131話 ハーピー解体
襲ってきたハーピーたちをなんとか撃破した俺たちは、谷の入り口で再び休息をとっていた。
怪我した者たちの応急処置や、ハーピーの解体を行なうためだ。
俺はエミルをかばうためにライフバリアが1減ってしまったが、その程度で済んでいる。ただ、トビアとジェイドが、それぞれ浅い傷を負っていた。
それよりも、もっと大きな問題に俺は直面していた。
「うぅ……ハーピーの解体は俺には……」
ハーピーは半端に人型をしているため、その解体は非常にグロテスクだった。頑張って解体を手伝おうとしたんだが、俺にはどうしても無理だ。吐き気を耐えきれなかった。
「では、ワフにお任せくだされ!」
「さっきの戦いじゃあまり役に立たなかったし、俺たちに任せてください」
ハーピーの肉はマズいし臭いしで、とても食べられたものではないらしい。まあ、人型の魔獣を食べたくはないが。
ただ、その体内にある石が、魔法薬の材料として取引されるそうだ。ファンタジーで定番の魔石かと思ったら、ちょっと違っていた。
魔石ではなく、共鳴石という名前だ。ハーピーが大声を出すときに増幅器の役割を果たす、魔力の籠った胆石のようなものらしい。
後は、一部の羽根は矢の材料として取引されているという。
「うぅ……」
「トールさん、どうぞ」
「エミル、ありがとう」
エミルが差し出してくれた薬草茶を飲むと、胸がスーッとして、気持ち悪さが和らぐ気がした。
「これ、エミルが作ったのか?」
「そうですよ。ワフちゃんに習いながらですけど」
ポーションだけではなく、薬草を使ったお茶やハンドクリーム、香水なども作り始めているようだ。戦闘訓練も頑張っているし、本当に頭が下がる。
俺も負けてられないな。ただ、ハーピーの解体は絶対に無理だ。とりあえず、ハーピーを倒すことで達成できた試練を確認しよう。
・ハーピーを一定数撃破2:万能魔力1、カード1枚入手
・ハーピーを一定数撃破3:万能魔力1、ポイント1、カード1枚
これで万能魔力は15だ。色々なことができるだろう。ポイントも20溜まったので、カードパックが買える。
「入手できるカードがどんなカードかね」
アサルト・ハーピー モンスター:ハーピー
黄3 2/1 UC
飛行
翼女人の降下猟兵 モンスター:ハーピー
黄4 3/1 UC
飛行、先制、貫通
どちらも非常に使えるカードだ。飛行があるだけでも十分なのに、攻撃力もある。特に降下猟兵は多少コストが重いものの、ハーピーの群れくらいなら1体で蹴散らしてしまうのではなかろうか。
いずれデッキに組みこみたい。それにしても今思い出したが、MMMにおいてハーピーは翼女人と表記するんだったな。
そりゃあ、カードには女性タイプしか存在しないわけだ。やはりMMMのハーピーはクレナクレムのハーピーとは、だいぶ違っているらしかった。
「確認はこんなもんだな……。さて、この後どうするか」
ハーピーの群れは倒したが、あれで全部とは思えない。この山岳地帯に、広く生息していると思われるからだ。
とてもではないが、ペガサスで移動できるとは思えなかった。
「いや、それでも何度も往復すれば……」
ハーピーを釣ってきては皆で倒すということを繰り返し、道中のハーピーを全て駆除することはできるんじゃないか?
少なくとも、巨大なトロールと戦うよりはマシな気がする。
しかし、俺の提案はトビアたちに却下されてしまった。たとえ一時的にハーピーが減っても、空いた縄張りにはすぐにハーピーがやってきてしまうらしい。
まあ、縄張り意識が強いみたいだし、他の群れが消えれば、空いた縄張りを確保しようとするのは当然か。
「だとすると、そのトロールって奴を突破するしかないんだが……。なんとかなるような相手なのか?」
「普段なら、絶対に挑まないですね。ただ、トールさんのお力があれば……どうでしょう?」
「だよな。トールさん次第でしょうねぇ」
ジェイドもトビアも、考え込んでしまった。トロールはオーガを超えるランクの魔獣だ。魔術を使うという報告はないが、その巨体と再生能力だけでも十分に恐ろしい。
まず、1パーティで挑むような相手ではないのだ。普通であれば、何百人もの軍勢で挑む相手だ。
俺の不思議な力を目の当たりにしていても、勝てるとは言い切れないらしい。
「だが、やらぬわけにもいかぬだろう?」
「まあ、そうなんだよな。ここで引き返したって、追っ手と戦いになるだけだし」
「なれば、策を練り、トロールを屠るしかなかろう」
「結局、それしかないか……」
実のところ、俺の手札には使えそうなカードがある。
超トラバサミ 魔力2 C オブジェクト
このカードを生贄に捧げる。対象の攻撃力5以下のモンスターは1日のあいだアタックもブロックもできない。
敵の動きを封じてくれるアイテムだ。問題は、トロールの攻撃力が5よりも上かどうかって点だろう。
結構ギリギリだと思うんだよな。大きさ的には同等と思われる巨人殺しのニシキヘビが4/5のステータスだった。
それよりも多少強いと考えて、5/5程度という想定は十分成り立つのだ。しかし、それよりも強かった場合、正面からの殴り合いとなってしまうだろう。
肉体強化の呪印もないし、その場合は黒霧の長剣を持ったゼド爺さんが頼りだな。ツリーアーマーの能力を使えば、さらに+3/+3までは強化できる。
「ふはは! 任せておけ! 儂がトロールを倒してくれる!」
俺の説明を聞いたゼド爺さんは、怯えるどころか、楽し気にそう笑う。こういう時は、本当に頼りになるな。
「まずはトラバサミを設置する場所を決めるか」
「そうでありますな。トビア殿、大まかな地形をここに描いてくだされ」
「ああ、分かった」
ワフが紙とペンをサッと差し出した。さすがワフ。できる女だ。
次回は6/1更新予定です




