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231話 樹海深部の脅威


 樹海を抜ける道行は、想像以上に過酷なものであった。


 行きは、俺たちは空路。バルツビーストたちは陸路で、全速力で駆けていた。それによって、厄介な魔獣などを振り切って進むことができていたのだ。


 だが、今は俺たち人間の速さでしか進めない。結果として、多くの魔獣と遭遇することとなっていた。


 全身に硬い甲羅を持ったゴリラのような魔獣や、1刺しで魔獣を殺す猛毒を持った超小型の蜂。塔の前でも戦った犬モドキの群れに、20本近い足を持った蜘蛛に似た魔獣の大群。


 どれもが厄介で、恐ろしい相手である。しかも現在戦っている相手は、それらのどの魔獣よりも危険だった。


「シュルルルッ!」

「ガアアァァ……!」

「くそっ! バルツビーストがやられている間に攻撃だ!」


 相手は、全長30メートルほどの巨大な蛇だった。パワーがあるのは勿論、動きが非常に速く、その攻撃はバルツビーストですら躱すのが困難なのだ。


 噛みつきと突進。尻尾での薙ぎ払いに、口から吐く粘着性のある唾液。その攻撃方法は多彩である。


 それだけでも厄介なのだが、本当に恐ろしいのがその鱗だった。全身の鱗が、一瞬で棘のように変化するのだ。長い物では2メートル近くまで長くなり、近くにあるものを無差別に串刺しにする。


 しかも鱗には麻痺毒があるらしく、掠っただけでも動けなくなった。


 棘化している間は動けないようだが、素早く棘化を繰り返すせいで、一ヶ所に留まることもない。


 遠距離攻撃で仕留められればいいんだが、弓は堅い鱗に弾かれてしまうのだ。唯一、攻撃が通るのは、鱗が棘状に変化している時だ。


 その間、鱗に隙間ができるので、弓が通るのである。しかし、近接攻撃しかできない獣たちには、攻撃の手段がなかった。


 そもそも、樹海の中では植物が邪魔をして、遠距離攻撃は使い辛い。植物の精霊であるフォルならば問題ないんだが、彼女には水原の護衛を頼んでいる。


 樹海のスペシャリストである彼女に任せておけば、心配はいらないだろう。だが、そのせいで決め手に欠けている。


「まずは奴の素早い動きを封じないと……。メー、奴を拘束できるか?」

「メメー!」


 大蛇が再び鱗を棘に変化させた瞬間、メーがその胴体に覆いかぶさるように巻き付いた。スライムのように形状が変化する闇精霊のメーであれば、棘を無視することができるのだ。


 パワーで負けているせいで完全には抑え込めていないが、蛇の動きが鈍る。


「フォル! ガルフ! やれ!」

「いくわ!」

「ブルオオォ!」


 メーが蛇を抑え込んでいる間に、フォルが周辺の樹木を操り、ガルフが大地を変形させる。


 数十秒ほどで、大蛇は全身を拘束されていた。無数の植物と、触手のように変化して巻き付く大地によって、身動きを封じられている。


 拘束された大蛇には、口を開けて威嚇する程度しかやれることはない。


「いつ脱出されるかわからん! 今の内に倒せ!」

「承知! ぬりゃああ!」

「ガアアァ!」

「ワフもいきますぞ! ちょりゃああ!」


 ゼド爺さんたちは、蛇の頭部に攻撃を集中させた。強化された爺さんたちの攻撃力であれば、当たりさえすればダメージを与えることができるのだ。


 結果、蛇は頭部を粉々に破壊され、命を散らしたのであった。


「勝利であります!」

「なんとかなったか……」

「この大蛇の素材、どうするのでありますか? かなり強い魔獣でしたし、高く売れるかもしれませぬぞ」

「あー。でも、持ってけないだろ?」

「むぅ。そうでありますな」


 ワフが言う通り、こいつは相当上位の魔獣だったろう。トロール以上かもしれない。


「では、牙と、鱗を数枚拝借しておきますか」

「まあ、それくらいしかできないよな」

「あの、待ってください。これを!」


 俺たちが相談しているところに声をかけてきたのは水原だ。その手には、大きな袋を持っている。


「それ、拡張袋か?」

「はい。シーカー国で手に入れたものです」


 魔法道具屋の店主の病を、カードで癒した対価に手に入れたそうだ。話を聞いてみると、俺たちの持っている物よりも相当大きい。


 蛇全てはさすがに無理だが、3分の1程度は入りそうだった。とりあえず袋に入れて、安全圏で解体しよう。


 ここでは無理だ。蛇の血の匂いを嗅ぎつけ、いつ魔獣がやってくるかわからない。


「じゃあ、怪我したやつらの応急処置をしたら、急いで出発しよう」

「了解でありますぞ!」



 その後、俺たちは戦闘を繰り返しながら、なんとか樹海の深部を抜け出ることができていた。


 こっちの世界に来てから、最も戦闘をし続けた3日間だったかもしれない。


 樹海の北部から脱出するまでの3日間で、俺のモンスターも入れ替わっている。


 塔から樹海に逃げ込んだ際の布陣はこんな感じだ。


虎人の大剣士、ガルフ=ナザ、バルツの森の主×2、バルツの森の見張役×2、バルツビースト×2、解放されし闇の精霊・メーメック=ヌー、コボルトの狙撃弓兵、大精霊フォルタル=クルア、ポルターガイストメイド、魔眼の蜥蜴鶏、オラクルの光霊、火吹きリス、ハーピーバーサーカー


