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199話 塔目前


 樹海を進むこと半日。


 俺たちは少し開けた場所に降り立ち、野営の準備を進めていた。


 夜の樹海は危険度が跳ね上がるし、ワイバーンたちも無限に飛んでいられるわけではないのだ。


「今日は頑張ってくれたな。明日もまた頼む」

「クオォォ!」


 ワイバーンにポーションを混ぜた餌を食べさせてやりながら、労わる。


「主ー。食事ができましたぞ!」

「ああ、今行くよ」


 今日の晩飯は、具だくさんのクリームシチューと、平たいパン。それに串焼き肉である。ワフがササッと組んだ簡易竈を使って作られた、できたてアツアツである。


 ワフの手際は鮮やかだった。あっと言う間に石を積み上げて竈を造り、火を熾し、収納袋から出した食材でパパッと食事を作ってしまったのだ。


 野営でここまで豪華な食事が食べれるとは思っていなかったな。エミルが作っていた干し肉は、いざという時の備えだったらしい。


「最近、雑用の腕が上がったのか、手際が良くなったのでありますよ」

「ワフちゃんは毎日頑張ってるし、きっと色々なことが上手くなったのよ」

「うむうむ。ワフも成長しているのでありますなぁ」


 これって、単純に経験を積んで作業効率が上がっただけじゃなくない? もしかして、セルエノンの言ってた、強化のおかげ?


「……まあ、いいけど」

「どうしたのでありますか?」

「あー、上手い飯が食えてよかったなって思っただけだよ」

「ふふーん。明日も期待していて下され!」

「ああ」


 食後、ワフが淹れてくれた薬草茶を飲みながらまったりしていると、不意に灰色狼が起き上がった。


「敵か?」

「ガル!」


 やはり樹海でのんびりとはできないか。周囲に散って警戒しているバルツビーストたちからは、特に敵襲の報告はない。


「主! 上ですぞ!」

「トールよ! オオコウモリだ!」


 ワフたちにつられて俺も空を見上げる。すると、焚火に照らされた夜空に、何かが舞う気配があった。


 しかし、音もほとんどせず、精々が影がちらつく程度だが。


「弓です!」

「うむ!」


 エミルが即座に弓を取り出し、ゼド爺さんに投げ渡した。咄嗟にベストの判断ができるほどに、鍛えられたんだな。


「ガアアアア!」


 虎人の大剣士は、電撃の大剣を振るって、オオコウモリを一足先に撃ち落とした。オオコウモリは地球にもいたが、クレナクレムのコウモリはその大きさが桁違いである。


 翼長で5メートルオーバー。落下してきた時に、ドスンという鈍い音が響く程度には重いのだ。こいつが音もなく闇夜の空から襲ってくるんだから、普通なら対処もできずにやられてしまうのだろう。


「ワッフゥゥー! ここはワフの出番でありますぞー! 大活躍のチャンスであります!」

「あ! こら! 勝手に行くな!」

「ちょりゃああ!」


 ダメだ。聞いていない。


 しかし、ワフ自身が言った通り、大活躍であった。高速で空を飛び回りながら、オオコウモリを撃墜しまくったのだ。


 その数8。僅か5分にしては凄まじい戦果だろう。まあ、戻ってきたワフには、独りで突っ込んだことに対するお説教が待っていたけどね。


「何故に~!」


 翌朝。目覚めるといつの間にかオオコウモリたちの死骸は綺麗に消えていた。バルツビーストたちの朝飯になったのだろう。


 元々、病原菌とかが怖いから蝙蝠を食べる気はなかったので、ちょうど良かった。


 俺たちも昨日の残りであるシチューを食べながら、本日の作戦会議をする。といっても、やることは昨日と同じだ。


 話し合うのは、俺が本日召喚した2本目の電撃の大剣を誰に持たせるかということだった。


 装備品を2つ持てば、その分強化されることはゼド爺さんで証明済みだ。となると候補としては、エミル、ワフ、大剣士あたりになる。ああ、コボルトの薬師も装備できるな。


 MMMでは獣型モンスターにも装備可能だったが、こっちだとどうなのだろう?


「まあ、ここはコボルトの薬師に装備してみるか」

「オフ!」


 俺の呟きが耳に入ったのか、コボルトの薬師が嬉しそうに咆えた。戦闘能力がないとは言っても、臆病なわけではない。戦える手段が手に入って嬉しいらしい。


「オフ! オフフ!」


 早速、装備した大剣を振り回している。その姿は中々堂に入っていた。達人とまではいかないが、全くの素人の動きではない。俺よりはいい動きしてるかな?


「さて、デッキは残り2枚……。出発前に次のデッキを設定しないとな」


 この20日で試練も達成して大分カードも増えた。まあ、使えそうなカードは数枚だが。


 塔の内部を進む場合に役立ちそうなカード半分、強力な混沌憑きがいることを見越して、コスト重めの強力カード半分だ。


 飛行モンスターで頂上に降り立って探索終了となるのであれば、楽なんだが……。


 実は、近づいてきたことで塔の頂上が視界に入るようになったんだが、明らかに何かがいるのだ。


 まだはっきりとしたことは分からないが、翼の生えた、大型のモンスターであることは間違いない。


 かなりの大きさだし、あれが混沌憑きなのだとしたら確実に魔王級だ。生半可な戦力では勝てないだろう。


「さて、どいつを入れるか……」


次回は4/7更新です。その後は通常更新に戻せそうです。

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― 新着の感想 ―
[一言] >虎人の大剣士は、電撃の大剣を振るって、オオコウモリを一足先に撃ち落とした。オオコウモリは地球にもいたが、クレナクレムのコウモリはその大きさが桁違いである。 182話 聖霊復活 でワフに再…
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