↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
201/285

201話 塔


「では、改めてよろしくお願いしますね」

「はっ! よろしくお願いいたします!」

「よ、よろしくお願いします」


 大精霊・フォルタル=クルアを召喚した翌朝。


 優雅に頭を下げる大精霊を前に、ゼド爺さんとエミルが緊張した面持ちで直立していた。エミルなんか、顔が真っ青である。


 昨晩は軽い挨拶だけだったし、俺も新しい仲間を召喚したとしか教えなかった。こうなることは想像できていたし、わざわざ眠れなくすることもないと思ったのだ。


 そして、改めて紹介したところ、案の定2人はガチガチに緊張してしまったのであった。


 それでも、食事中などに大精霊が気さくに話し掛けていると、大分その存在に慣れてきたらしい。本体ではなく、分身のような物だという説明も良かったのだろう。


 出発する頃になれば、かなり打ち解けていた。意外なことに、エミルの方がより仲が良さそうだ。同じ女性ということで、普通に会話をする程度の仲にはなっている。


「なるほど! では、人はこの草を食べるのですね!」

「はい。いい匂いがするので。スープに入れたりします」

「では、あの木の実はどうですか?」

「あ、あれは臭いからダメです」

「この草はいい香りなのに、こちらは臭いと感じるのですか?」

「そ、そうですね」


 なんか、ずっと食べられる草談義をしているけど。それに、精霊に性別ってあるのか? 一応女性の姿だけど……。まあ、そこは深く考えんでもいいか。


 対するゼド爺さんはどうしても大精霊ということで、砕けた話し方ができないらしい。ずっと及び腰だ。


「じゃあ、そろそろ出発しよう。フォル、魔物除けは頼む」

「任せてください」


 俺は、大精霊をフォルと呼ぶことになっていた。


 闇の精霊であるメーメック・ヌーをメーと略して呼んでいたら、大精霊も自分も愛称で呼んでほしいと言い出したのだ。


 今のエミルとの会話を聞いていても思ったが、大精霊のくせにかなりフレンドリーであった。愛称で呼んで何かが減る訳でもないし、別にいいのだが、そのせいでゼド爺さんから妙に尊敬の念が籠った視線を向けられるんだよね。


 伝説上の存在と親し気に呼び合うことで、俺の株が上がってしまったらしい。


「メー?」

「メーも、いざという時は俺を守ってくれ」

「メ!」


 俺の背嚢から顔を覗かせてアピールしてくる、黒い塊。そんな闇の精霊に守ってくれるように頼んでいると、嫉妬に狂った犬耳幼女が突進してきた。


 俺の足にしがみ付いて、揺するワフ。


「ワフも! ワフも頑張りますぞ!」

「わ、分かったから! あまり強く揺らすなよ! い、今のお前は馬鹿力なんだからな!」


 ワフの力で前後に揺さぶられたら、それだけでダメージを負いかねんのだ。ライフバリアを思わず確認したが、なんとかダメージは入らなかったらしい。


 軽くドタバタしてしまったが、俺たちはなんとか時間通りに出発することができていた。


 今日中に塔に辿り着く予定だ。


「この分だと、かなり早く到着できそうだけどな」

「どうしましたか? 主?」

「いや、順調に進んでるなと思っただけだよ」

「そうでありますな! さすが大精霊様でありますぞ!」


 昨晩も活躍してくれた、フォルの魔物除けの能力のおかげである。俺たちは一切の戦闘をすることなく、樹海を一直線に突き進むことができていた。


 フォルの能力は樹海の上空にも作用するらしく、ワイバーンに乗った俺たちにも恩恵があった。鳥の一羽さえ寄ってはこない。


 また、彼女自身は俺たちと一緒に飛んでいるが、眼下の獣組にもしっかりとその能力が発揮されている。


 その結果、俺の想像以上の速度で進むことができていた。


 実際、今日の夕方に到着する予定だった塔が、すでに近くと言っていい距離に迫って来ている。残り2キロメートルはないだろう。


「にしても、デカいっつーか、長い塔だよな」


 明らかに建造物だ。赤茶けた素材が使われ、一直線に伸びている。少しだけ膨らんだ竹の節のような部分が規則的に並んでいることからも、自然物でないことが理解できた。


 だが、あんな物を誰がどうやって作ったんだ? 多分、魔術的な何かを使っているんだろう。地球だったら絶対に無理だ。


 造っている途中で確実に倒壊すると思う。


 何せ、凄まじく細い。長さに対してそう見えるだけで、実際はそこそこの太さがあるのだと思うが、それでもあの長い塔を支え続けられるようには見えなかった。


 例えて言うなら、超巨大な鉛筆? 長さの対比はそのくらいであろう。


 塔の高さは相当なものだ。1000メートルはさすがにないかな? ただ、生前に見たことがある東京タワーよりは高いんじゃなかろうか? 多分、スカイツリーよりも高いと思う。


 だからこそ、その細さがより異様に思えた。


「どうやって支えてんだ?」

「あの塔ですか? あれは、魔力で強化しているのですよ」

「やっぱ魔力か」

「古代エルフの秘術が用いられていますから」

「知ってるのか?」

「勿論です」


 さすが、樹海を何千年も見守ってきた大精霊。なんと、あの塔が作られた当時のことを覚えていた。


 フォル曰く、あの塔を作ったのは何千年も昔に大陸を支配していた、エルフ帝国の魔術師たちであるらしい。


「その目的は、地脈と天脈の制御です」

「地脈と天脈?」

「大地の深くと、高き天空。そこに流れる魔力の流れ路のような物だと思ってください。魔力はそれらの流れに乗って、世界を循環しています」


 古代のエルフたちはそれを制御することで、より多くの魔力を手に入れ、天候すらも制御しようと考えたらしい。


 フォルはその説明の最中、ずっと顔をしかめていた。精霊的には、許されざることであるらしい。


 まあ、言われなくても、絶対に何か良くないことが起きそうだよね。ラノベに登場する古代高度文明が滅んだ理由のトップ3には入るんじゃなかろうか?


 案の定、その計画は失敗し、世界的に様々な災害が起こったせいでエルフの文明は衰退。高い生命力と繁殖力を持っていた人間や獣人族が世界の覇権を握ることになった。


 エルフが自然主義なのは、その時の反動で真逆へ傾倒してしまった名残であるそうだ。


「でも、地脈の制御か……。混沌の王って奴は、地脈のどこかに寄生しているんだよな?」

「そのようですね」


 だから、あの塔なのだろう。地脈に干渉する力があるのなら、確かに何かの手掛かりを得られそうだからな。


「なあ、フォル。あの塔には、エルフの作った防犯設備とか、あるか?」

「あると思いますよ。魔力の満ちたあの塔であれば、まだ稼働しているでしょう」

「そうか……」


 手掛かりがあるだけではなく、面倒な場所ってことが確定したな。



次回は23日更新予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。