オレンジマフラー③
明日は文化祭。
放課後のオレンジも見納め。
―オレンジマフラー③
「圭介、テメェ!何サインなんか入れてんだ!」
文化祭を明日に控えた放課後、祥太郎があることに気が付いた。
「いいじゃん!プレミアつくよ!レア物だよ!」
圭介が言うには、空気読んで裏側にサインしたことを評価して欲しいらしい。
イヤ、どうせ空気読むなら、サイン入れない方向に読んで欲しかった。
「あたしも入れるっ」
いさかいをする二人を横目に、圭介に便乗する形で森野が暴挙に出た。
「じゃあ私も」
「俺も」
と、便乗犯が集うのにそう時間は掛からず、あっという間に看板裏はクラスメイトの署名で埋め尽くされる。
始めのうちは反発していた祥太郎も、ここまでクラス一丸となられると折れるしかないらしく、せめてもの足掻きと、圭介の真横に大きく署名した。
「やめろよ祥太郎!俺のサインが目立たないじゃないか!」
「知るかよ。お前は色んな方向で目立ちすぎだ」
祥太郎の嫌がらせは圭介に効いたらしく、ひたすら、俺が発祥者なのに、目立つべき存在なのに、と文句を垂れていた。
俺はと言えば、そんな自己主張の激しい二人のサインから外れた"みんなが書くから仕方がなく書いた"というようなエリアに、ひっそりと署名した。
「男子の皆さーん!はっぴ全員分!完成しました!」
署名騒動もある程度鎮静化した頃、クラスメイトが教室に戻ってきた。
家庭科室でミシン縫いを担当していた、衣装製作部隊の帰還のようだ。
揃いのユニフォームとして、はっぴ製作に携わっていた精鋭部隊。
すげえな。はっぴって作れるんだ。
「一人一着ずつ配るから、明日まで汚したりしないでね。破いたら罰金でーす。一千万円でーす」
部隊長挨拶。
クラス全員分のはっぴを完成させた達成感からか、いつもより何割増かでテンションが高かった。
「カスタム可!ただし破くなよ。呪うよ!」
軽く騒がしい輪の外、相変わらず沢渡はその騒ぎに参加せず、看板に署名していた。
先に署名していた友達に促されたようだ。
後々、衣装製作部隊の面々の名前も書かれ、クラスメイト全員分の署名が完了すれば、この看板も完成、と言えるだろう。
(まあ、圭介がサインなんかしなきゃ、既に完成していたんだけど)
明日は文化祭。
揃いのはっぴを着て、製作に励んだ看板を誇らしげに掲げて、お祭り騒ぎだ。
さすがにみんな、明日が楽しみで、ワクワクそわそわしている。
オレンジの夕焼けも、そんな高揚感を色鮮やかに演出していた。




