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230話 塔脱出


 転移の魔法陣を使って、一瞬で一階に戻ってきた。


 何気なく使ったが、簡単に転移できるようなとんでもない装置をこれだけ小型化できるんだから、やっぱ古代エルフ凄いよな。


「今日は樹海で一泊だな」

「うむ。ここへ来た時よりも、険しい道行になるだろう。皆、心せよ」

「はい!」

「了解であります!」

「私も、足手まといにならないように頑張ります」


 そうして俺たちが塔の外に出ようとすると、そこには想像外の光景が広がっていた。


「なんだこの魔獣共の数は……。皆! 気を付けろ!」


 先頭で外に出たゼド爺さんの声が響き渡る。


 次いで、獣の咆哮が聞こえてきていた。明らかに、争っている。


 慌てて外を覗くと、バルツビーストたちが見慣れぬ魔獣の群れと戦っていた。


 四足歩行の、狩猟犬っぽい姿の魔獣である。地球にもいたグレイハウンドに近いだろう。灰色の短毛に、筋肉質な体。ただ、そのサイズは牛ほどもある。


 そんな魔獣が15匹ほど。塔の前に群れていた。


「なんで、あんな魔獣が……。俺たちの匂いに引かれて来たのか?」

「ですが、来た時にはおりませんでしたぞ?」

「だよな……」


 ともかく、あの魔獣たちを排除しないことには、ここから脱出することもできない。


 俺はモンスターたちに魔獣の排除を命じた。


 スフィンクスに倒されたとはいえ、数の上ではほぼ互角。しかも、バルツビーストたちの力は圧倒的だ。


 火吹きリスやポルターガイストメイドたちのかく乱と、バルツビーストたちの攻撃が噛み合い、あっと言う間に魔獣は数を減らしていった。


 こちらに、倒されてしまったモンスターはいない。完勝だった。


 だが、安心したのも束の間、危機は去っていなかったのである。


「ギシャァァァ!」

「ギュィイィィ!」


 大地に巨大な影が差す。


 上を向くと、俺たちの頭上を無数の影が舞っていた。


 巨大な鳥である。10羽近い怪鳥が、空からこちらを見下ろしていた。


 その威圧感のある鳴き声は、どう考えても友好的には聞こえない。俺たちを餌であると考えているのだろう。


「次から次へと……!」


 どうする? 塔へ逃げ込むべきか、樹海へと進むべきか……。


 俺がほんの数秒迷っている間に、怪鳥の群れが攻撃を開始していた。


 数羽が同時に降下してくる。しかも、バルツビーストたちは襲わず、弱そうな個体に狙いを絞ってきたのだ。


「くぬ! その程度でワフはやれはしませぬぞ!」

「キュイィッ!」


 ワフは槍で返り討ちにし、火吹きリスの火炎が相手を怯ませる。しかし、襲われた全員が対処に成功した訳ではなかった。


 その爪の餌食になったのは、コボルトの薬師とチェシャ猫であった。


 怪鳥の爪に掴み上げられ、上空へと昇っていく。


 爪の握力はすさまじいのだろう。最初にコボルトの薬師が。次いでチェシャ猫が爪に握りつぶされ、カード化して戻ってきた。


 捕まえた獲物が消えてしまった怪鳥は、不思議そうな様子だ。


 ここは、出し惜しみしている場面じゃない!


