表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
130/285

130話 トロール


「巨大な魔獣って、どれくらいの大きさなんだ?」

「それこそ、谷を完全に塞いじまうくらいにはデカいし、タッパも20メートル近くあると思います」

「はぁ?」


 俺は思わず谷を見た。


 この辺は切り立った小山が連なっており、今俺たちがいるのはその山と山の間に刻まれた、細い間道の入り口である。


 ただ、細いとは言っても10メートルほどの幅はあるだろう。


 しかも、高さも20メートル近い? 確かにそれは巨大だった。


 とりあえず全員で集まって、トビアたちからの詳しい報告を聞くことにする。


「それで、谷を塞いでいるのは、どんな魔獣なんだ? 名前とかは分かるのか?」

「ああ……。多分ですが」

「多分?」

「俺も見るのは初めてなもんで……」


 谷を塞いでいるのは、茶色い皮膚を持った、全身毛むくじゃらの巨人であるという。しかし、その顔は猪をより醜くしたような姿で、知性はあまり高くはなさそうだったらしい。


「あれは、トロールだと思います」

「トロールだと! 実在していたのか!」


 ゼド爺さんが驚くくらいだから、かなり珍しい魔獣なんだろう。


 俺のイメージでは、ゴブリンと巨人を混ぜたような、巨大な人型の魔獣である。生命力が強いが、魔術に弱く、ゲームでは後半の強MOBか、中ボスくらいの扱いになっている。


 ただ、オーガの時もそうだったが、こっちの世界では俺の想像よりももっと伝説的な存在であるそうだ。


「確か、樹海遠征軍の記録に登場するんでしたっけ?」


 村娘であるエミルでさえ、名前を知っているレベルか。


 何も分からない俺のために説明をしてもらったんだが、その扱いは確かに伝説級であった。名前は広く知られているのに、その詳細は誰も知らないのだ。


 まず、その記録が驚くほどに少ないらしい。生息地域が限られているうえ、挑む者がほとんどおらず、戦闘記録がほとんどないからだ。


 唯一ハッキリ戦ったと記されているのが、樹海を踏破しようとして滅んだという、樹海遠征軍の行軍記録の中である。


 その記述と、僅かな生き残りの証言を併せた物が、トロールの数少ない具体的な記録だった。


 まず、樹海の北限近くに群れで生息し、人を積極的に襲ってくるそうだ。


 戦闘力は非常に高い。その巨体に見合った超腕力と、倒したと思っても油断できない異常な再生力。そして、獲物を執念深く追う貪欲さを持ち合わせた、危険な魔獣である。


 トロール1体に対して、兵士300人が犠牲になったと書かれているらしい。


 しかも恐ろしいことに、トロールはある魔獣を引き寄せる。それが竜だ。


 そう、竜である。


 空を飛び、ブレスを吐き、鋼鉄の剣さえ弾く鱗を持った、魔獣たちの王。


 どうも、トロールを餌にしているらしく、腹をすかせた竜が生息地付近に姿を見せるらしい。


 ここで疑問が一つ出てくる。竜なんて恐ろしい存在に狙われ続けているのに、どうしてトロールが樹海の北側に住み続けているのかということだ。


 ただ、それもすでに大勢の学者によって議論されていた。結局、トロールの巨体を維持するためには、豊かな猟場である樹海の北側に住み続けるしかないのではないかと結論付けられたらしい。獲物が多い場所でなくては、トロールの腹は満たされないのだろう。


 群れでいるならなおさらだ。


 そして、そのトロールの群れを竜などのさらに凶悪な魔獣が狙っている。


 樹海の北側では、軍を壊滅させるほどの凶悪な魔獣でさえ食物連鎖の一部に組みこまれているらしい。絶対に行きたくないな。


 しかし、ここは樹海の西部である。トロールの生息域とはだいぶ離れているはずだった。


「じゃあ、なんでこんなところにいるんだ?」

「迷い込んできたとしか……」


 いや、トビアのせいじゃないんだし、そんな申し訳なさそうにされると俺が困るんだが。


 まあ、生き物である以上、動き回って生息域から離れてしまう可能性はゼロではないだろう。だとすると、俺たちは運が悪かったってことか。


「それで、どうするのだ? 儂もトロールは初見故、その強さもいまいち分かっておらん。だが、戦うというのであれば、全力を尽くそうぞ」

「ワフも頑張りますぞ!」


 好戦的な2人はそう言うよな。


 俺としては危険は冒したくない。少し強そうというならともかく、相手は伝説級の魔獣なのだ。


「迂回路はないのか?」

「この谷を抜ける以外の道を俺たちは知りません」

「山を無理にでも越えて、トロールを避けるのは?」

「この辺の山は急斜面なうえに脆いんで、普通に歩いて越えることはできやせん。ペガサスに乗せてもらって何往復もすれば迂回はできるとは思いますが……」


 ペガサスに乗れないメンバーは、結局無理ってことか。この面子で言えば、大犀は置いていくことになる。


「でも、それでもいいんじゃないか?」


 大犀は砦に戻せばいいし、ペガサスに頑張ってもらうだけで済むなら、その方が安全だ。


「よし、まずはトビアたちに先に行ってもらって、安全な場所を確保してもらおう」

「分かりやした」

「むぅ、戦わんのか……」

「当たり前だ。どんだけ強いのかも分からないんだからな」

「残念でありますな」

「一当てしてみてもよいのではないか?」

「ダメ!」


 なんと言われようと、戦いません!


 そして、安全地帯確保兼偵察部隊として、トビア、探検家、狙撃弓兵、メイドさんに先行してもらうこととなったのだが……。


「あ、あれって……」

「ハーピーの群れですぞ!」

「や、やべーじゃねーか!」


 空を飛ぶペガサスの周囲を、10匹以上のハーピーが取り囲んでいた。どうやらこの山岳地帯が奴らの縄張りであったらしい。


 狙撃弓兵やメイドさんがハーピーを落としているが、多勢に無勢だ。


 慌ててペガサスが戻ってくる。ハーピーを引き連れて。


「皆の者! トビアたちの援護をするのだ!」

「はいですぞ!」

「マ、マリティアと薬師はこっちだ! 大剣士、守ってやってくれ!」

「ガオ!」


 その間にも、醜い雄ハーピーたちが群れを成して迫ってくる。ああ、キショイ! 見てるだけでSAN値が削れる!



次回は28日更新です

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