第2話 切り裂く翼に空高く光が奔る ②
アルトは授業を全て慧恋に合わせて選択していた。そこまでするか、と言ったらさも当然のような表情をされた。慧恋としてはそれではアルトのためにならないと考えてのことだったが、ヒュームはそもそも授業に出る必要などそもそもないとすぐに気づいた。
「やあ慧恋さん、ちょっとアルト貸してくれる?」
昼前最後の授業が終わり教室を出た二人を待っていたのはシロンと誘里だった。シロンは背を壁に預け腕組みをし、二人の姿を認めると人差し指と中指をたててビシっと挨拶をした。女性陣は呆れ顔だった。
「……アルトを貸せ、とはどういうことだ? ヒュームがヒュームのオーナーなんて聞いたことないぞ」
「おれはただ友達の彼女に断りいれるニュアンスで言っただけだけど」
「だ、誰が彼女だ、誰がっ。なぜ、アルトを連れて行きたいのか聞いているんだ」
「だってほら、もうお昼だよ。慧恋さんは一人になりたいだろう?」
「私たちがアルトくんとお話したいっていうのもあるのです。もちろん慧恋ちゃんも来ていいのです」
アルトは慧恋と契約したときを思い出した。昼食にしようと言ったあと、シャーリィによってレグルスとまとめて追い出されていた。
「聞いてないのかい、アルト。慧恋さんはヒュームと食事をともにするのは苦手なんだよ」
「そういうことだったんですね。僕に気を遣ってくださらなくても結構だったのに」
お前だけは別だ、とは言えなかった。アルトになら見られるのはいいと思えはするが、苦手なことに変わりはない。それにとてもじゃないが、この二人の前でそんなこと言えない。
「そうだな、お前にも私以外にも交流できる相手がいるべきだ。行ってこい。……お前のことをどうでもいいと思っているわけではないぞ。私といたいならいてもいい」
「……では。お言葉に甘えて。行ってまいります」
二人に挟まれて、アルトの背中が小さくなっていくのを見送る。もっと素直な言い方はできないものかと、内心溜息をつく。ものは大切にするべきだというが、少し過保護すぎる気もする。
「……。なんだよ、あいつ。私に置いて行かれるのはだめで、私を置いていくのはいいのか」
ヒュームの耳はいいから、聞こえないように呟いた。言葉を発した時点で、聞いてほしかったのかもしれない。そう気づいて嫌になった。こんなに嫉妬深いなんて知らなかった。
「アルトは私の嫌なことを避けてくれたんだ。私も行くことを勧めたし」
慧恋が望めばきっと一緒にいてくれる。一人になりたければそう言えばいい。
そんなアルトを。完全に拒絶してしまえば。
どうなってしまうだろう。
「……アルトなら大丈夫だ。パーソナルエリア狭いし風呂に侵入したり添い寝しようとするやつだ」
屋上に行こうと思った。そこでアルトが作ってくれた弁当を食べる。午後になれば変わらずアルトが顔を見せてくれる。
「私はアルトに何を求めているんだ」
アルトには申し訳ないが、弁当はおいしく食べられなさそうだ。




