初めての友達
前の人生の私は、雄一に会いたくて会いたくて、兄に頼み込んで会えるようにして貰っていた。
だが、もうあのような人生を歩みたくない私は、兄に頼んで会う機会を設けて貰おうなどと思わない。
それでも、最初の雄一との出逢いは、前の人生と全く同じだった。
それは避けられなかった。
兄が自宅に雄一を初めて連れて来た日。
それは変えることが出来なかった。
その後、私は兄とは距離を置いた。
「どうしたんだ?
最近は僕を放っているな。」
「もう、高校生ですもの。お兄様。」
「そうか………高校生だからか……。
そうして華子は【お兄様】から離れて行くんだな。」
「何時までもお兄様の後を追い掛けていましたら、お兄様に恋人が出来ません。
華子はお兄様の御為に変わりましたのよ。」
「ふっ……あははは……そうか僕の為か……成程………。
では、僕は恋人を連れて来よう。」
「私の眼鏡に適う方にして下さいましね。」
「それは……どうかな?」
「お兄様の意地悪!」
「あはは………。」
◇◇◇◇
雄一しか見ていなかった前の人生。
雄一を視線から外すと、別の世界が見えて来た。
前の人生では同級生の友人が居なかった。
女性の友達が一人も居なかった。
前の人生で兄から言われたことがある。
「少しは周りを見たらどうだ?
華子は雄一しか見ていない。
僕の周囲の女性は、男性の友達よりも女性の友達の方が遥かに多い。
僕もそうだ。
異性の友よりも同性の友の方が多い……というか、異性の友は居ないに等しい。
華子……友達を通して視野を広く持ちなさい。
そうすれば、別の楽しみが出来る。」
私は時間を遡っても、雄一に恋をした。
あの眼差しが、前の人生の雄一と同じだった。
当然のことなのに、心は震えた。
再び会えたことが、この上なく嬉しかった。
私はこの初恋に溺れたくなかった。
だから、私は雄一を避けるしかなかった。
◇◇◇◇
春のある日、高校に転校生が入って来た。
前の人生でも出逢っていたかもしれないが、私は全く覚えていなかった。
隣の席になった。
彼女の名は、吉田幸代。
九州からの転校だった。
「よろしく!」
「よろしく。」
時々、九州の言葉が出るのを少し気にしている様子だった。
前の人生で話したことがあったのかもしれないが、全く覚えていない。
幸代は一人だけ東京にやって来た。
家族の転居による転校ではなかった。
親族の養女になる為に一人で東京へやって来たのだ。
だから、彼女には父が二人、母が二人居る。
私の前の人生で、聞いたことがあった話かどうかさえ分からなかった。
私は彼女が……幸代が気になった。
私が気になるより先に、幸代が何かにつけて私を頼ったからだ。
時を遡ったこの人生で初めて出来た友達が、吉田幸代。
前に人生で居なかった友達に彼女はなってくれた。
「高嶋さん、一緒に帰りませんか?」
「私と?」
「はい、宜しければご一緒させて下さい。」
「私で宜しいの?」
「勿論です! お願いします。」
「一緒に帰りましょう。」
私は初めて同級生と一緒に学校から自宅への帰路に就いた。
幸代の自宅は、私の自宅より遠かった。
幸代は沢山、話してくれた。
時々、九州の言葉が幸代の口から出た。
幸代の言葉は、アクセントが少し違っていた。
そんな違いなど幸代は気にせずに話してくれた。
私も次第に気にならなくなった。
幸代と居る時間は楽しかった。




