第2話 切り裂く翼に空高く光が奔る ①
シャーリィ・L・クリングラヴァーは男が嫌いだ。正確にいえば生身の男が、だ。それがヒュームだと分かっていれば平気だと強がっているが、分かりにくい昨今は彼女にとって少しばかり苦痛である。男嫌いの原因になった男が、実はヒュームだったと知った時には狂いそうになったが、だからといって、急に治るものでもない。男嫌いは歪んだかたちとなって今を蝕む。
シャーリィはここしばらく、時間が許せば部屋に籠っている。慧恋やレグルスとの交流の時間以外はどうでもよいのだ。それこそ講義をしなければならないのも面倒なのだが、慧恋が自分の授業を選択してくれているのでやらないわけにはいかない。ここは機士団棟にある部屋でもなく自分のデバイスなどを量産している工場でもないプライベートな自室だ。いまは机に向かっている。机の上には工具と、同じ形をした部品がいくつかと、電子回路など。それだけ見れば何かのデバイスを手作りしていると想像がつくが、傍らには鈍く光る碧色の宝石のようなものが転がっているため、装飾品にも見える。
ピラーでアルトの大剣が壊れてしまうのは想定済みだった。あの子に大きな武器は不釣合いなのだ。かつて人々には鉄の塊が空を飛ぶのを信じられなかった。ものには相応のサイズがある。
アルトは唯一の剣を失った。シャーリィはアルトに慧恋を守ってほしい。あらゆる脅威、恐怖から。とはいえ大剣が無事だったとしてもあれを持ち運ばせるのは学生としていかがなものかと、彼女の中に微かに残った常識が囁く。
「それこそロケットパンチとか……なんて」
守る手段はアルト側の要因だ。守る機会――慧恋をいつも守るために、常にそばにいられるように信頼を得なければならない。そのために誕生日プレゼントというイベントよりも、ピラーでの鮮烈な出会いを優先した。何気にあれは賭けだった。盾はともかく、翼の実用試験が難しいからぶっつけ本番となったからだ。
結果うまくいってよかったが、想定外だったのは機士団加入を断られたことだった。慧恋を機士団に“戻す”ことができればアルトのための剣もシャーリィがつくらなくて済んだのかもしれない。アルトが自分を離れて成長しているのは嬉しいが少し厄介だ。
「よし、完成……と」
机の上には同じ形のデバイスが四つ並んでいた。
これも試さなければならない。守るための武器を使わせる方法は簡単だ。