「テンペストバード! 効果発動だ!」

「キュイイィィィィ!」


 テンペストバードの姿が光り輝き、その姿を竜巻へと変える。黄色い竜巻はそのまま小さく分裂すると、上空にいた怪鳥の群れに襲い掛かっていた。


 敵の飛行モンスターに2点のダメージを与える能力だ。翼長10メートル近いサイズがあった怪鳥だったが、生命力は低かったのだろう。


 竜巻によって翼や体がズタズタに引き裂かれ、地面へと落ちてきた。落下の衝撃も併せれば、生きている個体はいない。


 塔の周りに散乱する20以上の魔獣の死体を見て、ゼド爺さんが呆然とした様子で呟く。


 塔を出ていきなりこんな争いになるとは、爺さんも思っていなかったのだろう。


「一体、これはどういうことなのだ……?」

「もしかして、屋上の怪物がいなくなったからなんじゃ……?」

「なるほど。エミルの言う通りかもしれん」

「ワフも賛同いたしますぞ!」


 今まではスフィンクスの縄張りだったから、魔獣が近づかなかったということか。それはあり得るだろう。


 そして、強者であったスフィンクスが死んでしまったからには、この縄張りは誰のものでもなくなった。


 今まではスフィンクスを恐れていた魔獣たちが、餌を求めて塔の付近まで進出してきたのだろう。


「ワフ、食料はどうだ?」

「少々心許ないですな」

「じゃあ、この鳥は食えるか?」

「中々美味でありますぞ!」


 本当はすぐにでも樹海に逃げ込みたいが、食料も重要だ。俺たちはマシな状態の怪鳥を1匹解体して、確保しておくことにした。


「エミル殿、手伝って下され!」

「うん!」

「あ、私も手伝います!」

「おお、水原殿、助かりますぞ!」


 水原もこちらの輪に入ろうと、必死なんだろう。率先して手伝ってくれている。


 俺は周囲の警戒をしつつ、試練の確認だ。


・獣を一定数撃破7:万能魔力3、ポイント3、カード4枚

・亜竜を一定数撃破1:万能魔力1、カード1枚入手

・試練達成160:万能魔力2、ポイント1


 一気に大量の魔獣を退けたことで――。


「キュイッ!」


 試練を有効化する前に、肩の上にいた火吹きリスが声を上げた。空を見上げると、再び巨大な影が見える。


「また怪鳥がきたぞ!」

「いや、違うぞトール! あれはワイバーンだ!」

「まじか!」


 相手は巨大な空飛ぶ蜥蜴だった。竜とは違う、細いフォルム。ゼド爺さんの言う通り、それはワイバーンだ。


 俺が召喚する比翼のワイバーンと比べても、2回りほどデカイ。あれがこの世界のワイバーンなんだろう。7、8匹ほどか?


 血の匂いに惹かれてきたらしかった。


「どうする? 樹海へと逃げるか? 木々が生い茂っておれば、空を飛ぶ魔獣は襲ってきづらいはずだぞ」

「いや、この先の事も考えて、こいつを召喚しておこう。ハーピー・バーサーカー・デモニスト、召喚!」

「ルオオオオォォォォォォオォ!」


ハーピー・バーサーカー・デモニスト モンスター:ハーピー

黄3黒3 4/1 SR

飛行、先制

憤怒:本日、貴方のコントロールするモンスターが戦闘で破壊されていた場合、1時間、+X/+0強化を受ける。Xは破壊されたモンスターの数に等しい。

このモンスターを生贄に捧げる。全ての飛行を持ったモンスターに、このモンスターの攻撃力分のダメージを与える。


 悪魔のような角の生えた女性型のハーピーが、甲高い叫び声をあげる。


 一見すると狂乱状態だ。


 こちらにまで襲い掛かってこないか心配になる姿だが、これまでの経験でこういったタイプでもしっかりと言うことを聞くのは確認済みである。


「ハーピー! ワイバーン共を倒せ!」

「ルオオォォオ!」


 今日は数多くのモンスターたちが倒され、カードに戻っている。今のハーピーの攻撃力は、間違いなく+10以上されているだろう。


 そこに、先制能力を得られるほどの素早さが加わった時、ハーピーは無類の強さを発揮していた。


 消えたと思ったら、10メートル以上先に移動しているのだ。そして、ワイバーンの首が斬り裂かれ、落下してくる。


「ルオオオォォ!」


 ワイバーンが全滅するのに、5分と掛からなかった。


 強化の続く1時間は、無敵に近いだろう。その間に、できるだけ樹海を進めるといいんだが。


「ああ、試練の有効化もしておかないとな」


 バインダーを開くと、さらに試練が達成されている。樹海は敵が多い代わりに、試練の達成には適しているのかもな。


・亜竜を一定数撃破2:万能魔力2、カード1枚入手


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― 新着の感想 ―
あれ?フォルさんの力で魔獣を寄せ付けないんじゃ?戦いの余波でフォルさん魔力不足でできないのか?
[気になる点] チシャ猫の役立たず感w [一言] 弱い相手は固めるまでないし、強い相手は自分だけ固まって相手に効かないし入れる意味ないよねw ちゃんとテキスト通りの論理能力にさせるか、出てる間はオンオ…
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