友達から始めよう
見合い相手の矢沢和宏への返事が出来ないまま、見合いは終わった。
父からは「ゆっくり考えなさい。」と言われた。
どうやら両親は気に入っているようだ。
私からの明確な「断る」という返事が無かったことから、見合いの話は進むような結果になってしまった。
ただ、矢沢和宏から「華子さんと友人になりたいです。初めから結婚相手ではなく、友人としてお会いしたいです。」という返事を貰ったと父が言った。
父は「華子の気持ちを充分に考えてくれる良い人間だ。友人として会ってみれば良いと思う。」と言われてしまい、私は断る理由がなくなってしまった。
父のその言葉で、私は和宏と友達として付き合い始めた。
仲人から私が断らなかったと聞いたのだろう。
早速、仲人を通して次に会う日時の連絡が来た。
このことを私は幸代に相談した。
「さっちゃん、私、お見合いしたでしょう。」
「うん、どうだった?」
「う………ん。」
「嫌な感じの人だったの?」
「う………ううん、嫌じゃなかったの……だけど………。」
「だけど………何?」
「お見合いなのにね、お友達から!って仰ったの。」
「お友達から? えっ? 何? それ?」
「そうでしょう。」
「お相手の方は、華ちゃんのこと気に入ったのよね。」
「どうかしら?」
「気に入らなかったら、お友達から、ってことも仰らないよね。」
「そうかしら………私、分からなくって………。」
「………いいなぁ………。」
「えっ? 何が? いいの?」
「羨ましいから、いいなぁ~って言ったの。」
「羨ましい?」
「うん。」
「さっちゃんが私を?」
「うん!
だって………お見合い相手がお友達から始めましょうって仰ったのよね。」
「そうだけど、それが何か?」
「あぁぁ、気付かない?」
「何を?」
「お相手の方、『お見合いして直ぐに結婚じゃなくて恋愛しませんか?出来れ
ば……。』って仰って下さってるのよ。
羨ましい!」
「そうなの?」
「そうよ! 私なんか、もう結婚することが決まって、結納の日取りとか挙式とか
の話になってるのよ。
恋愛の経験なく結婚に突入するの。
だから、恋愛しませんか?って仰って貰えて、凄く、すご~~く羨ましい。」
「そうなのね。」
「それがお見合いなのよ。
それなのに……恋愛出来たらしたいです!って仰っておられる。
羨まし過ぎるわ。」
「でもね、さっちゃん。
お友達になりましょう、だから……恋愛しましょうではないわ。」
「何を言ってるのよ! 華ちゃん。
男の子からの告白で『お友達から始めましょう。』って言われることがあるの
よ。」
「さっちゃん、告白されたことあるの?」
「ないけど………テレビで見たもん。」
「テレビで! そうなのね、テレビで………。」
「モテないことは、仕方ないでしょう。」
「それは、私も同じだから………。」
「違う! 華ちゃんは、敢えてモテないのよ。」
「何なの? それは?」
「華ちゃん、ガードが堅そうだもの。
お兄様も居られるし……きっと華ちゃんみたいな御令嬢は高根の花なのよ。
華ちゃんだけに………。」
「そうかしら?」
「あの………ちょっと気付かなかった?」
「何を?」
「もう、いいです。」
幸代に相談した結果、お付き合いをして嫌ならお断りすればいい!という幸代の助言通りに私は和宏とお付き合いすることにした。
華子は着て行く服を選ぶのに時間が掛かった。




