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私が一度捨てられたのでしたら、二度と拾わないでください。――冷徹宰相は、傷もの令嬢を離さない  作者: 常陸之介寛浩✪書籍・本能寺から始める信長との天下統一


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第82話 この手を取る理由は、見せつけるためではない

 舞踏会の音楽が、少しだけ華やかなものに変わった。


 報告の時間が終わり、寄付箱の前の人波も落ち着きはじめる。大広間には、ようやく本来の舞踏会らしい空気が戻ってきた。


 絹の裾が床を滑る音。

 笑い声。

 楽団の弦が重なる音。

 灯りを受けて揺れる宝石。


 けれど今夜の華やかさは、いつもと少し違った。


 壁際の鉢植え。

 寄付箱の前の花印。

 小冊子を手にしたまま話す貴族たち。


 そこに、ただ美しいだけではない重さが残っている。


 リディアは大広間の端で、少しだけ息を整えていた。


 父に言えた。

 エレノアと手を取れた。

 セシリアが、ファーネル侯爵夫人の甘い言葉を止めた。

 報告も、無事に読み上げられた。


 胸の奥はまだ熱い。


 だが、それは倒れそうな熱ではなかった。


 走り切ったあとに体の中に残るような、少し苦しくて、少し誇らしい熱だった。


「疲れたか」


 隣でアルベルトが尋ねた。


 この夜、何度目かの問いだった。


 リディアは、もう「大丈夫です」と反射的に返さなかった。


「疲れました」


 正直に答える。


 アルベルトは短く頷いた。


「休むか」


「少しだけ、ここにいます」


「理由は」


「エレノアが、あとで話したいと言っていました。セシリア様にも、花印のことで一言伝えたいです。それに……」


 言いながら、リディアは会場の中央へ目を向けた。


 楽団の前では、最初の組が踊り始めている。王宮の舞踏会で、踊らないことはできない。宰相夫人として、この場にいる以上、誰かと一曲は踊ることになるだろう。


 それはわかっていた。


 けれど、リディアは少しだけ怖かった。


 踊るという行為そのものが怖いわけではない。

 幼い頃から教え込まれている。足運びも、手の置き方も、視線の流し方も知っている。


 怖いのは、踊る相手によって意味が変わることだった。


 王太子妃候補だった頃、舞踏会での一曲はいつも評価だった。

 どれほど優雅に見えるか。

 王太子と並んだときに釣り合うか。

 社交界の視線に耐えられるか。


 そこに、自分の楽しさなどなかった。


「踊るのが嫌か」


 アルベルトが静かに尋ねた。


 本当に、この人はどうしてすぐに気づくのだろう。


 リディアは少しだけ苦笑した。


「顔に出ていましたか」


「ああ」


「嫌、というほどではありません。ただ……少し、昔を思い出します」


「王太子か」


 短い問い。


 リディアは頷いた。


「はい。殿下と踊るとき、私はいつも間違えないことばかり考えていました。楽しむことより、正しく見えることを」


「今もそうなると思うか」


「……相手によると思います」


 そう答えた瞬間、アルベルトの視線が少しだけ変わった。


「なら、私と踊れ」


 あまりに自然な一言だった。


 リディアは瞬きをする。


「旦那様と?」


「他に誰がいる」


「いえ、もちろん夫婦ですから、不自然ではありませんが」


「不自然でないなら問題ない」


「ですが、旦那様は舞踏会であまり踊られないと聞いています」


「必要なら踊る」


「必要、ですか」


 思わず聞き返してしまう。


 アルベルトは、ほんの少し考えた。


「君が昔を思い出して足を止める前に、別の記憶で上書きする必要がある」


 胸の奥が、静かに鳴った。


 この人は、やはりそういう言い方をする。


 甘い誘いではない。

 優雅な口説き文句でもない。


 必要だから踊る。


 けれど、その必要の中身が、リディアには痛いほど優しかった。


「……旦那様は、本当に実務的です」


「不満か」


「いいえ」


 リディアは首を振った。


「少し、安心しました」


 アルベルトは手を差し出した。


 人前であるにもかかわらず、その手の出し方は急かすものではなかった。


 取るかどうかは、リディアが決める。


 そういう余白が、そこにある。


「踊れるか」


 彼が尋ねる。


 リディアは、差し出された手を見た。


 昨日、手を取ってもいいかと尋ねた自分。

 以前、触れていいかと聞いてくれた彼。

 その積み重ねが、今この手の前にある。


「はい」


 リディアは答えた。


「踊れます」


 そして、手を重ねた。


 アルベルトの手は、温かかった。


 大広間の中央へ進むと、周囲の視線が少し集まった。


 宰相グランディス卿が踊る。

 宰相夫人と。

