190話 黄色の報酬
ユイが帰った翌日。
早朝、自警団のカグートが慌てて俺を呼びにきた。彼に付いて門へと向かうと、そこには見覚えのある魔獣の姿があった。
「バルツの森の主! 霧豹! 生きててくれたか!」
「ガオ……」
「傷だらけじゃないか……。お前らだけか?」
「ガウ」
その後、ポーションを使って2匹の傷を癒し、色々と質問をした。どうやら、火炎王の結界石の効果が途切れた後、森へと逃れたらしい。そして、闇に紛れて敵の本隊を襲い続けていたようだ。
途中までは半数ほどは生き延びていたようだが、結局は堕天使のダメージ能力の効果で倒されてしまい、この2匹だけが生き延びたらしい。
しかも、オマケまで運んできた。
「こいつ、明らかに鎧が豪華だな。トールさん、もしかしたら指揮官級かもしれない」
「うむ。儂もそう思う」
どうやら、敵の指揮官の1人を捕まえたようだ。カグートとゼド爺さんが言うのだから、間違いないだろう。ディシャル様の能力を使って尋問すれば、色々と聞きだせるかもしれない。
「目が覚めない内に、牢に放り込もう」
「じゃあ、任せていいか?」
「うむ。儂らが預かろう。お主はその2匹を労ってやるといい」
「ああ、そうだな」
俺は2匹を褒めまくり、とりあえず休むようにと小屋に連れ帰った。ワフが、仲間が戻ってきたと嬉しそうに笑い、大盛りの餌を作ってやっていたな。
さて、今日もやることが色々だ。
「まずは、樹海への伝令だな」
「ゴファ!」
樹海のミノタウロスたちへの伝令役は、黒煙火山の魔術師長である。飛んで行けばすぐに到着するだろうし、頭もいい。魔術師長に任せておけば問題ないだろう。
そのまま樹海に留まってもらい、ユイとの繋ぎも行ってもらう予定だ。
他のモンスターたちは、村の復興の手伝いと、見回りである。
俺はやることがあるので、1人別行動だ。家で机に向かいながら、俺はバインダーを開く。
「勝利報酬を決めないとな」
エマを殺したことで、対戦勝利報酬をゲットできるようになっていたのだ。
『おめでとうございます。転生者同士による、対人戦に勝利いたしました。報酬として、万能魔力15、各色魔力5。ポイント75が与えられます』
やはり勝利数が増えることで、この報酬も増えるようだ。だからと言って、積極的に他のカード使いを殺すつもりはないけどな。ユイとは一応同盟的なものを結んだわけだし、他のカード使いに関しては情報がない。ユイにも一応聞いておいたが、彼女も俺以外は知らないそうだ。
『特別アンティルールを適用。山吹絵馬のデッキカードから12枚、柳木透様に所有権が移ります。カードをお選びください』
色々なカードが入っているが、総じて実用性高め。もしくは、対人戦に強そうなカードだろう。残念ながら、LRカードはないようだ。セルエノンから1枚は貰っていると思ったんだが、使い辛いカードだったのかもしれない。
本来であれば、実用性の高いCカードを多めに選ぶのだが、トレードができることが判明した今、レアリティも重要だ。
1枚でコモンカード大量と交換してもらえるかもしれない。実際、ユイはまだかなりの量のカードを持っているだろう。
「とは言え、絶対にトレードを行えるとは限らないからな……」
そう思いながら、選んでいく。結局、エマのデッキにはいらないレベルのクソレアなんて入っていなかったので、特に問題なかった。悩むだけ無駄だったな。
復讐の堕天使 モンスター:堕天使
5/7 SR
今日、あなたのコントロールする飛行を所持したモンスターが5体以上破壊され、あなたのライフバリアが10点以上減っている場合、このモンスターを召喚できる。
飛行、破呪
憤怒:このターン、貴方のコントロールするモンスターが戦闘で破壊されていた場合、1時間+X/+0強化を受ける。Xは破壊されたモンスターの数に等しい。
召喚時、対象プレイヤーのコントロールする全てのモンスターに、1点ダメージを与える。
ケツァールの王
黄4 0/1 SR
飛行、破呪、増殖1
場から墓地に送られた場合、このカードを手札に戻す
モンスターを1体生贄に捧げる:1時間、+1/+1強化される。
テンペストバード
黄色4 1/1 SR
飛行
