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第73話 カサノバの計画

「……我が王国だと?」

メイトリックスが低い声で呻いた。


「あいつは、そんな、わしらを戦場に追い立てるような事は言わんかった」

「黙って見送ってくれただけじゃ」


そして大きくため息をつく。


「そいつはシンシアじゃない!」

バンッとテーブルを叩く。


「しかも、シンディとシンシアが王女……だと?」

頭を抱え込む。


「わしは、どんな顔してシンディに会えばいいんじゃ……」

メイトリックスの声が小さくなっていった。


「別に、今までと一緒でいいわよ」

座っていた三人が声の方を振り返った。


アリッサは声にならない悲鳴をあげた。


そこには腕を組んで眠そうな目をしたシンディの姿があった。


「よう、シャルロット王女。思ったより元気そうじゃねーか」

カサノバが右手を上げる。


「ほんと、よく喋るわね。色々と隠したい事までバラしてくれて、相変わらず最低ね」

シンディは不機嫌な声で応えた。


「……テン、シンディはいつからいたの?」

アリッサが小声で確認する。

「カサノバ様がシンシア様と片思いだった、という所からでございますね」

――ほとんど聞かれてるじゃない……

アリッサは、自分が余計なことを言わなかったか記憶を探る。


「エゼルカイン家の双子の王女たち。素敵だわ」

マギーが嬉しそうに弾んだ声を出す。


アリッサは、慌ててマギーを黙らせようとしたが遅かった。


「シンディがシャルロット様なのね。じゃ、シンシアはジョセフィーヌ様ってことよね」


「二人はそんなに有名なの?」

つい興味を引かれて聞いてしまう。


「そうよー、凄い人気だったんだから。王が暗殺されてから行方知らずで、乱暴されて死んだと言われてたわ」


シンディがマギーを睨んで声を荒げる。

「そこのお二人さん!ゴシップ好きも、そのへんにしてちょうだい」


マギーとアリッサが一瞬にして縮こまった。


「それで、そこのお喋り野郎は何しに来たのよ」

シンディが腕を組んだままカサノバに目を向ける。


「ちょっとお願いしたい事があってね」

カサノバは少し黙って、躊躇するような素振りを見せた。

「わしにお願いだと?」

メイトリックスが警戒してカサノバを見る。


すると、カサノバは意を決して、おもむろに両手の掌をテーブルについた。

そして、そのままアリッサに向けて頭を下げた。

「お嬢ちゃんの竜の魔獣を、俺に貸してくれないか?」


「え?わたし?」

アリッサは戸惑いを隠せず目が泳いだ。


「お嬢ちゃんは竜使いだろ」

「あんなに竜の魔獣を自由に扱える奴を俺は知らねえ」

カサノバの声は真剣だった。


「いや、そんな職業無いから」

アリッサは慌てて言った。

「それに、竜の魔獣とは知り合いなだけで……」


「え?アリッサって竜の魔獣と知り合いなの?」

横を見るとマギーが目を丸くして驚いている。


――しまった。失敗……

アリッサは咳払いして呼吸を整える。


「ええと、わたしは竜の魔獣も呼べないし、会話も出来ない。でも、以前、助けた事があって、仲良しなの」


周りの反応を見る。

カサノバのがっかりした顔が目に入った。

――だって、本当のことだもん。仕方ないじゃない。


「アリッサ様、今なら呼べると思われますが」

テンの声がスマートウォッチから響いた。


「もう少ししたら、外の穴の中の、サイの魔獣を回収に来ると思われます」


確かに大きな魔獣はクリツァが回収してた。

でも、他の竜の魔獣が来る可能性も……

「もしかしたら、来るかもしれないわね」

アリッサは、渋々テンに同意した。


カサノバの顔に生気が戻った。

「みんな、俺の計画を聞いてくれるか?」

そして、シンシアのノートを意気揚々と開いて話しだした。


カサノバの計画は単純だった。

竜の魔獣で館を襲撃し、敵が逃げたら捜索してシンシアを見つけ出す。


「はい。質問」

アリッサが手を上げる。

「何だ?」

「シンシアが館にいると確信している理由は?」

「……俺の勘だな」


「もし、いたとして、館を竜の魔獣で襲撃したら、シンシアも死んじゃうんじゃない?」

「……そこは、うまく避けて攻撃する」


――これは、ダメだ。絶対に失敗する。

アリッサは得意げなカサノバを見て頭が痛くなった。


――そういえば、エリザベスも言ってた。

『引っ越しで出てきたガラクタを返してやる。館も安全じゃなくなったからな』

――つまり、館はもぬけの殻か……


気がつくと、カサノバ以外の三人が、アリッサに視線を送っていた。


ため息をつく。仕方ないか。


「ちょっと待って。もっといい計画があるわ」

カサノバが怪訝な顔でアリッサを見た。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました!


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もちろん、読んでいただけるだけでも大変励みになります。

それでは、また次話で!

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