第79話 家族会議
空気が重い。
アリッサは、リビングに集まった仲間達を、ゆっくりと見回した。
全員が疲れた顔をして黙り込んでいる。
リヒテンルージュ城からシンシアを助け出して、山の中の隠れ家に戻ってから、もう半日が経っていた。
マギーは魔法使い連盟の若者達を家に帰し、自分はそのまま隠れ家に残った。
そして、全員でシンシアの保管場所になりそうな場所を探した。
見つかったのは、干し草の保管場所。
干し草で凍ったシンシアを包み込むことで、断熱材のような働きをする。
しかし、その状態でも凍ったシンシアは少しずつ溶けていく。
氷が溶けたら、傷を負って仮死状態のシンシアは本当に死んでしまう。
治療魔法で怪我を治療すると、シンシアの意識が戻って帝国の機械に操られる。
そして、首輪と機械を取り外そうとすると、シンシアは機械に殺される。
時間がない。
「首輪と機械を安全に取り外す方法だけど……」
アリッサが小さな声で話し始める。
「テンが言ったように、機械が体の中まで入り込んでるなら、私たちに外すことは出来ないと思う……」
そして、再び黙り込む。
「しかし、このままだと氷が溶けちまう」
「どうすりゃいいんだ」
カサノバがイラついた声を出す。
「そんなこと、みんな分かってるわよ。無神経ね」
シンディが怒りを込めてカサノバを睨みつける。
「シンシアが生きる為には、帝国に戻すしかないかもしれんな」
メイトリックスの苦しそうな声。
「じゃあ、私たち、ずーっとシンシアを敵に回して戦うってこと?そんなの嫌よ」
マギーが顔をしかめて首を振る。
「私が、なんとか機械を外す方法を見つけるしか……」
アリッサが下を向きながら言う。
「お嬢ちゃん、それは無理だって言ってなかったか?」
カサノバがすかさず反論する。
シンディが再び睨みつける。
「いっそ、帝国をぶっ潰すか。そうすりゃシンシアを操る奴もいなくなるぜ」
カサノバが軽口を叩く。
「そう、それしかない」
アリッサの声が響いた。
全員が驚いた顔でアリッサを見つめる。
「この機械は作ったやつじゃないと外せない。そして、それは帝国の提督と呼ばれてる男だと思う。そいつを倒せば……」
気まずい沈黙が流れた。
シンディがおずおずと声を出す。
「えーと、アリッサ。それはいくらなんでも無理じゃないかしら」
「わしもそいつには恨みがある。わしが1人で倒しに行くぞ」
メイトリックスが立ち上がる。
「あー、もう。全員もっと冷静になって!」
マギーが叫ぶ。
「こういう時の必殺技の魔法を教えてあげるわ」
そして、全員が落ち着くのを待つ。
「いい?どうしようも無いときはね、この魔法が有効なの」
そして、右手の人差し指を立てて、気取ったポーズを取る。
「マギー、勿体ぶらずに早く言いなさいよ」
シンディが痺れを切らす。
「へへっ、時間稼ぎよ。解けない問題は先送りにするの」
マギーがいたずらっぽく笑って言った。
拍子抜けして、全員の力が抜けた。
アリッサが少し考える。
「シンシアが凍ったままなら時間稼ぎ出来る。まずは、そっちを考えよう」
全員が頷いた。
寒くて安全で誰にも見つからない場所。
ああだこうだ言い合いながら出た結論は、雪山の洞窟だった。
「昔、勇者達で武器庫に使っていた洞窟がある、あそこなら安全じゃろう」
メイトリックスがしたり顔で言う。
「動物に見つかったら食べられちゃったりしない?」
マギーが軽い声で尋ねる。
「そのまま置いておくんじゃない。ちゃんと見つからないように埋めるんじゃ」
そう言ってメイトリックスは全員の姿を見渡した。
「その前に、まずは防寒着じゃな。特にアリッサとマギーは薄着にもほどがある」
アリッサとマギーが目を合わせて笑った。
――可愛く見えるってのも大事なのにね
「今回は女の子らしくなくていいから、思いっきり着込んでいくわよ」
そしてシンディは身震いした。
「寒い所は大っ嫌いよ」
「だったら、女たちは留守番してたらいいだろ」
カサノバが不思議そうな声を出す。
「まさか!」
「置いてかないでよ」
シンディ、アリッサ、マギーが同時に抗議した。
「明日は買い出しじゃな。出費がかさむのう」
メイトリックスがため息をつく。
「ええと、これ」
シンディが何かを取り出してテーブルに置いた。
金の燭台が二本。
「お城から持ち出して来ちゃった。だって、抜け道が暗いから、帰り道便利かなと思って」
確かに、アリッサとマギーは帰り道にこれを持たされた。ロウソクの光が明るくて安心できたのを覚えている。
「きっと、高く売れるわよ」
シンディが自慢げに言った。
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それでは、また次話で!




