オレンジマフラー⑦
君のいる、教室。
オレンジ色の、教室にて。
オレンジマフラー⑦
沢渡が戻って来た頃にはもう誰も残っていなくて、また、今朝のように教室には俺と彼女の二人だけだった。
「沢渡遅えよ。みんな帰ったけど」
「解ってるよ。わざとだもん」
ハイ、これ本條くんの分、と紙パックジュースを差し出す沢渡からそれを受け取る。
「ホントはジュースとかどうでも良かったんだけど、また朝みたいに本條くんと話したかったから」
みんなが帰るまで時間潰してたの。
納得したような、してないような。
ジュース代を払おうとすると、待たせたお詫びだと言って沢渡は断った。
「で、話って何」
「あ。ライブ見たよ。大盛況だったねー、お疲れ様」
ジュースにストローを刺しつつ、沢渡は言う。
そうか。あのごった返した体育館に、沢渡もいたのか。
「バンドしてるのは知ってたけど、見たことなかったから。格好良かったよ」
「どうも」
改めて感想を述べられたりすると、照れくさかったりする。
好きでやってることだし、圭介や祥太郎や森野と馬鹿騒ぎみたいに盛り上がってるのが、ただ楽しいだけだけれど。
沢渡に認められたみたいで、それはなんだか嬉しくて。
「でね、最後の曲。あれ何だっけ?」
「蛍」
「そう、それ蛍。あたし、あれがいちばん好きだなあ」
あれって、オリジナルなんでしょう?と彼女は微笑む。
「祥太郎が作った曲に、圭介が歌詞を書いたんだ。で、それを森野が唄ってる訳だから、俺は実質何もしてない」
苦笑混じりにそう言う。
俺なんて、ドラムが出来なきゃあのバンドにいる必要ないんじゃないかと、時々、思う。
それくらい、アイツらの力は大きくて。
披露できるオリジナル曲は今のところ"蛍"だけだけれど、予備軍みたいな楽曲なら他に数曲ある。
「そお?本條くんいないと成り立たないでしょ」
沢渡は、何言ってるの、と笑った。
「あたしは、本條くんがいるから"蛍"を好きだと思ったよ」
「どうも」
「それからあたし、本條くんのこと、好きだよ」
「どうも」
相変わらず、沢渡はにこにこしていて。
夕焼けも終わりを迎える放課後。
て言うか、今何て言った?
「は?」
聞き流し気味だった言葉に、目を見開くと、沢渡は「聞いてなかったの?」とむくれた。
「あたしを彼女にしてみない?」




