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119話 ワフとの再会


 突如現れた空中戦艦による領主館への攻撃を尻目に、俺はペガサスを必死に走らせていた。まあ、必死なのはペガサスで、俺は乗って指示しているだけだが。


「もう、ここまでくれば大丈夫だろ」

「ヒン!」


 町からはかなり離れた。その上空に浮かぶクラウドローズも、大分小さくなっている。


 町の様子も気になるが、俺たちにあれを止めることなどできない。それに、最初の一発以降、クラウドローズから砲撃が放たれることはなかった。


 多分、町への被害はほとんどないだろう。


「ヒヒン!」

「どうした?」

「ヒン!」


 クラウドローズの動きを警戒しながら進んでいると、ペガサスが不意に声をあげる。何か不測の事態かと思って焦ったが、そうではなかった。


 ペガサスが見下ろす視線の先には、複数の人影があったのだ。よく見付けたな。俺と違って夜目が利くのかもしれない。


「あれは……爺さんたちか!」


 合流予定の場所はまだ先だが、先行していたゼド爺さんたちに追いつくことができたらしい。


「驚かさないように、ゆっくりと回り込んでくれ」

「ヒヒィン!」


 伝令のペガサスは、ゼド爺さんたちに気付かれるようにあえて大きく嘶くと、その高度を下げ始めた。


 最初はこちらを警戒していたようだ。まあ、見知らぬ魔獣だからな。


 しかし、すぐに上に乗っている俺や大剣士に気付いたのだろう。


 その場で立ち止まり、こちらに手を振っている。


「みんな! 無事だったか!」

「トールさんも!」

「主! ご無事でしたか!」

「こっちの台詞だワフ!」


 ペガサスから降りた俺に、エミルとワフが歓声を上げた。そう、ゼド爺さんたちと一緒にワフがいたのだ。まあ、他にも見覚えのない少女や、男性まで一緒に居るが。


 いや、男性には見覚えがある。そうだ、トビアの仲間のジェイドだ。オーガの時に見た顔である。


 驚いているジェイドや謎の少女らを尻目に、ワフが俺に駆け寄ってくる。


「主!」

「ワフ、よかった!」


 俺は、満面の笑みを浮かべるワフを思わず抱きしめてしまっていた。自分でもこんな行動をするとは驚きだ。自覚していなかったが、俺も相当不安だったのだろう。


「本当に良かった……」

「ぬおぉ! 主! 苦しいですぞ!」

「す、すまん」

「もう、急にどうされたのですか?」


 こ、こいつは……。俺たちがどんだけ心配したと思ってるんだ。呑気な顔しやがって。


 ただ、その様子には、何か酷い目に遭わされたような昏さは感じられない。


「マジで心配したんだからな!」

「面目次第もござりませぬ。主のお手を煩わせてしまうとは……」


 色々と言いたいことも聞きたいことも多いが、今はもっと重要なことがあった。


「ポーションは余ってないか? 大剣士がかなりダメージを受けていて、1人じゃ動けないほどなんだが……」

「大丈夫だ。2つ余っている」

「それは良かった。こっちは使いきっちまってな」

「それは……。何があった?」

「後で話すよ」


 俺は爺さんから渡してもらったポーションを、未だにペガサスの背にしがみ付いたままの大剣士の口元に運んだ。


 何とか舌を動かして、舐める程度はできている。ただ、飲む力はないようだ。俺は少しずつ手の平に出し、ゆっくりと大剣士に舐めさせていった。


 ゲームのアイテムと違って、少し舐めただけでも効果があるのが、ポーションのいいところだ。


 瓶の中身が半分になるころには、大剣士は普通に動けるようになっていた。


「大丈夫か?」

「ガオ!」


 ペガサスからヒラリと降りる軽快な動きを見れば、もう問題ないことが分かる。残った分を一気に飲み干した大剣士が、力瘤を作って回復したことをアピールしていた。


「おお、よかったですぞ大剣士殿!」

「ガオ」

「それにしても、ポーションを使い果たすとは、よほど激しい闘いがあったのですな」

「ああ」


 ただ、俺の話をする前に、聞いておかなくてはならないことがあるだろう。


「そっちの2人は誰だ?」

「うむ、そうだったな」


 ゼド爺さんが男性と少女を呼ぶ。並んだ2人は、よく似ていた。金髪碧眼というだけではなく、目元などが瓜二つだった。間違いなく血縁だろう。


「ジェイドとマリティアだ」

「ジェイドです」

「ま、マリティアです」


 やはりそうだったか。ジェイドと、その娘のマリティアだった。容体が安定したとは聞いたが、こうやって見ると病気に苦しんでいたとは思えないな。


「でも、どうして一緒に居るんだ?」

「それがな……」


 ゼド爺さんが、2人を連れている理由を教えてくれる。まあ、そこまで複雑な話ではなかった。


 ジェイドを救うために館の地下に向かったゼド爺さんたちは、そこで死亡しているバリーと、瀕死のジェイドを発見したらしい。


 ジェイドは一見すると死んでいるようにしか見えなかったが、実際はかろうじて生きていた。血を多く失い、仮死状態に陥っていたのだろう。


 だが、そのおかげで死んだと思われて、ゼニドーの拷問から逃れられたらしかった。


「黒い鎧を着た騎士が、俺が死んだとゼニドーの奴に言ってくれたんだ。あいつが勘違いしなかったら、本当に殺されていただろうな」


 もしかしてアイオールか? 奴にジェイドを助ける義理はないと思うが、情けをかけたのかもしれない。少なくとも、特務騎士が死亡しているかどうかの判断を間違うとは思えなかった。


「儂らはジェイドを助け出し、館を抜け出した。そして、トビアの手引きで門を通り抜け、無事町を脱出したというわけだ」


 その時に、トビアからマリティアを託されたらしい。最悪、トビアやバリーの仲間扱いで、捕まるかもしれないと考えたのだろう。


 それに、回復したことが知られれば、注目を浴びる。薬師ギルドマスターや領主に目を付けられれば碌な事にはならないのだ。


「しばらく、樹海の砦で匿ってほしいと言われてな」


 断り切れなかったらしい。


「トビアはどうしたんだ?」

「自分だけなら捕まらずに町に潜伏できると言ってな。情報を集めてから脱出すると言っておった」

「そうか……」


諸事情により、しばらく執筆がまともにできそうもありません。

今月は24日に書き溜め分を投稿させていただきます。

来月の投稿については今月の終わり頃に、活動報告にて報告させていただきます。

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