時を遡った朝
目覚めたら、そこは私の部屋だった。
懐かしい実家・高嶋邸の私の部屋。
⦅死ぬ前に見る夢かしら?
だったら……会いたいわ。
お父様に……お母様に……それから……お兄様……。
願いが叶うなら………雄一さん……もう一度、一目でも……。⦆
「お嬢様、お目覚め下さいませ。
朝でございますよ。」
⦅えっ?⦆
「お嬢様、このまま起きて下さらなかったら遅刻してしまいます。
どうかお目覚め下さいませ。」
「えっ?」
「お嬢様、起きられましたのね。」
「ど……どうして……ここに居るの?」
「どうしてと仰せになられましても……。」
「それに………貴女、若いわ。」
「お嬢様! 若い?……何を仰いますのやら………。
私はもう40歳を過ぎておりますよ。」
「でも…………。」
「さぁ、起きられて朝食を召し上がられませ。」
「…………朝食?」
「お嬢様! お早くなさいませんと、本当に遅刻してしまわれますよ。」
「どこに? 何故、遅刻するの?」
「お嬢様! 一体、どうなさいました?
早くなさいませんと、学校に遅刻してしまいます。」
「学校?」
「はい。」
「私、学校へ行くの?」
「お嬢様………今朝は如何なさいました?」
「今……何年?」
「え………。」
「だから、今は何年なの?」
「昭和50年でございます。」
「昭和!」
「あの………お嬢様、今朝は一体……如何なさいました?」
「今から学校へ行くのね。」
「はい、左様でございます。」
「………分かったわ。起きます。」
「はい!」⦅良かった……お嬢様、変な夢でも見られたのかしら?⦆
⦅私………時を遡ったの?
高校生に戻ってる。
もし、これが死ぬ前に見る夢では無くて現実なら………。
私はやり直せるわ。
もう一度、人生を……今度こそは愛される人生を!
やり直そう!
もう、夫から愛されない空しい人生は嫌!
今度こそ、雄一さんを奪ったりしない。
私は別の人生を……今度こそ愛されたい。愛される人生を歩みたい。
そんな生き方をするわ。⦆
時を遡った私は、今度こそ間違わないように生きると決めた。
もう雄一から愛されたいなどと思わない人生を送ると決めた。




