表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
4/20

三叉路

兄に私は頼んだ。

「雄一に結婚のお祝いの品を手渡したい。」と………。

兄は何も知らずに喜んで、雄一を我が家へ招いた。

両親からの祝いの品もあったからだ。

今の華子は、その名から遠く離れてしまった。

心には美しい華は咲いていない。

あるのは、ただ一つ【奪うこと】。

雄一の妻になることの為には、どんなことも、罪も、犠牲も躊躇わなかった。

その時がやって来たのだ。


「ご結婚なさいますのね。」

「ええ。」

「これ、私からのお祝いですの。受け取って下さいますね。」

「ありがとうございます。」

「まぁ、華子さんまで……。」

「良く気が付く娘に育ってくれた。

 お父さんは嬉しいよ。」

「お父様………。」

「私も嬉しいよ。兄として……誇らしい気持ちになる。」

「お兄様………。」

「本当ですよ。私もそのように思います。」

「お母様………。」


その時の私には、父と母、そして兄のことを思う余裕はなかった。


その日、兄・氏郷の真新しい車が駐車場にあった。

兄は雄一に「運転してみるか?」と聞き、辞退する雄一に「いいから運転してみなよ。」と運転することを勝手に決めた。

このことは前日に兄から聞かされていた。

「雄一は車が好きなんだ。だから、僕の新車を運転して貰うんだ。きっと喜ぶ。」と……。

華子は兄に頼み込んだ。


「お兄様、新車で駅まで送って下さらない?」

「駅まで? どこに行くんだ?」

「お買い物に行きたいの。」

「仕様がない。連れて行ってあげるよ。」

「お兄様! 大好き!」⦅本当に大好きよ。⦆


運転席には雄一が座っていた。

兄は雄一に「華子を駅まで送ってやってくれ。頼む。」と言った。

雄一は「それなら君が運転すべきだよ。」と言ったが、兄は「運転は君に決めたから。」と言った。

兄が親友の雄一を大切に想っていることを誰もが知っていた。

兄の新車は雄一の給与では買えない。

だから、運転させたいと思ったのだ。

兄が助手席に乗った。

私は後部座席に乗った。

そして、雄一が運転する車はゆっくり発進して高嶋邸を出た。


最初は雄一の婚約者の話と、兄の恋人の話で前の座席の二人が盛り上がり、華子の存在は空気のようだった。

華子は場所を決めていた。

高嶋邸から少し先に三叉路がある。

そこを左折する。

その時、車は減速する。

場所は左折する三叉路。

私は、その三叉路の少し前に急に話し出した。

そして、後ろから雄一の運転している左手を……ギアを握っている左手を……上から強く握った。

ギアチェンジを妨げるように………。


兄の「華子ぉ!」という怒鳴り声と、雄一の「離せっ!」という声がした。

兄は私の手を雄一の手から離そうとした。

雄一は急ブレーキを掛けつつハンドルを強く握った。

二人の顔色は青褪めていた。

車は三叉路の傍の電柱に衝突した。

その瞬間、私の身体が車の中で浮き上がり、前の座席に叩きつけられた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