 それが今は大きく数を減らし、顔ぶれも多少変わっている。


虎人の大剣士×2、ガルフ=ナザ、バルツの森の主、解放されし闇の精霊・メーメック=ヌー、コボルトの狙撃弓兵、大精霊フォルタル=クルア、ハーピーバーサーカー、ダークアイズ


 道中、神鳴る獣や大地の魔力、生物即死なども使い、なんとか脱出できたのだ。


 あの大蛇の番と、巨大蜘蛛の大群に襲われた時はダメかと思ったが、神鳴る獣の特攻と、魔導砲台のおかげでなんとか窮地を乗り切ることができていた。


神鳴る獣 モンスター:魔獣

緑8 7/2 SR

先制、瞬発、貫通、飛行、破呪、再生:1

モンスター、オブジェクトの持つ能力、スキルの対象にならない。


魔導砲台 無色6 UR オブジェクト

X:対象にX-1点のダメージを与える。


 お陰で魔力はすっからかんだ。明日にならないと、肉体強化の呪印以外は手札が使用できない。因みに、今の手札はこんな感じである。


肉体強化の呪印、ケツァールの王、赤熱の魔弾、ラーヴァショット、大爆炎、ストーンキャノン


 樹海では怖くて使えなかった赤のスペルが溜まっている。


「切り札ばかりとも言えるんだけどな」


 あと、樹海での激闘により、試練もさらにクリアできた。


・魔蟲を一定数撃破7:万能魔力3、ポイント3カード4枚入手

・巨獣を一定数撃破:万能魔力1、カード1枚入手

・巨獣を一定数撃破:万能魔力2、ポイント1、カード1枚入手

・霊獣を一定数撃破:万能魔力1、カード1枚入手

・魔蟲を一定数撃破6:万能魔力2、ポイント2、カード3枚入手


 巨獣は、その名の通り一定以上の獣の事だろう。トロールなどもここに含まれる。霊獣は大蛇の事だ。


 倒していいのかフォルに聞いたら、問題ないらしい。


 水原も試練を達成できていたが、俺よりも大分少ない。どうも、俺の配下のモンスターが倒したとしても、水原も一緒に試練達成とはいかないらしい。


 逆に、水原が倒した魔獣に関しては、俺には意味がないものとして扱われているだろう。今後一緒に行動する際、獲物を分け合わないといけないかもしれないな。


 魔力やポイントも嬉しいが、新しいカードも大漁だ。


 塔を出た時から達成した試練だけで、16枚の新しいカードをゲットしている。ほとんどはそれほど強くはないカードばかりだが、幾つか面白いカードもあった。


シャドーウルフ モンスター:獣

黒2 2/1 C

擬態


多足のリントヴルム モンスター:亜竜

赤6 3/5 C

瞬発、再生2


ダーロン崖のワイバーン モンスター:亜竜

黄6 4/1 C

飛行


ダイナマイト・バグ モンスター:魔蟲

赤3 0/1 C

飛行

赤のスペルの対象になった場合、このモンスターを生贄に捧げなくてはならない。その後、全てのモンスターとプレイヤーに1点のダメージを与える。


シャンバラの麒麟 モンスター:霊獣

黄8 3/3 SR

飛行、透明、復活

透明:全てのアタック、スペルの対象にならず、ブロックされない。

復活5:コストを支払うと、このカードを墓地からフィールドに戻す

このモンスターのアタックが成功した場合、相手は2点のダメージを受ける。


 シャドーウルフ、多足のリントヴルム、ダーロン崖のワイバーンは普通に強いだろう。それぞれに能力が特化しており、使い所によっては活躍してくれるはずだ。


 ダイナマイト・バグは非常に弱いものの、特殊能力が面白い。多分、火を浴びると爆発するという能力だと思う。


 サイズも小型だし、潜入させてドカンという使い方ができるはずだ。テロリスト垂涎のモンスターだな。


 最後のシャンバラの麒麟は、ひたすら強い。さすがSRのカードである。透明化して、大ダメージを狙えるのだ。


 魔力は大量に必要だが、今の俺なら使えなくもない。


「主、そろそろ出発いたしましょう!」

「もうそんな時間か。わかった」

「我らが拠点までは、もう少しでありますぞ!」


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