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第74話 アリッサの計画

竜の魔獣クリツァが、ゆっくりと地面に降り立った。

場所は修道院前の空き地。


五人は竜の魔獣の背中から注意深く降りる。


辺りは日が落ちかけて静まりかえっていた。

修道院には人の気配もなく、去った時のままの状態だった。


――ここでエリザベスと初めて会って、裏切りを知ったんだ……

アリッサは、その時の事を思い出した。


アリッサは、シンディの姿をチェックする。

シンディは白のドレスを身にまとい、肩を出して髪を下ろしている。

「シンディ、両手を腰に当てちゃダメよ」

アリッサがシンディの姿勢を修正する。

「王女様なんだから」


「なんだか動きづらいわよ。もうちょっとお腹を緩めて欲しいんだけど」

シンディが愚痴を言う。


「喋り方もシンシアっぽくね」

アリッサの口調が強くなる。


「あらあら、怒っちゃダメよ。笑いなさい。私は、あなた達が健康で幸せだったら嬉しいわ」

シンディは透き通った声を出して、アリッサの額に軽く指で触れる。


「こんな感じ?」

得意げな声。

「双子なんだから、簡単よ」


「凄ーい。シンシアそっくり!」

マギーが声を上げる。


さて、次はメイトリックスだ。

メイトリックスは、シンシアを真似たシンディの声を聞いて、少し涙ぐんでいた。


しかし、その格好はかなり異様だ。


鎧の上から修道女のゆったりとした服をまとい、頭にベールを被っている。

エリザベスのコスプレ……


「うーん、どうだろう」

アリッサが思わず唸る。


「背筋を伸ばして、顔は上に向けて」

メイトリックスが言われた通りにする。

――なんか違うな……


「えーと、もうちょっとセクシーな感じで……」


「やっぱり、わしじゃ無理じゃ……」

メイトリックスの姿勢が崩れる。


「メイトリックス、黙ってて。姿勢を崩さないで」

アリッサがメイトリックスの泣き言を遮る。


そして、スマートウォッチをメイトリックスの右腕に巻き付けた。

「テン!エリザベスの声でしゃべってみて」


「可愛らしいお嬢さん、私の姿はどうかしら」

テンがエリザベスの声で喋る。

録音していたエリザベスの声を元にした音声合成だ。

「いいわね。メイトリックスも、声に合わせてちゃんと演技して」


「あなた達は本当にダメね。もっと分からせてあげる」

テンの声に合わせてメイトリックスがくねくねと動く。


「ねえ、やっぱりエリザベスは私の方が……」

マギーが横から口を出す。

「俺でも良かったんじゃないか」

と、カサノバ。


「マギーは小さすぎ、カサノバは大きすぎよ」

アリッサはため息をつく。

「身長さえ合えば、私が自分でやってるわよ」

「あなたの方がちっちゃいじゃない」

アリッサはマギーを睨みつけた。

――私はこれから大きくなるんだから


「じゃ、計画のおさらいね」

気を取り直して、喋り始める。


アリッサ、カサノバ、マギーは、ここで待機だ。

「クリツァも私たちと一緒にいてね」

クァ

アリッサの声に応えるように、クリツァが軽く吠えた。


「シンディとメイトリックス……いや、シンシアとエリザベスは、今からパカラで館に向かう」

アリッサは二人を交互に見て、ちゃんと聞いているか確かめる。

「館には兵士たちが残っているはず。空っぽにしたら、敵に取られちゃうからね」


「エリザベスとシンシアは居ないのよね」

シンディが不安そうな声を出す。

「多分ね。エリザベスが引っ越したと言ってたし」

そこでアリッサは一旦考える。

「でも、もし居たら、逆にラッキーかも。私たちの目的は、シンシアの居場所を突き止めることだからね」

続ける。

「二人は館に入ったら、なるべく暗い場所を選んで兵士を呼んで」


「ここからは私の出番でございますね」

テンが喋り始める。

『忘れ物を取りに来たんだが、引っ越し先……なんて言ったかな』

「忘れたふりは、こんな感じでよろしいですか」

テンの得意げな声。


「そうね。それで、場所を入手したら……」


「塔に上がって、テンが合図を鳴らせば良いんじゃな」

メイトリックスがスマートウォッチを見ながら言う。

「そう。その合図で、私たち三人がクリツァで迎えに行く」

アリッサは、マギーとカサノバを振り返る。

「二人の役割は分かってる?」


「竜が襲ってきた。逃げろー」

「助けてー、食べられちゃう!」

カサノバとマギーが同時に声を上げる。


「そして、兵士たちを館から追い出して、館を焼き尽くす」

アリッサの声が凛と響いた。

全員が頷く。


カサノバが、ヒューと口笛を鳴らした。

「館襲撃だな。復讐戦だぜ」

クァーッ

クリツァの雄叫びが響いた。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました!


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もちろん、読んでいただけるだけでも大変励みになります。

それでは、また次話で!

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