、様々な道具も手に入れることが可能だろう」

「ソルベスに立ち寄ってから、南下っていうルートか」


 ディシャル様や村長に挨拶もしておきたいし、マリティアやトビアの様子も知りたい。塩の採掘状況も気になるしな。


「じゃあ、明日は樹海の戦利品を解体して、終了次第出発だな」

「うむ」


 俺としては、陣容をどうするか悩む。今後、人の多い都市へと向かうなら、目立つ大型のモンスターは連れていけないだろう。


 ダークアイズやコボルトの狙撃弓兵はどうするかね? 目立つことは目立つが、その能力は非常に役に立つ。


 それ以上に目立つバルツの森の主や、ハーピーバーサーカーは留守番決定だろう。


「それとも、町に入る際には外で待機させれば、連れて行けるか?」


 混沌の王との戦いの事を考えれば、全戦力を連れて行ってもいいくらいなんだよな……。


 隠密性を重視するか、戦力を重視するか。


「うーん……」


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