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男たち 女たち  作者: yukko
華子
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31/36

幸せが待つとは言えない結婚

兄は雄一の身体を案じて「ピロリ除菌」を提案し、雄一だけではなく愛子も「ピロリ除菌」を行った。

勿論、兄・氏郷も行った。

兄は前の人生で雄一に何も出来なかったことを悔いていた。

だから、雄一の父親が胃がんで亡くなった後、一緒に癌検診を受けるようにした。

「ピロリ除菌」も、そのうちの一つ。

そして、雄一の父親と似通った食生活を変えさせた。

兄が思いつく限りのことを雄一に提案していた。

煙草は雄一自身が止めた。

同時に兄も煙草を吸わなくなった。


そのうち「ついでに、君もどうだ?」と私にも「ピロリ除菌」を勧めた。

「両親も終えたし、妻も終えた。」そうだ。

私は⦅どうでも良い。⦆と思った。

それなのに、何故だか兄は諦めずに何度も勧める。

私は「はい。」とだけ返事をしただけで、何もしていない。


「行ったか?」

「何処に?」

「だ・か・ら! ピロリ除菌だよ。」

「………行っていません。」

「何故行かないんだ?」

「別に……どう………忙しくて無理なんですの。」

「保母の仕事が忙しい事は知っている。

 だから尚更、身体を大切にして欲しいのだよ。」

「お兄様は、私のこと………。」

「なんだ?」

「…………いいえ、何でもございません。」

「ハッキリ言いなさい。」

「…………今から、私はお誕生会の為に折り紙で作らないと成りませんの。

 ですので、お兄様、御機嫌よう。」

「華子…………。」


兄を部屋から追い出して私は安堵の溜息を吐く。

兄が私を疎んでいるのは明白である。

だから、出来得る限り距離を置きたいと私は思っている。


◇◇◇◇

30歳を過ぎても、未だに実家で暮らしている私は両親の頭痛の種のようだ。

もう40歳が近づいている。

そろそろ諦めてくれると私は思っていた。

理由は簡単だ。

30歳を過ぎたら縁談自体が無くなるからだ。

一人で生きると決めたあの目覚めた朝。

私は雄一の人生には絶対に関わらないと決めた。

それと同時に「罪深い私は独りでないと許されない。」と思っていることは、誰にも話していない。


兄から二人の男性のその後を聞いた。

矢沢和宏と川口孝三郎。

兄の友人であり、私が付き合ったことがある男性二人だった。


矢沢和宏は、二人の子どもに恵まれた。

だが、二人目の子どもがまだ乳飲み子だった頃に妻が急死したということだった。

不妊治療して二人の子どもを産んで、これかれ家族4人で楽しい日々が待っていただろうに……和宏の妻の心は「生きたい!」と願ったことだろう。

和宏は「生きて欲しい!」と祈ったことだろう。


「お子さんは?」

「奥さんのご実家で育てられているそうだ。」

「そう………お辛かったでしょうね。奥様……。

 子どもを残して逝きたくない……それが母親の心ですもの。」

「うん………親になったら子どもを育てるという責任も圧し掛かる。」

「そうね。」


そして、次に川口孝三郎の今を兄は話した。


「孝三郎は……結局、再婚したのに、また別れたんだ。」

「えっ?」

「上手くいかなかったらしい。」

「お子さんの為に復縁されたのに?」

「同居でなくても別居でも上手くいかなかったらしい。」

「同居?」

「あ………聞いてなかったのかい?」

「………私は川口さんから話して貰ったことしか知らないわ。」

「そうか………孝三郎は最初の結婚の時、親との同居だったんだ。

 弟が居たけれども、白血病で15歳の時に亡くなったから……。

 実質、一人っ子になったんだ。」

「そうだったの……知らなかったわ。」

「親と奥さんが上手くいかなくって離婚したんだ。」

「そうなのね。」

「再婚した時、同居ではなく別居を選んだんだけど………。

 子どもの体調が少しでも悪かったら、子を失った記憶からだろうかな?

 異常に口出しをしたそうなんだ。

 それは孝三郎の体調も同じで、口出しして、嫁のことを悪く言う舅と姑に……。

 結局、奥さんの実家で子育てする方が良いということで、妻の親との同居をし

 たけれど、それはそれで、上手くいかなかったらしい。」

「親が不満に思ったから?」

「まぁ、そうだ。」

「そう………結婚って大変ね。」

「………華子………。」

「何? お兄様。」

「ありがとう。」

「何が?」

「両親と実家で暮らしてくれて………。」

「まぁ、お兄様が私に『ありがとう。』って仰ったの?」

「あぁ、本当に感謝している。」

「もう、結婚出来ない年齢になりましたしね。

 私は、このまま、この家で暮らすしかありませんもの。

 お兄様に感謝して頂くようなことを私はしておりません。」

「華子、それでも言うよ。 ありがとう。」


私はこのまま人生を終えると思っていた。

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