幸せな結婚
華子と誠は離婚など全く考えていなかった。
二人で転居先の候補を見に行ったらしい。
その中で、大崎家と高嶋家の中間に位置する場所の家を選んだと聞いた。
「最初から、こうすれば良かったんです。
華子には辛い思いばかりさせてしまいました。
申し訳ございません。
………華子、ごめんな。」
華子は首を横に振った。
その時、誠がテーブルの下で華子の手の上に自分の手をそっと優しく置いた。
僕の息子・氏輝が玩具を取ろうとしてテーブルの下に入った時、見つけたのだ。
「僕も!」
「えっ!」
手を繋いでいる華子と誠の手に小さな氏輝の手が重なった。
「僕も……華ちゃんといっちょ!」
「あらあら……輝ちゃん、二人の仲間に入れて貰いたいのね。
……ごめんね、誠さん。」
「あ………いいえ………。」
誠も華子も顔が真っ赤になっていた。
結婚して、もう5年過ぎたのに仲が良い妹夫婦。
僕は心から喜んだ。
誠は猛反対する両親を無視して引っ越しを決行した。
二人は誠の親との同居を解消し、二人だけの暮らしを始めた。
◇◇◇◇
引っ越しから2年後のことだった。
誠が事故に遭ったのだ。
救急搬送された病院へ華子は急いだ。
舅と姑にも華子は連絡した。
誠が助手席に乗って居たことを警察から華子は聞いた。
運転席には女性が乗って居た。
女性の名前を聞いた舅と姑が激怒した。
「あの女がっ!」
「厄病神だわっ! あの女っ!」
舅と姑は華子が止めるのも聞かずに隣のベッドのカーテンを開けた。
そこに真っ青な顔をした中井美穂子がベッドで痛々しい姿で寝ていた。
華子が初めて見た夫・誠が愛した女性だった。
誠から話は聞いていた。
両親が許してくれずに結婚出来なかった最愛の女性・中井美穂子。
華子は、まさか、こんなことになって会うとは思わなかったに違いない。
「お義父様、お義母様。ご迷惑でございます。
どうか、お静かに………。」
「華子! お前が誠の心をしっかり捉えていたら、こんな恥ずかしいことにならな
かったんだぞ!」
「…………私……の……せい………。」
「お前が誠とあの女を繋げたんだぞ!」
「…………お義父様………申し訳ございません。」
舅と姑が中井美穂子のベッドの傍に急いでやって来た男性を見た。
「あんたが、この女の家族かっ!」
「……はい………夫です。」
「夫ぉ~!」
「汚らわしい妻だこと!」
「お義父様、お義母様、お願いです。ここは病院でございます。
どうか落ち着いて下さいまし。」
「落ち着かれるわけないでしょう!」
「この後始末は、しっかり付けさせて頂くぞ!」
「あの………俺も何があったのか分からないんです。
ところで、どちら様で?」
その時、警察官が一言「静にして下さい。」と言った。
それを機に、舅と姑は大人しくなった。
華子は頭だけ下げて、カーテンの向こうのベッドで寝ている夫・誠を見た。
それらの様子を少し遅れて到着した父と母が見ていた。
項垂れて泣いている華子を母は抱き締めた。
事故は追突されて押し出されるように前の車に追突した。
高速道路での玉突き事故だった。
誠の方が酷い怪我だった。
高嶋家の誰もが華子は幸せな結婚をしたと思っていた。
それなのに、華子の結婚は、これから先どうなるのか誰にも分からなかった。




