191話 村の砦
森の精霊の加護を手に入れたワフをお供に、再びカードを使用していく。
「雨乞い蛙、召喚!」
「ゲコー」
雨乞い蛙 モンスター:両棲類
青3 0/1 UC
毎日、青魔力1を生み出す。
青2:赤のスペルを打ち消す。
現れたのは、手のひらサイズの真っ青なアマガエルだ。女性は悲鳴を上げそうだが、俺は嫌いではない。
「どんなことができるんだ?」
「ゲコ!」
雨乞い蛙が一鳴きすると、その体から青い光が淡く立ち昇る。直後、青魔力が加算されていた。
まあ、これは予想通りだ。シルバー・シープと同系統の能力である。だが、雨乞い蛙の能力はこれで終わらない。
「ゲッコゲコ!」
「おおー! 水でありますな!」
「ああ、スプリンクラーっぽい」
雨乞い蛙は水を生み出し、周囲に撒くことができるらしい。しかも。10分くらい休めば、またやれるそうだ。
「畑の強い味方だな」
「ゲコ!」
俺は、無事な畑を世話している人たちに、早速蛙を紹介する。普段は井戸の側にいて、村人に頼まれたら水を撒く。そういう形になるだろう。
「いやー、水を上まで運ぶ手間が減るのは有り難いね」
「うんだな。蛙さん、よろしく頼むで」
「ゲッコ!」
「潰さんように、蛙さんの乗る台でも作るか」
「だなー」
「ゲコー!」
こっちは上手くやれそうだ。
「じゃ、次の召喚にいくぞ。ドローは群狼だったが、先にこっちだ」
「聖なる泉でありますな」
「おう」
清らかなる噴水を水源として枯れ井戸の底に設置したが、これも同じように使えるだろう。それに、まだ戦いの傷が癒えていない人がたくさんいる。その治療にも活躍してくれるはずだった。
設置場所として目を付けたのは、ディシャル様の庵の側にある地下倉庫である。実は、大昔はここまで水を引いて洗濯場として使っていたそうだ。だが、水源が枯れて、今は倉庫になっている。
ここならハーピーを引き寄せることもないし、外からも見えない。
ディシャル様と村長に相談すると、ぜひにということだったので、俺達は荷物を外に運び出し、聖なる泉を半地下の倉庫に設置した。
聖なる泉 緑5 R オブジェクト
1日の始まり、聖水カウンターが1つ乗る
聖水カウンターを1つ取り除くと、対象のダメージを2点回復
「これは清らかな泉ですな。これも、枯れぬと言うことですか?」
「そうですね。破壊されなければ」
「それはありがたい。ですが、さすがに洗濯には使えませんな」
「1日たてば汚れは消えるので、無理に使おうと思えば何とか使えますよ?」
「いえいえ、さすがにこれだけ美しい泉を汚すのは……」
村長とそんな話をしていると、外から悲鳴のような物が聞こえた。
またフィーナン伯爵の兵士がきたか? そう思って慌てて外に出る。すると、バリケードの補修をしている村人が、足を滑らせて落下しそうになっただけであるらしい。
実際には落ちておらず、怪我人もいないようだ。よかった。
ただ、これで気が付いた。やはり、防衛力が低下している状態では安心して暮らしていけない。常にビクビクしていなければならないのだ。
そして俺は、それを僅かに解決できる手段をドローしたばかりであった。
「久々に引いたこいつだ」
「おお、ストーン・フォートレスでありますか」
ストーン・フォートレス 緑1+X R スペル
詠唱、0/Xの不動を持ったオブジェクト・モンスター1体と、石兵1体を生み出す。このオブジェクトが存在している間、毎日、1/1の石兵を1体生み出す。支配できる上限はX体まで。
※石兵 1/1 生贄に捧げると対象に1点ダメージを与える
「このカードの砦を、村の入り口に造ったらどうかと思ってな」
ソルベスの村には外部との出入り口が2ヶ所ある。
1つが、村の北東にある、樹海側に繋がる門。俺たちが初めてソルベスにきた時に使った、細い谷間に繋がる門だ。
こちらは特に被害もなく健在で、補修の必要などもない。
対して、南西にある山岳地へ出る為の門は、赤のカード使いエリオによって破壊されてしまっている。
今は、岩や残った木材でバリケードを作っているが、防衛施設としては非常に弱々しかった。
そこで、バリケードに代わって砦を設置してはどうかと思ったのだ。問題は、ある程度のダメージを負って破壊されると、完全に消滅してしまうことだろう。
普通の砦であれば、崩された後も石材を流用したりもできるが、カードの砦は消えてしまうためそれもできない。
「とりあえず、ディシャル様たちに相談してみるか」
「そうでありますな!」
そして村の重役たちに相談した結果、入り口から少し前に出して砦を設置することとなった。
今まで門があった場所の目の前に砦を設置し、砦で守っている間に門を修復するのである。やはり、消滅する可能性がある砦に、守りの全てを任せることはできないという判断だろう。
それに、砦を抜けてもまた門があるという状態は、防衛的にも強固なわけだしな。
「では、作りますよ」
「ああ、頼むよトール」
ストーン・フォートレスに込める魔力は万能11、つまりXは10となる。0/10であればかなり強固だし、石兵が10体いれば色々と役に立つだろう。
そうして召喚された砦は、非常に巨大だった。しかも、形がユニークだ。どうやら狭い場所に大型の砦を呼び出す際には、こっちで形状を変更することができるようだったので、谷間を完全に塞ぐ形で召喚をしておいた。
イメージは、弓を放つための小窓が無数に備え付けられたダムだろう。一枚の巨大な壁が、谷を塞いでいる。
1階には馬車などが通れるサイズの大きな門や通路を備え、2~6階は武器庫や休憩室を備えた、大型の砦である。
規模としては、俺が樹海に築いた砦の3倍くらいはあるだろう。
「こ、これは凄いね」
「そ、そうですな」
一瞬で生み出された巨大砦に、ディシャル様と村長が揃って呆然としている。ディシャル様にとっても、驚きの光景であったようだ。
他の村人たちも同じ反応だ。口をあんぐりと開けて、砦を見上げている。
俺はそんな村人たちを連れて、砦の中に入った。そこでは、生み出されたばかりの石兵が出迎えてくれる。
「こいつは、この砦の兵士です。毎日1体。最大で10体まで生み出されますね。とりあえず、俺とディシャル様と村長の命令は聞くようにしておくんで」
「わかった。動きはどうなんだい?」
「人とほぼ同じですね」
俺は石兵に軽く運動をさせてみた。単なる反復横跳びとストレッチだが、動きの素早さを見せるなら十分だろう。
ディシャル様も感心しきりだ。
「これは凄い! そこまで滑らかに動くゴーレム、見たことがないよ!」
「荷運びなんかも頼めるんで、頼もしいですよ」
「それは有り難いですな」
その後は、寝室に備え付けられた上質な寝具に驚き、武器庫に並んだ石製の武具に驚き、弓狭間の計算された設計に驚きと、皆が驚きっぱなしであった。
特に驚かれたのが寝具であろう。
「こんなフカフカな布団、初めて見た!」
「貴族みたいだ!」
とりあえず、砦に詰める兵士の希望者が不足することはなさそうでよかった。
前話にてシルバーシープを召喚する描写を、緑地の首飾りの召喚に修正しました。