 それだけで、社交界の人々には十分な話題になる。


 ファーネル侯爵夫人も見ている。

 父も見ている。

 王太子も、セシリアも、エレノアも。


 リディアは一瞬だけ息が浅くなりかけた。


 その瞬間、アルベルトの声がした。


「周りを見るな」


「でも」


「私を見ろ」


 短い命令。


 けれど、押しつけではなかった。


 リディアは顔を上げる。


 アルベルトの目が、すぐ近くにあった。


 冷静で、落ち着いていて、少しだけ不器用な目。


「足元は私が合わせる」


「私が合わせるのでは?」


「今日は私が合わせる」


「それは、社交の作法としては」


「社交より君の呼吸が先だ」


 どうしてこの人は、こういうことを平然と言うのだろう。


 リディアは、胸がまた落ち着かなくなるのを感じた。


 けれど、今度の落ち着かなさは悪くなかった。


 音楽が始まる。


 アルベルトの手が、リディアの背に触れる。


 触れ方は、やはり慎重だった。舞踏の形として必要な位置に手を置いているだけなのに、強く引き寄せすぎない。逃げられないほど近づけない。


 それでも、確かに支えている。


 最初の一歩。


 リディアは、足を出した。


 間違えないように。


 そう思いかけて、すぐに止める。


 違う。


 今は、間違えないために踊るのではない。


 呼吸をするために踊るのだ。


「悪くない」


 アルベルトが低く言った。


「今の一歩がですか」


「ああ」


「踊りながら評価されると、少し変な気分です」


「褒めた」


「わかっています」


「ならいい」


 そのやり取りで、少しだけ肩の力が抜けた。


 曲に合わせて、二人はゆっくり回る。


 リディアの裾が、青銀の波のように揺れる。アルベルトの黒い礼装が、その動きを静かに受け止める。


 周囲の視線はある。


 だが、不思議と遠かった。


 アルベルトの手の温度。

 足元の確かな導き。

 息を合わせる間。


 それらのほうが、ずっと近い。


「昔のことを思い出すか」


 彼が尋ねた。


「少し」


「今は?」


「少しずつ、薄くなっています」


「ならいい」


 曲が進むにつれ、リディアは自分の体から余計な力が抜けていくのを感じた。


 完璧に見せる必要はない。

 誰かの隣に相応しいかどうかを証明する必要もない。

 父の視線を意識して背筋を固める必要もない。


 アルベルトは、リディアを見せびらかすように踊らない。


 だが、隠しもしない。


 ただ隣に置き、同じ曲の中で支えている。


 それが、とても不思議だった。


 そして、胸がきゅっとなるほど心地よかった。


「旦那様」


「何だ」


「これは、見せつけるための踊りではないのですね」


 アルベルトの目が、わずかに動いた。


「誰に」


「父に。殿下に。社交界に」


「違う」


 即答だった。


「では、何のためですか」


「君が、この場で息をするためだ」


 言葉が胸に落ちた瞬間、リディアは一歩遅れそうになった。


 アルベルトが自然に足を合わせる。


「遅れた」


「旦那様のせいです」


「そうか」


「そこで否定しないのですか」


「私のせいだろう」


 真顔で返され、リディアは思わず笑いそうになった。


 大広間の中央で、笑いそうになる。


 それだけで、昔とは違った。


 以前、王太子と踊っていたときは、笑うタイミングすら考えていた。自然に笑うなど、できなかった。


 今は、少しだけ笑えた。


 その笑みを、アルベルトが見ていた。


「今の顔はいい」


 彼が言った。


 リディアは、足を止めそうになった。


「旦那様」


「何だ」


「踊りの途中で、そういうことを言わないでください」


「なぜ」


「また遅れます」


「合わせる」


「そういう問題ではありません」


 アルベルトは、ほんのわずかに口元を緩めた。


 その顔に、リディアの胸はまた騒がしくなる。


 慣れろ、と言われた。


 けれど、まだ無理だ。


 曲の終盤、リディアの視界にエレノアが入った。


 妹は母のそばで、こちらを見ていた。


 目が合うと、エレノアは驚いたように、それから少し嬉しそうに微笑んだ。


 その隣でセレスティアも、静かに目元を和らげている。


 父グラントは、表情を読ませない顔でこちらを見ていた。


 王太子エドワードも、少し離れた場所にいた。


 その目にあるものは、後悔なのか、安堵なのか、判別できない。


 けれどリディアは、もうその視線に囚われなかった。


 自分は今、アルベルトと踊っている。


 誰かへの見せつけではなく。

 誰かへの復讐でもなく。

 自分の呼吸のために。


 そのことが、はっきりわかった。


 曲が終わった。


 アルベルトが静かに手を離す。


 その離し方も、急がない。必要以上に余韻を引き伸ばすこともしない。


