211話 塔突入2日目
塔に突入して2日目。
屋根のある快適な空間でそれなりにしっかりと睡眠をとった俺たちは、日の出とともに塔の調査を再開していた。窓のおかげで、起床時間もバッチリだ。
そして、見取り図にゴーレムの絵が描かれていた61階に辿り着く。
ここは、まさにゴーレム階であった。
「バルツの森の主は右のゴーレムに! 他のみんなは左のゴーレムに集中しろ!」
「ガル!」
「了解でありますぞ!」
見取り図に記されていた通り、ここで急激に塔の難易度が上がっていた。
階段を登り切った場所に、いきなりゴーレムが配置されていたのだ。しかも、偵察に送り出したポルターガイストメイドたちの魔力を感知して、動き出してしまった。
階段の前を塞がれてしまって難儀したが、メイドさんをゴーレムの背後に回り込ませ、そちらに振り向かせることで逆にチャンスを迎えることができている。
後は、背後から総攻撃を加えるだけだった。
バルツの森の主たちが担当した右のゴーレムは瞬殺である。
前の夜にバルツの森の大牙などの召喚も行っており、戦力も増えているうえ、ゴーレムとの戦いに慣れてきたらしい。
首の関節部を狙い噛み付き、あっさりと仕留めてしまった。
対する左のゴーレムだが、こちらは少し時間がかかった。まず、メイドさんやフォルの魔力弾が、あまり効果を上げなかったのだ。この階のゴーレムの素材には魔力を弾くような効果があるらしい。
蔦鼠の束縛も効果がなかった。攻撃力は最低でも4以上はあるってことだろう。防御力も、今まで倒してきたゴーレムよりも高く、このフロアにいるやつらは特別製であるらしい。
しかし、バルツの森の大牙やゼド爺さん、ワフの執拗な足狙いによって倒れ込み、後はタコ殴りにされて動きを止めたのであった。
関節などの細い部分が狙い目であるようだ。逆に、胴体部分は凹みはするけど砕けたりもせず、かなり頑強だ。
「ゴーレムの残骸を持ち帰れたら、金属不足が解消されるんだけどな」
「いえ、それは無理かと思いますぞ」
「なんでだ? 金属の塊だぞ?」
「加工する方法がありませぬ。魔術も弾いてしまいますし、溶かすにしても相当な高温が必要でありますぞ。かなり大掛かりな施設がなければ無理であります」
「ああ、なるほど」
溶かすこともできないんじゃ、そのまま分解して使うことしかできない。使い道は限られるだろう。
「しかし、俺たち以外の侵入者はどうしたんだ? このゴーレムたちに気付かれずに、通り抜けることができたのか?」
「もしくは、諦めて引き返したかだな」
カード使いが、この程度で逃げ出すか? いや、まだ侵入者がカード使いだと確定した訳じゃないんだが……。
「それよりも、奥で何か動いてます!」
エミルが叫んだ直後、新たなゴーレムが姿を現していた。しかも、6体もいる。
「メイドさん! フォル! 奥の2体を引き付けてくれ!」
「ウア!」
「分かったわ!」
前にいる4体に関しては、今いる戦力を割って対応せねばならない。
すでにゴーレムに対抗できることが分かっているバルツの森の主コンビ。それと、残りのバルツビーストたちに戦力を分けて、右の2体に対処するように指示した。
「メー、あいつの視界を遮ることはできるか?」
「メ!」
闇の精霊であるメーが、俺の背嚢から溢れ出し、ゴーレムの頭部に纏わりついた。
「ギギ?」
どうやら上手くいったらしい。一番前を駆けていたゴーレムが、唐突に動きを止めた。周囲が全く見えなくなってしまったらしい。
ゴーレムが何を見て、俺たちを認識しているのかは分からない。視覚なのか、熱なのか、音なのか、魔力なのか。
ただ、メーの闇で包んでしまえば、それらのセンサー類を潰せることは間違いないようだった。
「ゼド爺さん! エミル! 大剣士! 今の内に、最後の一体に集中攻撃をしてくれ!」
「任せておけ! 儂が正面を受ける。エミルたちは回り込め!」
「わかりました!」
「ガオ!」
「ワフもいきますぞ!」
「まてまて! ワフはメーが足止めしてるゴーレムを見張ってろ! いつ動くか分からんからな!」
「了解ですぞ!」
ワフがこの狭い空間で調子に乗って飛び回ったら、仲間を巻き込んでの自爆もあり得るからな。ここで大人しくさせておくのがチームワークというものだろう。
モンスターたちに任せたゴーレム2体は問題ない。危険があるとすればゼド爺さんたちなんだが――。
「ギッギ!」
「ぬおおぉ!」
ゼド爺さんが頼もしすぎる。
なんと、凄まじい勢いで振り下ろされたゴーレムの巨腕を、黒霧の長剣と世界樹の木刀をクロスさせ、正面から受け止めて見せたのだ。
ゴガン!
衝撃音とともに、ゼド爺さんの体が数メートル後退する。しかし、それだけだった。
ゼド爺さんにダメージはない。あえて後ろに下がることで、衝撃を受け流したようだ。
その間に、エミルと虎人の大剣士が背後に忍び寄っていた。
「ガアアア!」
「たあああ!」
遠心力を乗せた全力の一撃が、ゴーレムの左足に連続で襲い掛かる。
普通の武器なら、折れているだろう。エミルたちの人間離れした腕力で、硬いゴーレムに叩き込まれるのだ。しかし、エミルたちが使っているのは俺が召喚した武器である。
凄まじい硬度を誇るゴーレムの関節装甲を破り、その太い足を切断することに成功していた。後はもう、簡単だ。
振り回される腕に注意しながら、頭を潰すだけである。
「うむ、確かに硬いが、動きは鈍いな。1対1でもなければ、そうそう遅れはとらんだろう」
「ですね」
エミルが完全に戦士になっていた。4メートルを超える鋼の巨人に対して、一切怯む様子がなかったのだ。同じ時期に槍の練習を始めたはずなんだけどな……。完全に置いて行かれてしまったな。
「ゼド爺さん! エミル! メーが足止めしている奴も頼む!」
「うむ!」
「了解です!」
「バルツビーストたちは! フォルたちが引きつけてるゴーレムを倒せ!」
結局、ほとんど被害を出さずに勝利できてしまっていた。
唯一ダメージを負ったのは、自分も攻撃に加わろうと飛行能力を使い、天井に頭を打ったワフだけだろう。
「ぐおおぉぉ! 痛いですぞぉぉ!」
「自業自得だ!」
「くっ! 飛行能力を制限するとは、古代エルフの奸計でありますな! 卑怯な!」
「言ってろ……」
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