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男たち 女たち  作者: yukko
神様
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58/73

美穂子

「あぁ………良太に……殺されたんだわ。

 なんでっ! 毎回、良太に殺されるのよっ!

 大崎工業の社長に……学を……!

 どうして毎回、私の望みは叶えられないの!

 ……………どうして…………。

 あぁ………会いたいわ………今、どうしているのかしら?

 昭さん………少しは悲しいと思ってくれた?

 …………少しは愛してくれた?

 ………………それにしても、何故?

 無理心中をどうして避けられなかったのかしら?

 どうして毎回、無理心中になるの?

 タイミングは変わってるけど………良太が……同じ結果になるのは何故?

 憎いわ……良太!………そして大崎誠!」


美穂子は大声で泣き叫んでいた。

すると、どこからか声がした。

凛とした涼しげな声が聞こえて来た。


「其方は、どうして覚えておるのだ。」

「! 貴方、誰?」

「其方が何故覚えておるのかが分からぬ。」

「誰よっ! 何処に居るの?」

「余か……余は………其方ら人の中には余を【神】と呼ぶ者も居る。」

「神? バッカじゃないの。神なんか居ないわよ。」

「其方がそのように思うなら、そうなのであろう。それで良い。」

「………………ねぇ、本当に神様なの?」

「そのように呼ぶ者も居るというだけじゃ。」

「ねぇ、神様なら分かるわよね。」

「何を知りたいのじゃ。」

「中条昭さんのこと……知りたいの。」

「中条昭………其方の子の父親であるな。」

「ええ、そう。

 ねぇ、どうしてる?………元気かしら?

 私を恋しいと思ってくれてるかしら?」

「見てみるか? 其方の目で。」

「ええ! 見たいわ。見せてよ。」

「それが頼む者の言葉か?」

「あ………見せて下さい。お願いします。」

「分かった。この湖面を覗き見よ。」

「はい。」


美穂子が覗くと、そこに中条昭が居た。


「社長、俺を解雇せずに………いずれ後悔しますよ。」

「もう、お前が育てた者の中から適切な人物を役員にした。」

「ほぉ―――っ、それは、それは重畳。

 ………誠君が退職したからですか?」

「……………息子に捨てられるとは思わなんだ。」

「はははっ………面白い。」

「退職だけではなく、離婚をしよった。」

「離婚? あんなに太いパイプを切ったんですか?」

「それも、あの女のせいだ。」

「美穂子……ですか?

 でも、彼女はもう居ない。」

「あの女……中井良太の妹だ!」

「そうですか………気付くのが遅すぎましたね。」

「知っていたのか?」

「焚きつけたんですよ。俺が………。」 

「何故? 何故なんだ!」

「どうしてもこの会社が欲しいからですよ。

 あの女は純粋に大崎誠に恋をした。

 あの後、心を砕いた大崎誠を好きになったんだ。

 純粋なあの娘は、高嶋華子に訴えた。

 訴えるように俺が言ったんだ。

 『好きになって、どうしようもない。奥さんには悪いけど離れられない。』

 そう言うように俺が教えたら、その通りに言いに行った。」

「お前―――っ!」

「第一、誠君………中井家への罪悪感で何も出来ずに居られなかった。

 純粋培養された大崎家の一人息子。

 中井家の為に尽力して、良太の妹を大崎工業に入社させるよう社長に頼んだ。

 そうですよね。」

「………………………。」

「それから、二人の距離が縮まった。

 誠君も満更では無かったようだった。

 そうか……誠君、離婚したんだ。」

「お前……そんなにして大崎工業が欲しかったのか。」

「ええ、欲しかったですよ。藤井製作所の頃から、ずっと、ね。」

「宗助が社長でも盗りたかったのか?」

「ええ、宗助は研究馬鹿ですから……社長の器じゃなかった。

 俺が成るべきだったんだ。

 だから、欲しい………絶対に社長になりたかった。

 あぁ、それからクーデターは完了していますからね。」

「何ぃ!」

「役員だけではなく、大口の株主、メインバンクの了承も得ています。

 次に開催される株主総会で議題になります。

 大崎孝之! あんたは失脚だ!」

「お前……。」

「美穂子など俺の手段の一つにしか過ぎない女ですよ。

 二つ目は偶然、近づいた二人を結び付ける為に焚きつけただけですよ。

 本筋は株主総会で社長交代を議題に乗せることですからね。」

「時間を掛けて進めて来たのか。」

「ええ、そうです。」

「俺の負けだな。」

「大崎工業をこんなに発展して下さった大崎孝之氏には充分に老後を豊かに暮らせ

 るようには配慮させて頂きますよ。」

「……………いつか……這い上がる。俺は………。」

「別会社の設立ですか。いいですね。頑張って頂きたい。」

「………お前……中井美穂子に産ませた子どものこと……どう思ってるんだ。」

「なんとも思っていませんよ。

 一瞬たりとも愛したりしていない女ですからね。

 俺は妻を社長夫人にしたかっただけですよ。」

「その言葉も嘘か誠か分からんな。

 奥さんを本当に愛したのかどうかさえも……。」

「どう思って頂いても、結構です。

 もう、この部屋から一日も早く退出願いたいものです。」

「…………そうか………あははは………。」


見ていた美穂子は泣き叫んだ。


「嘘よっ! こんなの……嘘っ!」


美穂子の泣き叫ぶ声は続いた。

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