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男たち 女たち  作者: yukko
氏郷
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55/73

学の父親

良太の父は気丈に僕達に対応してくれた。

良太の父は、僕達に見せる為に用意していたのだろう。

写真を畳の上にそっと置き差し出した。


「あの……これは?」

「学の写真です。」

「学ちゃんのお写真………見せて頂いても宜しゅうございますの?」

「はい、見てやって下さい。」

「可愛い………。」


幼い男の子が嬉しそうな笑顔で写っていた。

誰もが皆、涙を禁じえなかった。

嗚咽が漏れた。


「それから、この写真も見て下さい。

 美穂子ちゃんが大切にしていた写真のうちの1枚です。」

「宜しいのですか?」

「はい、見て下さい。」

「………この男性は! 誠君!」

「あっ! 何故? どうして?

 どうして、この人の写真を美穂子さんが?」

「学の写真をもう一度見て下さい。

 2枚の写真、見比べて下さい。」

「えっ?」

「まさか…………。」

「似ている………。」

「あの………これは………どういうことでございますか?」

「学ちゃんのお父様でしょうか? この方………。

 ………この方をお父様も……誠さんも御存知なのですね。」

「この男を知っているんですか!」

「…………知っております。誠君、君からお話した方が良いだろう。」

「……はい、分かりました。」

「大崎さん、この男は誰なんですか?」

「この人は、うちの会社の専務です。」

「大崎さんの会社の専務さん………。

 …………そんな方と、美穂子ちゃんは知り合いだったのか。」

「うちの会社の専務ですし………その前は藤井製作所に勤務していたはずです。」

「藤井製作所……美穂子ちゃんのお父さんの会社に勤めていた人だったんだ。」

「………似ていますね。とても………。」

「美穂子ちゃんは、いつもペンダントを見に着けていました。

 写真が入っているペンダントです。

 その中に両親の写真が入っていると思い込んでいたんです。

 良太も……誰もが………でも、違った。

 この写真の男の写真が入ってたんです。

 良太がたまたま見てしまった。

 親の目の前で良太が初めて声を荒げました。

 『この男は誰だ!』………美穂子ちゃんは………『大切な人。』って………。

 良太は聞きました。

 『学の父親か?』………美穂子ちゃんは『父親。』だと言いました。

 この男は、独り身ですか?」

「いいえ、妻子がおられます。」

「妻子が居る!………浮気相手が美穂子ちゃん………そんな………。」

「騙されたのよ……美穂子ちゃんは……そうに決まってる。」

「お前……寝ていなさい。」


良太の母は起き上がれなくなっていた。

元々、身体が弱い所へ最愛の息子の死。

床から離れられなくなったのだ。

それでも、畳の上を這うようにして、僕達の前に出て来て「美穂子ちゃんは騙されたに違いない。」と言った。

そして、浴衣を整えて、僕達の方を向いて三つ指をついて「ありがとうございます。」と頭を下げた。

その母親を支えるように高校生の妹が、目を真っ赤にしていた。


「どうか、ご無理なさらないで下さいまし。」

「そうです。お願いでございます。ご無理はなさらないで下さいまし。」

「奥様、お嬢様……勿体ないことです。」

「さぁさ、床に臥されませ。」


母と華子が良太の母親を布団に寝かせた。


「中井さん、我が社の専務が美穂子さんと付き合っていたかどうかは、僕に一任し

 て下さいませんか?」

「聞いて下さるのですか?」

「はい、責任をもって聞きます。」

「お願いします。」

「聞いてどうなるの? お父ちゃん。」

「お前は……知らなくていい。」

「お兄ちゃんとお義姉ちゃんのことなの。知りたい。 

 けど、まーくんは……お兄ちゃんの子でいいじゃん。

 今更聞いて、どうなるの?

 まーくん、もう居ないのよ……う……わぁ~~ん。」

「……………知ることで、何も変わらないですわ。

 でも、孫だと思っていた子が違うのかどうかを、お父様は御知りになりたいので

 はないのかしら?

 誰が父親か、今更、知った所でなあにも変わりませんけれども、事実を御知りに

 なりたいだけなのだと思います。

 それも親の心なのかもしれませんし……子が居ない私が口を挟むことではありま

 せんね。」

「華子………。」

「知りたいの? お父ちゃん。」

「うん、お父ちゃんもお母ちゃんも知りたかったんだ。

 美穂子ちゃんが騙されていたのなら、それに気付けなかったのが………。

 気付いてやれなかった。後悔している。

 だから、知りたいと思った。」

「……………………分かんないよ……けど、お父ちゃん、お母ちゃんも知りたいん

 だったら………いいよ。」

「では、専務に聞きます。

 少しお時間を頂戴したいのですが、宜しいでしょうか?」

「結構です。お願いします。

 それから……これもお渡しします。」

「これは? 何でしょう?」

「美穂子ちゃんが大切に隠し持っていた物です。

 どうか、お帰りになられたら読んで下さい。」

「分かりました。お写真と併せてお預かり致します。」


布団で寝ている良太の母が、上半身を起こして頭を下げた。


「よろしくお願いします。」


良太の父が聞いた。


「あの………この男の名前は……なんていう名前ですか?」

「専務の名前は、中条昭です。」

「中条……昭…………ありがとうございます。」


誠は直ぐに動いたようだった。

先に両親に話した。

父・大崎孝之が翌日には専務を呼び出していた。

勿論、大崎孝之が主に話を聞く。


帰宅してからも、僕は傍に付きそう高校生の妹の姿が目に焼き付いて離れない。

この家族を何とかして支えたいと僕は思った。

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