 リディアは礼をした。


「ありがとうございました」


「疲れたか」


「少し」


「休む」


「はい」


 今度は素直に言えた。


 そのやり取りを、近くにいたローゼン侯爵夫人が見て、楽しそうに目を細めた。


「宰相閣下がここまで丁寧に踊るとは、珍しいものを見ましたわ」


 リディアは少し頬を熱くする。


 アルベルトは平然としていた。


「必要でしたので」


「まあ」


 ローゼン侯爵夫人は扇で口元を隠した。


「その“必要”を、世の殿方がもう少し学んでくださるとよろしいのに」


 そう言って、彼女は去っていった。


 リディアは横目でアルベルトを見る。


「旦那様、褒められましたね」


「からかわれたのだろう」


「半分は」


「残り半分は」


「本当に褒めていらしたと思います」


「そうか」


 アルベルトはそれ以上気にしなかった。


 だがリディアには、彼の耳元がほんの少し赤く見えた。


 休憩用の小さな控え席へ移ると、エマがいつの間にか温かい飲み物を用意していた。王宮の使用人に指示を出したのだろう。こういうときのエマは、本当に隙がない。


「奥様、少しお飲みください」


「ありがとう」


 カップを受け取ると、指先が温まる。


 アルベルトは隣に立っていたが、少しだけ距離を取っている。二人きりではない。大広間の一角であり、周囲にも人がいる。


 それでも、リディアにとっては十分な休息だった。


「お姉様」


 小さな声がして、リディアは顔を上げた。


 エレノアが立っていた。


 先ほどより少し緊張しているが、目は明るい。


「エレノア」


「あの……今、お時間は」


 リディアはアルベルトを見る。


 彼は短く頷いた。


「私は少し外す」


「旦那様」


「見える位置にいる」


 そう言って、彼は控え席から少し離れた。遠すぎず、近すぎない場所。誰かが割って入ることもできないが、姉妹の会話を邪魔しない距離。


 本当に、この人は距離の取り方が上手い。


 エレノアはそれを見て、少し驚いたようだった。


「宰相閣下は……お姉様を、よく見ていらっしゃるのですね」


「ええ」


 リディアは素直に答えた。


「私が無理をしないように、よく見られています」


「お姉様が、そんなふうに言うなんて」


 エレノアは少し笑った。


「昔なら、無理などしていません、と言ったと思います」


「そうね。言ったと思うわ」


 二人は、少しだけ笑った。


 それだけで、胸が痛むほど懐かしかった。


 幼い頃、こうして何でもないことで笑った時期があったはずだ。いつから、二人の間には完璧な姉と未熟な妹という見えない壁ができたのだろう。


「さっきの踊り」


 エレノアが言った。


「とても綺麗でした」


「ありがとう」


「でも、昔のお姉様の踊りとは違いました」


 リディアは少しだけ首を傾げる。


「違った?」


「はい。昔は……綺麗すぎました。お人形みたいで、少し怖かったです」


 その言葉に、リディアは胸の奥が小さく痛んだ。


 お人形みたい。


 たしかに、そうだったのかもしれない。


「今は?」


 尋ねると、エレノアは少し頬を赤くした。


「今は、人みたいでした」


 言ってから、慌てて首を振る。


「ごめんなさい。変な言い方で」


「いいえ」


 リディアは静かに笑った。


「嬉しいわ」


「本当ですか?」


「ええ。人みたいに見えたなら、とても嬉しい」


 エレノアの目が、少し潤んだ。


「お姉様」


「何?」


「私も、人みたいに見えるでしょうか」


 その問いは、あまりに小さかった。


 リディアはすぐには答えなかった。


 エレノアが何を抱えてその言葉を口にしたのか、考えたかったからだ。


 侯爵家の次女。

 完璧な姉と比べられる妹。

 父の前で正しくあるべき娘。

 社交界で、姉の代わりにはなれない少女。


 その役割の中で、彼女もまた自分が人として見られているのかわからなくなっていたのかもしれない。


「見えるわ」


 リディアは言った。


「でも、私もまだ、あなたをちゃんと見始めたばかりなのだと思う」


 エレノアは黙って聞いている。


「だから、教えてほしい。あなたが何を好きで、何が苦手で、何を怖いと思うのか」


 エレノアの唇が震えた。


「手紙と同じことを……本当に、聞いてくださるのですね」


「聞きたいの」


 リディアはゆっくり言った。


「姉だからではなく、あなたを知りたいから」


 エレノアは、とうとう少しだけ涙をこぼした。


 すぐにハンカチで押さえる。

 社交の場だから泣いてはいけないと、反射的に思ったのだろう。


 リディアは、その動作に昔の自分を見た気がした。


「泣いてもいいわ」


 小さく言う。


 エレノアが目を見開く。


「でも、ここは」


「大声で泣くのは難しいかもしれない。でも、少し涙が出るくらいなら、人ですもの」


