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男たち 女たち  作者: yukko
神様
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谷川愛子

この世の人達から【神】と呼ばれている声の主が美穂子に告げた。


「時を過ぎて高嶋華子が、どのように過ごしているか気になるのなら見せようぞ。

 其方の望み通りに、高嶋華子の人生を見てみるが良い。」

「見るわよ。」


高嶋氏郷の前に美穂子が知らぬ男女が居る。

その男女の間に男の子が居る。


「雄一、愛ちゃん。

 妹の華子だ。覚えているか?」

「覚えているよ。

 華子さん、大人になったね。」

「……離婚も経験致しました。」

「華子……。」

「あら、お兄様、お話しなさらなかったの?」

「話しているが、わざわざ言うこともあるまいに……。」

「大変だったね。」

「本当に………。」

「大変なのは、私よりも谷川愛子さんですわ。

 お子さんのこと伺いました。

 私はどれだけ役に立つか分かりませんが、得た知識をお伝えしたり、誰かに繋ぐ

 ことは出来るようにしたいと存じます。」

「ありがとう。」

「ありがとうございます。母親のことに気を配って下さる方は家族以外には……。

 なかなか……。」

「これでも、華子は福祉大学を卒業したんだ。

 何か役に立つことがあれば使てやってくれ。」

「離婚後に入学なさったのですね。」

「はい、無事に卒業致しました。

 今は児童相談所で働いております。

 障害の手帳に関わる判定をさせて頂いております。」

「それは、頼もしいです。

 よろしくお願いします。」

「こちらこそ微力ではございますが、お役に立てれば幸いでございます。」


華子は、離婚後に大学へ進学して職に就いた。

美穂子は悔しがった。

自分の親が生きていて会社を経営していたら、大学へ楽に通えたのに……と悔しがった。


「高嶋華子は努力したのだ。」

「お金持ちだからよ!」

「…………其方は………。」

「何よっ!」

「何も言わずに見るが良い。」

「分かったわよ。」


華子は谷川愛子の心の支えになっていった。

それから、時が過ぎて谷川雄一と愛子の末子・雄二朗が小学6年生になった年の冬のことだった。

愛子が高熱を出した。

そして、そのまま帰らぬ人になってしまった。

愛子の病名は、細菌性髄膜炎。

風邪のような症状から数時間後に亡くなることがある危険な病気である。

愛子は激しい頭痛と高熱で苦しみ亡くなった。

残す子のことを最期まで心残りだったはずだと華子は言った。

誰もがそう思った。

雄一は子育てが厳しくなった。

母親が居なくなり、父親の負担が大きくなった。

周囲は雄一に再婚を勧めたが、障害児の雄二朗の存在が再婚が出来ない理由になった。


「谷川さん、再婚なされば宜しいかと存じます。」

「でも………雄二朗を受け入れて下さる方でないと……。

 そんな方が存在するように思えないので………。」

「必ずいらっしゃいます。

 先ずは、再婚よりも日々をどのように過ごすか、をお考え下さい。

 私は……出来れば雄二朗君を施設への入所をお考え頂きたいです。」

「施設ですか…………。」

「他にもお子さんがいらっしゃいます。

 受験生もいらっしゃることですし……一度、施設の見学を雄二朗君と御一緒にな

 されれば宜しいかと存じます。」

「見学ですか?」

「はい。」

「良くお考え下さい。

 見学なさる時は、雄二朗君も勿論のこと御一緒に!」

「考えてみます。」

「華子さん、どうかよろしくお願い致します。」


美穂子は驚いた。


「あの美男美女夫婦………こんな別れがあるのね。」

「人の命は分からぬものじゃ。」

「再婚か……今度はどんな女と結婚するのかなぁ……。」

「高嶋華子のことは良いのか?」

「先ずは、あの男性(ひと)よ。あんな男前! 初めて見たわ。

 大崎誠もハンサムだけど、その上を行く美しさだわ。」

「見た目が大事だと其方は思うのじゃな。」

「全く気にしない訳ないわ。

 昭さんも私好みの御顔立ち!………昭さん!」

「また、大声で泣くのか……其方は忙しいのう。」

「昭さんっ!」

「見ないのか?」

「!……………見るわよ。」


末子・雄二朗を連れて、谷川雄一は施設へ見学に行った。

雄一が頼んで華子に付いて来て貰った。

地域の児童相談所の相談員には華子から連絡を取り、施設へは地域の児童相談所相談員から話が伝わっている。

施設に到着すると、多くの人が居た。

障害を持つ人達が過ごしている。

見学を終えた雄一は「どうしても預けたくない。」と華子に言った。


「雄二朗は………どう思うだろう。

 父親に捨てられた……そう思うのでは……ないだろうか。」

「谷川さん………雄二朗君の気持ちは勿論大切です。

 どう感じるかは、分かりません。」

「そうだよね。」

「谷川さん、このまま貴方が無理なさって倒れたら元も子もありません。 

 ………雄二朗君の療育は大切です。

 他のお子さん方の教育も大切です。

 それをお一人で行うおつもりですか?」

「僕は父親だから………。」

「大変残念なことに日本は父親が一人で子育てする環境を整えておりません。

 経済的に自立出来ているのは父親が多く、母親のように経済的な支援は不要

 と………何も支援策はありません。

 谷川さん、お仕事……セーブ出来ますか?」

「それは…………。」

「無理ですよね。

 それが悲しいけれども現実でございます。

 だから、妻を亡くした夫は子どもの為に再婚するか、子どもを預けるか……。

 それしか選択肢がないと言えます。

 谷川さん、雄二朗君を預けられないのなら、再婚を………。

 お考えになって下さい。

 これは、相談員としての言葉ではなく、友人の妹の言葉でございます。」

「再婚………一番、難しいことだ。」

「そうですね。

 雄二朗君が受け入れられるか、他のお子さん方が受け入れられるか……。

 一番考えないといけないのは、お子さん方のお気持ちでございますものね。

 ………ですから、一番、出来ることをお考え下さいまし。」

「一番出来ること………雄二朗を預けること?」

「ええ、谷川さん、雄二朗君に心も何もかも優先していませんでした?

 愛子さんも、貴方も………。

 今まで他のお子さん方が寂しかったかもしれないと考えられたことは?」

「他の子の気持ち………配慮が足りなかったかもしれない。」

「谷川さんだけではございません。

 多くの親が、そうなってしまいます。

 だからこそ、預けている間、他のお子さんを見守れます。

 心を砕けられます。」

「そうだな。」

「見学だけではなく体験お泊りも致しましょう。

 職員にも場所にも、それから他の入所者にも慣れて欲しいですから……。

 体験して駄目な場合もございますから、一度、体験するかどうかも加えてお考え

 下さい。」

「体験………考えます。」

「一度、お子さん方も交えてお話し下さい。」

「子ども達に?」

「ええ、もう上のお子さんは大きくなられましたよね。」

「まだ、18歳未満だ。」

「もう18歳ですわ。

 愛子さんが大切に愛情をかけてお育てになられたお子さん方ですわ。

 大丈夫でございます。

 しっかり考えてくれますわ。」

「……そうか……まだ18歳ではなく、もう18歳。

 そう考えてもいいのだな。」

「ええ、そうですわ。」


美穂子は詰まらなさそうに見ている。

そしてポツリと言った。


「愛情など親から貰えなかった。」


美穂子の目には大粒の涙が光っていた。

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