156話 バルツの森の獣たち
ペガサスに乗って再び村を出撃した俺たちは、山岳地帯を下り、森林の上空へと戻ってきていた。
先程、騎士団を見かけた場所へと向かう。その道中、コボルトの狙撃弓兵が大きく遠吠えを放った。
騎士団を見張っているモンスターたちへの合図である。騎士たちに聞かれたとしても、森のどこかにいる獣の咆哮にしか聞こえないだろう。
それから数分もせず、ポルターガイストメイドが戻ってきた。
「騎士団の場所は捕捉できているな?」
「ウア」
「よし、さすがだ。今はどの辺にいる?」
「ウアー」
メイドさんが少し離れた場所を指差す。一見、ただの森だ。上空にいる俺たちからは木々が邪魔して見えないが、騎士団がそこの下にいると言うことなのだろう。
「さっきよりも、村に近づいているな」
やはり移動しているらしい。休憩中なら、包囲して一網打尽にし易かったんだが。
「騎士団の正確な人数は分かるか?」
「ウア」
メイドさんが首ふりと指で、数を伝えてくれる。どうやら騎士が18人。従者や荷運びが25人いるらしい。
気功や魔術が使えるかどうかは分からないそうだ。だが、年配の指揮官がいるようなので、そいつはある程度の実力があると考えた方が良さそうだった。
「よし、まずは少し離れた場所に下りよう。あそこ、少し森が切れてる。ペガサス、降下してくれ」
「ヒン」
騎士団から200メートルほど離れた場所に降り立つ。すると、自然とモンスターたちが集結してきた。
「よし。この戦力に、さらに援軍が加われば行けるぞ」
俺は襲撃のための準備に取りかかる。まずは、このカードだ。
「黒魔力1を使い、大地の魔力を使用する」
このカードのいいところは、どの色の魔力でも使用可能なところだろう。
「これで万能魔力が10、緑が2、黒1。今ならどんなカードでも使えるな」
そして、俺は満を持して手札にある最強のカード、バルツの森の主を手に取った。
「召喚! バルツの森の主!」
「ガルル……」
「や、やっぱりカッコイイな!」
久しぶりに見るバルツの森の主は、俺でさえ少しビビるほどに、圧倒的な存在感を放っていた。闇夜の森に佇む巨大な獣というのは、何もしてなくても絵になるね。
三メートルを超える体高に、巨大な角と、全身から生える鋭い棘。二本の尾と金の瞳が、そこに神秘性を加えている。
バルツの森の主 モンスター:獣
緑6 4/4 R
瞬発
このモンスターが場にいる限り、貴方が支配する他の「バルツ」と名前が付く獣モンスターは+1/+1強化
そして、その能力の恩恵に与れるカードも、俺の手札にはあった。
「よし、お次はこいつらだ! 召喚、バルツの森の見張役!」
「ガルオォ!」
「ガオォン!」
2/2のバルツビーストが2匹、魔法陣から飛び出してくる。だがバルツの森の主の効果によって、今は3/3が2体であった。
確かに、普段のバルツビーストよりも、体格がいい。筋肉が増し、牙や角が太くなっているようだ。さらに、その体には僅かに緑色の光を纏っている。気功による強化が発動しているのだろう。
魔力3で3/3が2体って、破格すぎるな。
「で、ドローしたのがこいつらか」
ツリーアーマー、夜告げの梟、群狼が手札に加わっている。群狼は、魔力がたくさんある時だったら使用候補に入っていたんだがな……。
万能魔力が3しか残っておらず、ここで使うには少々勿体ないだろう。今使うなら、夜告げの梟の方がいい。
夜告げの梟 モンスター:魔鳥
黒2 1/1 C
飛行、擬態
余っている黒魔力を使えるうえ、飛行能力もある。それに、梟であれば当然夜でも活動できるだろう。
俺はこいつも喚び出しておくことにした。
「召喚! 夜告げの梟!」
「ホーホゥ」
「おお、デッカイな」
「ホー」
目の前に現れたのは、漆黒の羽を持った、体長1メートルほどの梟である。翼を広げれば相当大きいだろう。
しかし、さすが梟。地面から近くの木の枝に飛び移る時、全く羽音がしなかった。隠密性も高いらしい。
現在、俺が連れている戦力はこんな感じだ。
ポルターガイストメイド、伝令のペガサス、コボルトの探検家、コボルトの狙撃弓兵、霧豹、黒煙火山の魔術師長、蔦鼠、バルツの森の主、バルツの森の見張役×2、バルツビースト、灰色狼×2、夜告げの梟。
「主力はバルツビーストたちだ。お前たちは、騎士をひたすら狩ってくれ」
「ガオ」
「他のモンスターたちは、包囲を維持しつつ、逃げ出す相手を狩っていく。今回は誰も逃せない。重要な役目だぞ」
そうして、俺はモンスターたちに役目を与えていった。
バルツビーストが指揮官などの騎士たちを狙う。コボルトや灰色狼たちは、周囲の人間を削りつつ、包囲。こんな感じの作戦にした。
ここまでは、森林に居てもおかしくはないモンスターたちが担当である。バルツビーストも非常に珍しいだろうが、魔獣がいる世界であれば、絶対にいないとも限らない。
だが、ポルターガイストメイド、伝令のペガサス、黒煙火山の魔術師長はそうもいかなかった。どちらも目立つし、明らかに人間の影がちらつくだろう。魔術か何かでその存在を報告されてしまうと、村に疑いが向くかもしれない。
そこで、この3体は俺と一緒に予備戦力として待機させることにした。役目は、相手に想定以上の強者がいた場合の介入と、逃走した人間の処理である。
最悪の事態に備えて肉体強化の呪印を準備しつつ、俺は号令を下した。
「よし、作戦開始だ!」