 エレノアは、くしゃりと顔を歪めた。


 それでも、すぐに笑おうとする。


「お姉様、変わりましたね」


「そうね」


「でも、今のお姉様のほうが……好きです」


 胸の奥が、強く熱くなった。


 リディアは言葉を失いかけた。


 妹に、好きと言われた。


 いつ以来だろう。


 子どもの頃は、そんな言葉もあったのかもしれない。けれど、いつの間にか消えていた。


「ありがとう」


 リディアはようやく言った。


「私も、これから今のあなたを好きになっていきたい」


 エレノアは泣き笑いの顔で頷いた。


 そのとき、遠くから母セレスティアがこちらを見ていることに気づいた。


 彼女は近づいてこなかった。

 ただ、少しだけ目元を濡らしているように見えた。


 父グラントは、その隣で沈黙している。


 エレノアが母のもとへ戻ると、リディアは少しだけ深く息を吐いた。


 すると、アルベルトが戻ってきた。


「泣かせたのか」


「人聞きが悪いです」


「泣いていた」


「少しだけです」


「君は?」


「……少し危なかったです」


「そうか」


 彼はそれ以上聞かなかった。


 ただ、リディアの手元に視線を落とす。


「手は」


「握りしめていません」


 リディアは両手を見せた。


 アルベルトは確認して、短く頷く。


「よし」


「私は子どもではありません」


「傷を作らなかったなら褒めるべきだろう」


「それは……褒められているのですか」


「褒めている」


 リディアは少し笑った。


 本当に、この人の褒め方には癖がある。


 だが、その癖にも少しずつ慣れてきた。


 その後、舞踏会は穏やかに進んだ。


 王太子はセシリアと踊った。

 その踊りは、以前よりずっと静かだった。セシリアは無理に明るく笑わず、エドワードも彼女を飾りとして見せるような踊り方をしなかった。


 二人が何を話していたのかはわからない。


 けれど、セシリアが踊り終えたあと、自分の花印の小冊子を抱え直し、少しだけ安心したように笑ったのが見えた。


 ファーネル侯爵夫人は、最後まで完璧だった。


 彼女は自分の寄付を優雅に示し、何人かの夫人を上手に動かした。だが今夜は、彼女一人の舞台にはならなかった。


 花印があった。

 用途別記録があった。

 王妃の言葉があった。

 セシリアの発言があった。

 そして、リディアが何度も記録へ戻した。


 その結果、寄付は華やかに集まりながらも、行き先を失わなかった。


 夜が深まるころ、慈善局長から中間集計が届いた。


 薪。予想以上。

 灯具。十分。

 外套。必要数に近い。

 薬湯。やや少なめ。

 修繕。大口寄付あり。

 橋番の夜食。想定以上。


 リディアはその紙を見て、思わず目を細めた。


「橋番の夜食が想定以上です」


 アルベルトが覗き込む。


「小麦の穂の印が効いたな」


「セシリア様に伝えなければ」


「後でいい。今は座れ」


「でも」


「顔が疲れている」


「……はい」


 今度は反論しなかった。


 控え席に戻ると、リディアはようやく体の疲れを自覚した。


 足が少し重い。

 背中も張っている。

 でも、胸の中は不思議と軽かった。


「旦那様」


「何だ」


「今日は、いろいろありすぎました」


「ああ」


「父に言えました。エレノアとも話せました。セシリア様も立っていました。寄付も、用途に届きそうです」


「ああ」


「少し……泣きそうです」


 アルベルトは周囲を確認した。


「ここでは泣きにくいな」


「はい」


「帰ってからにしろ」


「そういう問題でしょうか」


「そのほうが落ち着くだろう」


 あまりに真面目に言われ、リディアは笑ってしまった。


 泣きそうだったのに、笑ってしまう。


 それが、また少し可笑しかった。


「では、帰ってからにします」


「ああ」


「そのとき、少しだけ……そばにいてくださいますか」


 言った瞬間、胸が強く鳴った。


 アルベルトは、すぐには答えなかった。


 けれどその沈黙は、拒む沈黙ではない。


「君が望むなら」


 いつもの言葉。


 でも、今夜は特別に深く聞こえた。


 リディアは小さく頷いた。


「望みます」


 アルベルトの目が、ほんの少し揺れた。


「そうか」


 その短い返事だけで、リディアの胸は温かく満たされた。


 大広間の灯りは、まだ揺れている。


 北区の火も。

 東区の手灯りも。

 セシリアの花印も。

 エレノアの白百合も。

 リディアのブルースターも。


 それぞれの灯りが、この夜の中で確かに揺れていた。


 そしてリディアは、初めて舞踏会の終わりを恐れなかった。


 帰る場所があるからだ。


 その道を照らす灯りが、もう彼女の中にもあった。

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