オレンジマフラー②
「本條くんには、内緒」
彼女の中で、オレンジは、一体どこに置かれているのだろう?
―オレンジマフラー②
看板造りは着々と進行中。
文化祭まであと1週間を切った。
放課後の看板製作活動も終盤で、完成を目前に控えた頃だった。
「おい!なんでピンクの花が描いてあるんだ!」
祥太郎の怒号が響き渡る。
ああ。森野やっちまったのか。
「いいじゃん!サクラ柄!」
「しかも桜?!いま10月ですけど!」
お互い一歩も譲らない口喧嘩。
俺はと言えば、関わらないにこしたことはないので完全無視。
代わりに"オレンジ色の彼女"の傍らに寄った。
看板はもうほぼ完成している。
彼女は祥太郎や森野が騒がしくしている輪から離れ、ひとり会計の作業をしていた。
「沢渡」
彼女に声を掛けると、一瞬、顔を向けて俺を確認すると、再び目線を手元に落とした。
「看板のレタリングしたの、本條くんでしょ?」
改めて美術分野上手いね、と右手を止めずに微笑む。
「沢渡こそ、会計と衣装製作と、器用に二役じゃん」
「あたしはただ、好きなだけだから」
それで十分じゃねえの?と言ってやると、沢渡は俯きながら「ありがと」と紡いだ。
照れてんのか?
「沢渡、オレンジ好きなの?」
ふと、看板製作開始当初から気になっていた疑問を投げ掛ける。
「うーん。普通?」
「じゃあ、何で看板オレンジ?」
てっきり、好きだと言う返事を返されるものと予想していた俺は、少し驚き、そう問う。
「本條くんには、内緒」
「は?」
またもや期待外れの答え。
繰り返し尋ねてみても、相変わらずの素っ気ない対応で、次第に俺は諦めた。
彼女の中で、オレンジは、一体どこに置かれているのだろう?
その立ち位置は、何故だか特別なもののように思えてならなかった。




