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男たち 女たち  作者: yukko
氏郷
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56/73

中条昭

大崎誠は中条昭と話をしたいと言った。

学が中条昭の子どもかどうかを直接聞きたいと言った。


「それは、君一人で話を聞くのかい?」

「はい。」

「一人ではなく複数の方が良いだろうね。」

「そうですか。」

「中条昭さんと君のお父上は、藤井製作所の頃から関わりが深いね。

 そうだよね。」

「はい。」

「お父上の同席が必要だと思うが?」

「そうですね。」

「役に立たないかもしれないが、うちの氏郷も同席させよう。」

「お父様! 僕が?ですか?」

「そうだよ。君ももう父親だしね。しっかりしてくれていると思っているよ。」

「僕はいいけど……華子の代理として同席させて貰えるなら……。

 いいのかな?」

「分かりました。お願いします。お義兄さん。」


誠は帰宅せずに実家に行った。

華子を一人にしてはいけないと僕は思ったが、華子は自分の家で誠を待つと言った。


◇◇◇◇

今日は大崎家に招かれた。

大崎孝之と誠が、玄関で僕を招き入れてくれた。


「あの子が殺されるなんて思っていなかった。」

「お父さん!」

「そりゃあ、何度も引き取る話を持ち掛けたから、こちらも悪かったとは思ってい

 る。

 だが、話を聞く限りは、大崎家だけが悪かった訳じゃない。

 中条昭が居たからかもしれん。

 中井良太は妻の不貞を許せなかったんだろう。」

「お父さん! その点は分からないのですよ。」

「そうに違いない。」

「大崎さん、まだ分からないことばかりです。

 今日は分からないことを知る為に中条昭さんを呼ばれたのですよね。」

「まぁ、そうだよ。氏郷君。

 それで、これから、会社に行って話を聞くことになっている。」

「大崎さん、どんな理由で呼び出されたのですか?」

「会社の今後のことと言ってある。」

「分かりました。」

「では、今から会社へ行こう。」


大崎家の車に乗って、大崎孝之と誠、そして僕……三人は大崎工業に着いた。

最上階にある社長室。その隣の部屋のドアを孝之は開けた。

社長室の隣の部屋は豪華な応接室だった。

応接室の中に別のドアがあった。

そのドアから社長室へ行くことが出来る。

孝之に勧められるままに僕はソファーに腰を掛けた。

社長室と直接繋がっているドアから秘書が入って来た。

秘書はコーヒーを持って来てくれて、僕の前のテーブルに置いた。

孝之が秘書に「中条専務を呼んでくれ。」と言うと、秘書は「畏まりました。」と答えて出て行った。

中条昭は、声が掛かるのを待っていたようだった。

直ぐにやって来た。


「社長、お呼びだと伺っておりました。」

「うん、座ってくれ。…………待たせたかな?」

「いいえ、丁度仕事が一段落したところでした。

 今日は、誠君と……それから、そちらは高嶋氏郷様ですね。」

「そうだ、嫁の兄だよ。

 氏郷君、うちの専務の中条昭だ。」

「初めまして、高嶋氏郷でございます。」

「初めまして、中条昭でございます。

 ………いやぁ~~っ、高嶋さんの所は安心ですな。

 後継者がいらっしゃる。

 お子さんにも恵まれていらっしゃる。」

「後継者は決まっておりません。」

「そうなのですか……へぇ~~~っ、驚きですな。」

「必ずしも創業家が取締役になると決まっておりませんので……。」

「そうですか……それは、他の者にとっては可能性があると夢を抱けますな。」

「そうですね。」

「それで……今後のこととは如何な話ですか?

 誠君だけではなく、わざわざ高嶋氏郷様にまでお越し頂くような重要な話………

 ではありませんか?」

「そうだ、重要な話だ。」

「伺いましょう。」

「中井美穂子……知っているよな。」

「あぁ……誠君に執着していた女ですか?

 その女と今後のこと、関係ないですよね。」

「それが、あるんだよ。」

「僕に執着しているのではなかったのです。」

「……ほほ~~ぅ。でも、今後の会社のこととは無関係だと思うが?

 違うとでも言うのかい? 誠君。」

「違いますね。関係あるから名前を出したのです。」

「関係ある? どこをどうすれば無関係の人間が関係者に成れるんだ?」

「彼女は藤井製作所の社長だった藤井宗助さんのお嬢さんだからです。」

「……………………。」

「御存知でしたか?」

「初耳だよ。そうか宗助さんのお嬢さん……。」

「知らなかったとでも?」

「知っているな! 話せ! 中条!」

「何を根拠に……そんな嘘を?」

「中条ぉ~~っ!」

「お父さん! 落ち着いて下さい。」

「…………悪かった。」

「そうですよ。もう年なんだから心臓に悪いですよ。」

「中条、お前……中井美穂子と男と女の関係だったな。」

「!………何を馬鹿なことを……知らない女を急に浮気相手にされても困ります

 よ。」

「お前の子だろう? 中井学は!」

「…………そんなことあるはずがない。違いますか? 知らない女だと言いました

 よね。

 それでも、そんな馬鹿げたことを言うのですか?」

「貴方の血液型を会社の健診の資料で調べました。

 貴方はO型、間違いありませんよね。」

「それが、何か?」

「学君の血液型はO型です。」

「O型が何人居ると思ってるんですか?」

「美穂子さんはAB型、良太さんもAB型。

 AB型の両親からO型の子どもは産まれません。」

「………まだ一人居るでしょう。 誠君、君だ!」

「僕の血液型もAB型ですから、親ではありません。」

「血液型だけで俺を………妻子が居るのに………。

 中井美穂子が産んだ子の父だと断定されても困る。」

「貴方が父親ではないかと疑っているのは、僕達だけではありません。」

「へぇ~~っ、それは何方ですか? 高嶋様。」

「中井良太さんのご両親です。」

「中井良太? 誰です。」

「美穂子さんのご主人様です。」

「そうですか……全く困ったものですね。変な言いがかりを付けて……。」

「言いがかり……そんなはずないだろう!」

「社長、落ち着いて下さいよ。それが会社を率いる人間の器とは思えませんよ。」


「そうだ。」という答えが返ってくるなど誰も思っていなかった。

必ず否定すると誰もが思っていた。

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