離婚?①
華子は妊娠出来なかった。
5年経っても子宝に恵まれず、婚家では辛い想いをしている。
大崎誠は華子を守ってくれているのだろうか。
僕は不安で仕方がない。
僕にも、雄一にも、和宏にも子どもを授かった。
孝三郎は何度繰り返しても同じ運命のようだ。
この三回目の人生でも今までの人生と同様に、僕は孝三郎に幾度も「奥さんを誰よりも大切に!」と言った。
それなのに、この人生でも孝三郎は子どもが産まれて直ぐに離婚した。
華子の友人・吉田夫妻には一男一女が授かった。
華子を通して「何とか跡継ぎの男子を産めました。」と喜びの声を聞いた。
だが、それを伝えた華子は子宝とは遠かった。
友人の妊娠出産をとても喜んでいたが、それは本心だろうか。
僕達の妊娠出産も大変喜んでくれた。
お祝いは、心が籠った手作りの子どものアルバムだ。
僕の子だけではなく、雄一の子にも渡して欲しいと預かった。
華子が刺繍した生地で作られたアルバム。
子どもの名前も華子が刺繍してくれている。
「こんなにいい物を貰って、嬉しいわ。」
「華子、ありがとう。」
「喜んで頂けて良かったです。」
「大切に使わせて頂くわ。」
「……ありがとうございます。」
「……華子……その……赤ちゃんは?」
「コウノトリの御機嫌が良くないようですわ。」
「そうか………もし、病院へ行くなら……。」
「もう、行きました。
大崎のお義母様が連れて行って下さいましたの。」
「そうか…………それで、どうだった?」
「……………問題ないと……いうことでございました。」
「そうか! 良かった。」
華子は問題ないと言った。
それなのに………ある日、大崎誠の両親が華子を伴って高嶋家へやって来た。
「急にお伺いして申し訳ございません。」
「いいえ、親戚でございます。
いつお越し頂いても結構でございますよ。
華子も連れて来て頂いて、有難く思います。」
「………高嶋さん、今日、伺いましたのは……華子さんのことです。」
「華子のことでございますか?」
「急な話で申し訳ないのですが、誠と離婚して頂きたいのです。」
「離婚………。」
「はい。5年も経ち、子どもが数人居ても不思議ではありませんわ。
それなのに、未だに一人も授かってはおりません。」
「本当に申し訳ないのだが、我が家には男子は誠だけで……。
高嶋さんの家のように、息子さんだけではなく、弟さんもおられる。
羨ましい限りです。
我が大崎家は私に兄弟はおらず、子どもも娘が二人おりますが……。
息子は誠一人のみ。
どうかご理解下さい。
跡取りが欲しいのです。」
「誠君の気持ちも同じということでございますか?」
「あれは、今、海外へ長期間行って居りますが、全て私が決定したことに従う子で
す。
この結婚も私が決めて、それに、あれは従いましたからな。」
「左様で…………。」
「華子を何時帰して下さるのですか?」
「おお、氏郷君は前向きに考えてくれるのですな。
流石、高嶋家の跡取り!」
「何時でございますか?」
「今直ぐでも結構でございましてよ。
大崎家には問題ございません。ねぇ、あなた。」
「その通り。このままでも結構です。」
「華子さんを連れて来られたのは、帰す為でございましたのね。」
「その通りでございます。
否、お母上の嘆きは理解出来ます。
私の娘も帰されたら、悲しい事ですし、我が家に傷もつきます。
娘に再婚など願えなくなる……良く分かります。
ですが、我が家にとりましては、跡取りこそ大事。
ご理解のほど!」
「華子、今日の所は、このまま家に居なさい。」
「お父様。」
「これからのことは、昔とは違う。
結婚は両性の同意による。
離婚の話し合いは夫婦で成すべきことだ。
誠君との話し合いを経て………離婚は話し合いの後に決めれば良い。」
「なっ!」
「高嶋さん、法律など考えずに……元々、見合い結婚ですぞ。」
「見合いでも誠君は私に言ってくれました。
『華子を幸せにする。守る。』と………。
華子も聞いております。
誠君が帰国するまでは、高嶋家で華子を預かります。
帰国されましたら、話し合いを設けます。」
「高嶋さん! 堅苦しい事は抜きにしましょう。」
「大崎さん、誠君抜きで離婚の話をなさるということは、誠君の気持ちはご両親と
別だと仰っておられるように感じます。」
「何を!」
「もう帰りましょう! こんな方に……お話になりませんわ!」
「このこと、仲人の労をとって下さった田淵さんに、このことは私から話しておき
ます。」
「た………田淵さんは関係ありませんぞ!」
「仲人として、二人を娶わせて下さいました。
離婚ということになったら当然のことお話すべきかと思います。
如何かな?」
「勝手にされればいい! 帰るぞ!」
「ええ、帰りましょう!」
華子はその日から2ヶ月後の大崎誠の帰国まで高嶋家で暮らした。
華子は痩せ細っていた。
苦労したのだ。
可哀想なことをした。
大崎誠など頼るに足る男ではなかったのだ。
孝三郎は、彼なりに努力はした。
それでも足りなかったから離婚になった。
ただ、孝三郎が居ない時に孝三郎の親は嫁を虐めた。
その度に孝三郎は親を怒った。
怒れば怒るほど、親は嫁を虐めた。
別居を僕は勧めたが、孝三郎が別居を選ぶより早く、奥さんは子どもを連れて家を出た。
華子の場合は、どうだったのだろうか。
僕は華子から何も知らされていない。




