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125話 オルタの牛人の頭領


 大精霊フォルタル=クルアに別れを告げ、砦に戻った俺たちは、ゼド爺さんたちと報告をし合っていた。


 まあ、大精霊に出会ったと話したら、全員が絶句していたが。どうやら、俺の想像以上に高位の存在であったらしい。


 ゼド爺さんやエミルが言うには、お伽噺に登場するレベルで、下位の神と同列に語られることさえあるそうだ。


 それならば、爺さんたちの驚きも分かる。だが、平静を取り戻したゼド爺さんが、妙にやる気なのが気になる。


 槍を握りしめ、今にも鍛錬を始めそうだ。もう夜中だぞ?


「ゼド爺さん、どうしたんだ?」

「どうしただと! 大精霊様直々に、混沌憑きを滅ぼすように頼まれたのであろう? 武人として、騎士として、これほどの名誉はなかろう!」


 現実を見つつも、騎士としての理想を追い求めているゼド爺さんだ。今回の話は、そんな爺さんの琴線にバッチバチに触れたらしい。


 だが、やる気を出しているのは、エミルやトビア、マリティアにジェイドも同じだ。


 クレナクレムの人間にとっては、それほどの重大事だったに違いない。多分、物語の英雄になった気分なのだろう。


「あー、だからって、混沌憑きを自分から探して、倒すようなことはしないぞ? 見つけるのだって大変だし」

「うむ。それは分かっておる!」


 本当に? 混沌を狩るために樹海を歩き回るとか言い出さないよね?


「さすがに、今の我らでは魔王など相手にしては、ひとたまりもないからな!」


 今のってところが、そこはかとなく不安だ。


「まあいいや。それよりも、牛人を呼び出そう」



オルタの牛人の頭領 モンスター:ミノタウロス

緑5 2/4 R

再生(緑2)、毎日、ミノタウロス・ワーカーを生み出す。あなたのフィールドに存在できるミノタウロス・ワーカーは10体までとする

※ミノタウロス・ワーカー 1/2



 明日になれば、シルバーシープ、土地、首飾りによって緑魔力が3も入手できる。だが、今日中に召喚しておけば、ミノタウロス・ワーカーを1体呼び出せるかもしれない。


 捜索隊が迫っている可能性が高い現在、戦力が1体でも多くほしかった。ラーヴァ・ショットを使用したことでドローした岩甲殻の大犀もいるし、明日の緑魔力が無駄になることもないだろう。


「さて、じゃあ召喚するぞ?」


 これはジェイドとマリティアに向けた言葉だ。驚かせたら可哀そうだからね。コボルトを召喚した時は、驚かせないように召喚のシーンを見せなかったから、間近で見るのはこれが初だった。


「召喚、オルタの牛人の頭領!」

「ウモー!」

「きゃー! いやー!」


 地面に描かれた魔法陣から現れたのは、灰色の毛皮に身を包んだ、巨大なミノタウロスである。想像以上にデカイ! 身長は4メートル近い。砦の天井ギリギリだった。


 手に持った斧は、それだけで俺よりも重いかもしれない。


 体は人型ではあるが、その全身は毛皮に覆われている。手は完全に人。足は蹄という感じだった。


 身に付けている装備は世紀末の世界にいるモヒカンさんたちのような、鋲付きの革鎧である。姿だけ見れば、超凶悪な魔獣だった。


 牛人の頭領の上げた咆哮を聞き、マリティアが悲鳴を上げた。コボルトを見た時のような歓声ではなく、完全に怯えから来る悲鳴だ。ジェイドも、思わず剣を構えていた。


「まあまあ、驚くのも仕方ないけど、こいつは俺の味方だから」

「そうですよマリティアさん。怖くないですよ」


 もうエミルは慣れたものだ。俺が召喚したモンスターたちが恐ろしい存在ではないと、ちゃんと理解している。


 エミルは牛人の頭領に自ら近づくと、その足をポンポンと撫でる。そして、マリティアに振り返り、笑った。牛人の頭領が敵ではないと、アピールしてくれているのだろう。


 ワフも同じように牛人に近づくと、なんとその体によじ登り始めた。そして、その肩の上に座ってしまう。


「ひゃー! 高いですな! これからよろしくお願いしますぞ! 頭領殿!」

「ウモ」

「マリティア殿もジェイド殿も、見てくだされ! 頭領殿は敵ではありませんぞ!」


 エミルたちの行動が功を奏したのだろう。まずはジェイドが、そしてマリティアが少しずつ落ち着きを取り戻していった。


「二人とも大丈夫か?」

「あ、ああ。トビア、お前はよく平気だな」

「はっはー。もう慣れた。目の前で、あのミノタウロスよりももっとデカイ蛇を召喚されてみろよ。あれくらいじゃ、もう驚かなくなるからよ!」


 巨人殺しのニシキヘビを目の前で召喚した体験は、半ばトラウマのようになっているらしい。すまんね。


「お、ドローはバルツの森の見張役か」


 いいカードを引いた。明日以降に召喚しよう。


「さて、オルタの牛人の頭領。まあ、頭領でいいか。頭領よ、配下のミノタウロス・ワーカーを呼び出せるか?」

「ウモ! ウモモ……ウモ!」


 頭領は頷くと、何やら集中し始める。そして、ウモウモとしか聞こえない呪文を唱えると、左腕をバッと前に突き出した。


 俺がモンスターを召喚する時と同じように、地面に魔法陣が描き出される。登場の仕方も、ほぼ同じだな。


 魔法陣の中から牛頭の怪人がせり上がってくるかのように姿を現した。


「ウモ!」


 身長は頭領よりも大分低い。いや、それでも俺たちよりは大きいけどね。2.5メートルくらいあるだろう。身に付けているのは、革鎧とハルバードだ。


「なあ、お前らって、何を食べるんだ?」


 地球の神話に出てくるミノタウロスは、何故か人間を食っていた。牛のクセに。ただ。内臓が人間準拠なら、それもありえるだろう。


「肉か?」

「ウモ! ウモモ!」


 俺が尋ねると、頭領もワーカーも、とんでもないという感じで首を横に振る。


「じゃあ、草?」

「ウモ」


 どうやら草食だったらしい。


「何かこだわりは? 牧草じゃなきゃダメとか」

「ウモ」


 それもないらしい。頭領が配下のワーカーにウモウモと何かを告げる。すると、ワーカーが砦の外にかけていった。何をするつもりなのかと思っていたら、1分もかからずにワーカーが何かを持って戻ってくる。


「ウモ」

「ウモー」


 ワーカーが手にしていたのは、普通の雑草だった。それこそ、砦のすぐ外に生えているやつだ。ワーカーがその草を頭領に手渡すと、2人? 2頭? 揃ってその草を齧り始める。


 どうやら、自分たちは雑草でもいいというアピールであるようだった。これは助かるな。エサ代がほぼかからないってことだ。


 少なくとも、樹海でこいつらが飢えることはないだろう。


「お前らには、拠点の守りなんかをお願いするつもりだ。これからよろしく頼むぞ」

「ウモー!」


121話で召喚したエデンカモシカをシルバーシープに修正しました。


GW中の更新ですが、今年は休養に充てたいと思っています。

今後の更新は、30日、9日、16日を予定しております。

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