このモンスターを生贄に捧げる、対象のプレイヤーがコントロールする全てのモンスターに2点ダメージを与える。
黄色い風の奴隷 モンスター:幻想
黄3 1/2 R
浮遊、黄1:1時間、挑発を得る
キャプチャー・タービュランス 黄5 R スペル
詠唱、対象プレイヤーがコントロールする全ての飛行、浮遊を所持するモンスターを1時間行動不能にする。
暴風の守り 黄XX R オブジェクト
装備対象モンスターを+X/+0するとともに、「全ての呪文と能力の対象にならない」「このモンスターへ与えられる全てのダメージを-Xする」能力を与える。
1時間後、このカードを生贄に捧げる。
反動の烈風 黄3 UC スペル
対象のモンスターを、プレイヤーの手札に戻す。その後、そのプレイヤーは手札を一枚ランダムで捨てる。
黄風の首飾り 黄2 UC オブジェクト
毎日、黄魔力を1生み出す。破壊すると、黄魔力2を生み出す。
黄風の首飾り 黄2 UC オブジェクト
毎日、黄魔力を1生み出す。破壊すると、黄魔力2を生み出す。
アクロバット・イーグル モンスター:魔鳥
黄2 2/1
瞬発、飛行
ウィンド・レガース 黄3 C オブジェクト
装備対象モンスターは先制を得ると共に、+1/+1強化される。
ウィンド・レガース 黄3 C オブジェクト
装備対象モンスターは先制を得ると共に、+1/+1強化される。
風読みの白鷹 モンスター:魔鳥
黄1 1/1 C
飛行
風読みの白鷹 モンスター:魔鳥
黄1 1/1 C
飛行
ウィンドランス 黄1 C スペル
対象に2点ダメージを与える
黄風の首飾り、ウィンド・レガース、風読みの白鷹は2枚入っていたので、そのままゲットしておいた。こういう、使い勝手がいいカードは多めに欲しいからな。
というか、いつの間にか同じカードをゲットできるようになっていた。白井の時には、ダメだったんだけどな。これも、勝利数が増えて報酬が強化された恩恵なんだろう。
ウィンドランスは、ウィンドカッターの上位互換カードで、かなり強い。
反動の烈風、キャプチャー・タービュランスは少し悩んだが、これはクラウドローズや天使に対抗できるカードだ。つまり、ユイと敵対した際に有用である。
友達になるなんて話をした翌日に、勝つための方法を考えている自分に少し嫌悪だ。だが、やめることはしない。
彼女自身は善人でも、どこでどう利用されているかも分からないからだ。
それに、彼女の主と俺たちの利害が対立した場合、ユイが俺達に味方してくれるなどというおめでたい妄想はしていない。
どこでどう敵対するかも分からなかった。その時がくる可能性に備えることは、絶対に必要なのだ。仲間たちを守るために。
「早く新しいデッキにするためにも、色魔力を無駄にしないためにも、カードを使っておきたいんだが……」
今の手札は、ツリーバインド、魔導時限爆弾、盗み見る影、聖なる泉、森の精霊の加護、緑地の首飾り。
「とりあえずこいつだな」
俺は家の外に出ると、手札から首飾りを呼び出す。
「召喚! 緑地の首飾り!」
復讐の堕天使の特殊効果で倒されてしまった、シルバーシープの代わりだ。魔力の補充のためにも、絶対に呼び出しておきたかった。
「ドローは精神完全支配か……」
凶悪だが、使い所が難しいカードがきた。まあ、切り札として手札にあれば安心だろう。
次に使うカードのため、俺はバルツの森の主たちの世話を甲斐甲斐しくするワフをこっちに呼んだ。
「なんでありますか?」
「まあ、またこのカードをワフに使っておこうと思ってな」
俺がワフに使うのは、森の精霊の加護である。やはり、強化は重要だろう。湧き上がる力にはしゃぎ回るワフに既視感を覚え、俺は笑ってしまった。
こんなことも、ワフが生きてくれてなきゃ、考えられなかっただろうな。
「主、泣きながら笑って、どうされたのですか? は! もしや何やらヤヴァイお薬を……!」
「ちゃうわ! それに、泣いてねーし!」
「泣いておられるではないですか!」
「ゴミが入っただけだ!」
「なんと! それはいけませぬぞ! そんなに擦ってはゴミが目の奥に! 場合によっては視力が!」
「こ、怖いこと言うな! 平気だから!」
「主! ですから擦っては!」
いつも通り、騒がしい奴だな。




