二組の恋人たちの未来②
前の人生と同じように雄一と愛子の結婚式は決まっていた。
その日を私は幸代と映画を見ることにした。
幸代と居れば寂しくないと思ったからだ。
それでも、映画を見て家に帰ると自分の部屋に籠った。
泣いてしまうからだ。
この二度目の人生でも雄一が私の心を占めていた。
でも、今回は想いを曝け出すことなど絶対にしない。
そして、雄一の幸せを遠くから見るだけにするのだ。
そう思って居ても、夜に一人で寝るベッドの中で私は泣き声を布団で押し殺すように泣いた。
雄一が結婚してから半年後に兄が結婚した。
今度は兄の幸せが見られる結婚だと私は確信している。
二組の新婚夫婦は、同じように結婚した翌年には第一子に恵まれた。
雄一と愛子の二人の子は女の子だった。
前の人生で私が望み願った雄一との子どもを愛子は難なく授かり無事に出産した。
その夜も私は一人、涙で枕を濡らした。
兄夫婦の子も無事に生まれた。
第一子は男の子だった。
両親の喜びは大きく、「跡取りが産まれた!」と涙した。
それも私の前の人生とは違っていた。
◇◇◇◇
私は短大を卒業したが、父が働くことよりも「結婚相手を見つける」ことを選んだ。
二度目の人生で私が決めたことのもう一つは【自分の想いを押し付けないこと】だった。
だから、父のいうことを私は聞いた。
同じ頃、幸代にも転機が訪れていた。
幸代は養父母の願い通りに短大へ進学し、卒業前には見合いをして結婚が決まっていた。
幸代は養父母に言われたそうだ。
「本当は男の子が欲しかった。家を継ぐ子が欲しかったけど、幸代の両親から男子は二人しか居ないから養子に出せない。」と蹴られたそうだ。
それで、一番下の子である幸代を迎え入れたが、悔やみ続けて来たそうだ。
「幸代を養女にして悔やみ続けた。」と言われた幸代は、人知れず泣くことしか出来なかった。
幸代が外出時にビニール袋に10円玉を一杯入れて持って来ていたことを私は思い出した。
幸代は家から九州の親に電話を架けられなかった。
私との外出時しか電話出来ないのだ。
養父母のことを考えたのだと言っていた。
公衆電話を架けた幸代が泣きながら「お母さん………お母さん………。」と言っていた。
養女になりたくないと言いたかったに違いない。
それでも、ひと言も言わずに養女になった幸代。
養父母に気を遣いながら生活していた幸代。
それでも「男子が欲しかった。」と言われて、20歳になる前に見合いさせられて、嫌だとも言えずに結婚が決まった。
決まった時の幸代の笑みが可哀想で見ていられなかった。
幸代に「私も見合いすることになった。」と言うと、幸代は「どうして? 恋愛結婚出来るのに……。」と言った目には涙は光っていた。
私は幸代と友達になった事で、前の人生では見ていなかったことを知った。
それは愛されない人生だったのは、雄一からだけであるという事実だった。
雄一からは愛されなかったが、両親からは深く愛されていた。
誰からも愛されない人生では無かった。
両親からはこの上なく愛されていたのだ。
兄からは……雄一を愛子さんから奪ったことで、兄の人生も変えてしまった私を許せないままだったのだろう。
兄からは愛されなくなった人生だったが、両親の深い愛を感じることもしなかった。
幸代が、それを私に教えてくれた。
◇◇◇◇
雄一と愛子夫婦には第一子を授かってから、2年後には第二子が産まれた。
今度は男の子だった。
雄一の子は女の子一人、男の子一人。
羨ましかった。
兄夫婦も、その後二人の子に恵まれた。
兄夫婦の子は3人とも男の子だった。
兄夫婦が子どもを連れてやって来たり、両親に連れられて兄夫婦の家に行ったりすると、甥たちに会う。
愛らしい生い立ちを見ていると、あの前の人生での兄の子どもを思った。
兄は可愛がっていたけれども、この人生での子ども達への眼差しと全く違うことに私は気付いた。
心の中で私は兄に会う度に謝罪を繰り返した。
「お兄様、ごめんなさい………本当にごめんなさい。」
そして、それは雄一と愛子にも心の中で繰り返した。
「本当にごめんなさい………ごめんなさい。」
幾ら謝罪を繰り返しても、あの前の人生での心の傷は治せない。
己の行ったことの罪は償えないのだと思い知った。




