オレンジマフラー⑤
戦え、副店長。
戦え、オレンジ色の、ヤキソバン。
オレンジマフラー⑤
正直、アホかと思った。
「焼きそばでいいんじゃね?なんでヤキソバパンなんだよ」
文化祭出し物に圭介が推したのは"ヤキソバパン屋"。
誰もが、パンの要素は不必要だと言った。
「解ってないなー。ヤキソバパン屋と見せかけて、うどんパン、ラーメンパン、ソバパンを売るところがいいんじゃないか!」
圭介が呆れたように言う。
「ちょっと待て。なんだそのゲテモノパン屋は」
「あ。きしめんパンもいる?」
そういう問題じゃない。
「せっかく祭りなんだからさあ、普段食べないもの食べたいだろ?だからパンに色々挟もうぜ」
「色々挟みすぎだ!」
笑いながら言う圭介に、祥太郎を筆頭として皆が反発した。
ここまでキテレツなことを考える圭介の脳内を覗いて見たい……イヤ、それは止めておいたほうがいいか。怖いから。
*******
「ラーメンパンと、ソバパンひとつずつ下さい」
「あ、ハイ。200円です!」
「ありがとうございますー」
文化祭開始から2時間ほど。
俺たちのクラスのブースは、意外に盛況だった。
「何故売れるんだ」
最後まで拒絶していた祥太郎は、衝撃を隠せない。
あの話し合いの後、ヤキソバパン以外の検討が進められ、改良が施されていった。
どんな過程を踏まえたのか、俺は改良チームには不参加だったから詳しくは知らないけれど、ゲテモノパンは"美味しい"と言えるレベルまでに化けた。
「俺の考えに間違いなし!ヤキソバン大繁盛!」
大澤店長、大満足。
しかし店長、ヤキソバンって店名は今更ながらどうかと思います。
「本條副店長!あとは任せた!俺は秘書森野とライバル店偵察してくるから!」
「は?!ちょ…圭介!」
それはあれだろ。森野と2人でサボって遊びに行くってことだろ。
「あっちゃん、よろしく!あたしと圭介でヤキソバンのことも、ついでに宣伝しまくって来るから!」
今ついで、っつたぞ森野。
「ライブまでには帰るから!」
そう言い残し、2人は逃げるように去った。
おい、それは文化祭ライブの時間までサボるってことか?
森野がボーカルを勤める、圭介、祥太郎、俺の4人組バンドのステージが、4時間後にスケジュールが組まれている。
「あいつら、覚えとけよ…」
俺はヤキソバを焼きながら毒づいた。
売り子の沢渡の声が聞こえる。
圭介や森野も、彼女くらい真面目に励んでくれたらいいのにと思う。
オレンジの看板を掲げたゲテモノパン屋は、客足を途絶えさせることなく、賑わっていた。




