幕間:小姑イザベラの企み
私はイザベラ・デステ。フェラーラの公女よ。
歴史と気品あるエステ家に生まれ、幼少の頃から公爵家の教育を受け、完璧な社交をこなしてきたわ。
血の滲むような私の努力は実を結び、今や国民からは畏怖を込めて「フェラーラの女傑」なんて呼ばれている。当然の評価よね。戦争オタクで軍隊のことしか頭にない無骨な兄アルフォンソと違って、私は詩を愛し、外国の言葉も完璧にマスターして各国の大使たちと直に交渉だってできる。私が強気な態度で睨めば、どこの男たちも「女とは思えない手腕だ」と青ざめて引き下がるのよ。
そして、何よりも絶対的な自信があるのが私の「美的センス」!
絵画や彫刻といった芸術品を見抜く眼力はもちろん、私が身に纏うドレスや髪型は、国中の貴族たちがこぞって真似をするトレンドの最先端。父である公爵からだって、会うたびに「お前が男だったら、この国を任せられたのに」と悔やしそうに言われているくらいなんだから。
私の見た目?ま、まあ、天は二物を与えないのよ。その点、私は知性と強さ、それに美的センスまで与えられたんだから、少しぐらい太ってたって顔がひしゃげてたって、しょうがないじゃない?お父様はこっそり「兄のアルフォンソは引き締まった彫刻のような男前だというのに……わしの大玉娘は、今日もふてぶてしい顔で丸パンを頬張っている。だが、そこがたまらなく可愛い!」って言ってくれてたし…そんなことはどうでもいいのよ!話を戻すわよ。
――だからこそ、「成金ボルジア」の娘が我が家に嫁いでくると聞いた時は、激怒で身が震えたわ!
教皇の権力を笠に着た成り上がりの毒婦が、名誉あるエステ家に嫁ぎ、公子妃の座に収まるなんておこがましいにも程がある!
お父様だってお兄様だって、裏では「ボルジアの手前、仕方なく迎えるのだ」と苦々しく言っていたわ。
ならば、エステ家の誇りとみんなの為に、この私が立ち上がるしかないじゃない!
汚らわしいボルジアの毒婦なんて、私の知的で洗練された完璧な社交術で完膚なきまでに叩きのめし、フェラーラから追い出してやるんだから!




