214話 罠出現
「ガオォォ!」
「バルツビースト! 下がれ!」
「ガガ……!」
「くそっ!」
油断していた! いきなり罠が仕掛けられているなんて!
俺たちは今、120階を通り抜けようとしているところだ。だが、フロアの半ば程で、バリバリという轟音が響き渡っていた。同時に、青白い閃光が周囲を照らす。
それは、電撃を放つ罠が仕込まれた床であった。先頭を歩いていたバルツビーストが罠にひっかり、カードに戻ってしまう。
ここまで、ゴーレムによる警備システムには苦しめられたものの、罠などは一切存在していなかった。
ゴーレム以外で障害となったものといえば、防火扉に足止めされたくらいだろう。
そのせいで、油断していたのだ。
下層階では念入りに行っていたはずの罠のチェックがおざなりになり、この階に設置されていた罠を発見することができなかった。罠なんてないのだと、思ってしまっていたのである。
「みんな、動くなよ!」
「は、はい!」
「ワフ、どうだ? 罠を見破れるか?」
「自分の周囲だけならば……」
ワフが真剣な眼差しで周囲の床を調べ始めた。なかなか高度な罠らしく、発見するのに数分はかかりそうだ。
「ワフだけに任せてたら、時間がかかり過ぎるか」
「申し訳ありませぬ。しかし、ここから先はかなりの数の罠があるやもしれませぬ。すでに、そことそこに怪しい場所がありますからな」
ワフが指差す床を観察してみるが、俺には何もわからない。どれだけ気を付けても、自力での発見は無理そうだった。
「なら、メイドさんとフォルはどうだ?」
「ウア!」
「やってみますね」
メイドさんとフォルが床を透過し、その裏を探り始める。
その結果、彼女たちであれば罠を正確に発見することができると分かったのであった。
床下を見れば、そこに魔法陣を刻むためのスペースがあり、簡単に判別できるらしい。しかも、床の重みで作動するタイプの罠であるらしく、彼女らであれば罠を起動してしまうこともなかった。
「これで、なんとか罠を避けながら進めそうだな」
「そうですね。私、どうなることかと」
エミルの顔が青い。
魔術の罠など、元村娘だったエミルにとっては初めて見るものなのだろう。何かよく分からないけど不思議で怖い。そんなイメージを抱いているらしい。
罠が発動してから、明らかに腰が引けてしまっている。
「エミルよ。恐れることは悪ではないが、怯えは動きを鈍らせるぞ」
「は、はい」
まあ、エミルはゼド爺さんに任せておけば大丈夫だろう。
「たぁ!」
「まだ腰が引けている! 体の芯を意識しろ!」
「たぁぁ!」
「そうだ! 克己の心を持て!」
なんか素振りが始まったが、多分大丈夫なはずだ。
「主、危ない!」
「え? ちょ!」
そんことを考えていたら、いきなりローブの裾を思い切り後ろに引かれた。
「な、何すんだワフ!」
犯人はワフだ。テーブルクロス引きかっていうくらい、思い切りローブを引っ張りやがったのである。
強化された今のワフの腕力に、貧弱な俺が勝てるはずもない。その勢いに負けて、尻餅をついてしまっていた。
思わず振り向くが、ワフはこちらを見ていない。真剣な顔で、少し先にある柱を睨みつけていた。
「ど、どうした? あの柱に何かあるのか?」
「魔力の流れがおかしいですぞ。床の罠の放つ魔力にそっくりであります」
「つまり、あの柱にも罠が?」
床ばかり注意して、上を見ていなかったな。まさか柱にも罠が設置されているとは……。
「少々お待ち下され」
「き、気を付けろよ!」
「ふふふ。ワフにお任せあれですぞ!」
ワフが慎重に柱へと近づいていく。そして、残り1メートル程度のところで足を止めた。そして、出汁を取った後の骨を軽く投げ付ける。バルツビーストたちのおやつ用にとってあったやつだ。
バリィィ!
「うぉ!」
「やはり、接近した相手に攻撃を仕掛ける装置でありましたか」
「うわぁ……」
床に落ちた骨は炭化して、ボロボロに崩れている。かなりの威力があるだろう。
「これを解除するのはかなり難しそうですな。近づく方法がありませぬ。柱を迂回して進みましょう」
その後、俺たちは罠を回避しつつ、慎重に塔を登っていった。
120階からは罠フロアになっているらしく、階段を上った先にも大量の罠が俺たちを待ち構えていた。
時には天井や階段などにも罠が潜んでおり、先行偵察を任せていた獣たちに僅かな被害が出ている。蔦鼠、バルツの森の偵察者、バルツの森の見張役、フォレスト・ラプターがカードに戻ってしまっていた。
「バルツビーストが減っちまったな。鼻の良いラプターが消えたのも痛い」
今連れているカードのモンスターは以下の通りである。
バルツの森の主×2、バルツの森の大牙×2、虎人の大剣士、伝令のペガサス、ガルフ=ナザ、蔦鼠、コボルトの薬師、解放されし闇の精霊・メーメック=ヌー、コボルトの狙撃弓兵、大精霊フォルタル=クルア、ポルターガイストメイド、オーク・グランドチャンピオン、チェシャ猫
131階。今日の野営地と決めたその場所で、俺は戦力を補充しておくことにした。
「特攻オコジョ、召喚!」
喚び出したのは、特攻オコジョと、そのドローで引いたバルツの森の主、黒煙火山の魔術師長である。同時に試練も達成できていた。
モンスターを100匹召喚:万能魔力3
「手札は切り札級のカードばかりか……」
今の手札は、大地の魔力×2、生命回復、魔力を統べる者・レムリアス、肉体強化の呪印、ストーンキャノンだ。
スフィンクス相手でも負けるつもりはない。いざとなれば、前のデッキでドローしたレムリアスもあるのだ。
「このペースでいけば、明日は最上階か……」
混沌の王について、何か分かればいいんだけどな。




