オレンジマフラー⑥
オレンジに染まる教室。
「本條くん、話したいことがあるんだけど」
オレンジマフラー⑤
「えっと、じゃあ最後の曲きいてください!"蛍"!」
文化祭ライブ午後の部。
午前を目一杯サボり尽くした圭介と森野を含め、俺たちのバンドはステージに立っていた。
ぎりぎりまで体育館裏の控えブースに現れなかった二人を、イライラをあからさまに示す祥太郎と待つ時間は、結構ツラかった。
そんな根源の二人はと言えば、ステージに上がれば普段に拍車をかけてノリノリになるんだから仕方がない。
俺たちのライブには、この二人の弾けすぎているノリが欠かせなかったりするんだから、縛りはできないんだよな。
ただ、もう少し自制して欲しいかなあとは…思う。
祥太郎が曲を書いて、圭介が詞を付けた唯一のオリジナル曲、"蛍"を演奏し、俺たちのステージは幕を閉じた。
「ありがとうございました!」
*******
「本日の売上、述べ355個で35,500円です!お疲れ様でした!」
クラス委員長からの最終報告。
平均して、1時間に約50個売ったことになる。
こんな得体の知れないゲテモノパンが、よくまあこんなに売れたものだと思った。
しかし、何故クラス委員長が報告してるんだ?店長はどうした。
「祥太郎、圭介は?」
帰りの挨拶も終え、ばらばらと解散し出した教室。俺は祥太郎に声を掛けた。
「はしゃぎすぎて転んで保健室」
里帆が鞄を持って行ったから、そのまま帰るだろ、と溜め息混じりに応える。
何やってるんだ、圭介は。
だから、もう少し自制すべきだと言ってるんだ。
「じゃあ俺も帰るわ」
「ああ、また明日な」
右手を軽く挙げ、帰宅すると言う祥太郎を見送った。
空はオレンジ。
沢渡は、廊下側の席で輪を作り、友達と談笑している。
クラスメイトたちは続々と帰途に就き、教室に残る者はまばらだった。
俺もそろそろ帰るか、と支度を始めた時、沢渡が声を掛けて来た。
「本條くん、ちょっといいかな」
「いいけど」
別に構わないが、少し面食らった。
今朝の話も踏まえて、オレンジ色に色付いた教室での沢渡には何故だか緊張した。
彼女は今も、この夕焼けを綺麗だと感じているのだろうか。
俺がそう思うのと同じように。
「話したいことがあるんだけど、教室残っててもらっていい?」
解った、と伝えると沢渡はジュースを買いに行くと言って友達と教室を出た。
輪を作っていた彼女の友人たちは荷物を持って出て行ったから、戻って来るのは沢渡一人だろう。
帰ろうかと立ち上がっていた俺は再び席につき、携帯電話を触る。
特にすることもないから、圭介に労りのメールでも入れておこう。アイツの怪我なんて、たいして心配もしてないけど、暇つぶしに。
オレンジに染まる教室で、彼女を待つ時間は、不思議と苦ではなかった。




