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第68話 去りゆく

シンディが空中でアリッサとマギーを抱き寄せた。

「あなたたちは、私が守るから」

シンディの低い声。

アリッサは泣きじゃくるマギーの手をそっと握った。

そして、意を決して言った。

「逃げるのは待って」

下を指差す。

「ここからなら、魔獣達の動きがよく見える」


下を見ると、二頭のホワイトタイガーが左右に動きながら、メイトリックスとの距離を縮めていた。その直ぐ後ろに杖を構えたアマンダが立っていた。


そして、後方では三人の若い魔法使いが負傷した魔法使い達の治療を懸命に続けている。


マギーの泣き声が止まった。

手には杖が握られている。

「私、まだ魔力が残ってる。まだ戦えるわ」

ホワイトタイガーに向けて杖を振る。

杖から放たれた青白い玉は、魔獣のしっぽを掠めて地面で弾けた。


「何をしてる。早く逃げんか」

老婆アマンダが上空に向かって叫ぶ。


その背後で、負傷していた魔法使い達が次々に立ち上がる。みんな年配の魔法使いだ。


「まだ治療は終わってません」

「もうちょっと待って下さい」

「まだ動かないで」

若い魔法使い達が口々に言った。


「いいんだよ」

「このままだと、お前達もやられちまうからな」

年配の魔法使い達が返す。


アマンダの高笑いが響いた。

「親馬鹿にもほどがあるってもんさ。さっきの爆発の時も、子供たちを守って直撃を食らうなんてね。修行が足りんな」


「アマンダ、あんただって怪我してるのを隠してるだろ」

「人のことは言えんな」

年配の魔法使い達の声。


アマンダが続けて言った。

「魔力が残ってるやつは、こいつらの飛行魔法に集中するぞ」


その直後に若い三人の魔法使い達が宙に浮いた。


「メイトリックス、右!」

アリッサの叫び声。

その瞬間に一頭のホワイトタイガーがメイトリックスの横をすり抜けた。

そして、老婆アマンダに向かって飛び付いた。


「止めて!」

マギーが叫びながら攻撃魔法を放つ。

魔法の玉はホワイトタイガーの横腹を直撃した。

ぎゃんっ

魔獣が悲鳴を上げて倒れた。

「当たった……」

マギーの驚いた声。


しかし、その横をもう一頭のホワイトタイガーがすり抜けて、牙をむいてアマンダに襲いかかった。

アマンダが魔獣と一緒に倒れ込んだ。

魔獣がアマンダの首筋に噛みつく。


シンディがアリッサとマギーの顔を両手で覆い隠した。


メイトリックスが背後から魔獣を剣で斬りつける。

ホワイトタイガーの背中から血が噴き出した。

しかし、魔獣の牙はアマンダの首を捉えて離さない。

「うおおおぉっ」

メイトリックスは繰り返しホワイトタイガーを斬りつけた。

アマンダとホワイトタイガーが血溜まりの中で次第に動きを失っていく。


アリッサは強く握ったマギーの手から、力が抜けて行くのを感じた。


倒れていたもう一頭のホワイトタイガーが起き上がった。

年配の魔法使い達に一直線に走って行く。

メイトリックスが追い掛けるが、追いつけない。


「駄目。飛行魔法使ってたら、攻撃なんて出来ないわ」

シンディが悲鳴を上げる。


「俺たちがやられると、息子達が落ちちまうな」

「どうする?」

「魔獣を倒すしかあるまい」

年配の魔法使い達は杖を振って短剣に変形させた。

それを構えて魔獣を待った。


そして、ホワイトタイガーが年配の魔法使い達に襲いかかる。


魔獣は次々に魔法使い達の首筋を牙で食いちぎっていった。

同時に魔法使いが短剣を魔獣の体に叩き込む。

一人、また一人と魔法使い達が倒れていく。

そして、宙に浮いた三人の若い魔法使い達の高度が少しずつ落ちてきた。


最後の年配の魔法使いが、ホワイトタイガーに噛み付かれて倒れた。


そして、三人の若い魔法使いは地上に戻っていた。

メイトリックスが立ちふさがる。


「干し草よ!」

アリッサが突然叫ぶ。

「マギーちゃん、干し草を魔獣に降らせて!」


マギーは、言われるがままに杖を振って干し草を魔獣の上に持ってきた。


「シンディ!干し草に火を着けて」


シンディが杖を振る。


干し草が炎の塊となってホワイトタイガーに降り注いだ。

そして、魔獣の体は炎に包まれた。

ホワイトタイガーが炎の中で倒れ込んだ。

そして、そのまま動かなくなった。


「うちの可愛い子達に、随分なことをするじゃないか」

エリザベスの声。

「でも、まあいい。魔法使い連盟は、これでお終いだな」


若い魔法使い達が杖を構える。

「よくも……!」

「ひどいことを!」


メイトリックスも剣を構えてエリザベスに近づいていく。


その瞬間にエリザベスの姿が突然消えた。


アリッサは、その時、シンディそっくりの魔法使いが現れて、エリザベスを連れ去ったのを見逃さなかった。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました!


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もちろん、読んでいただけるだけでも大変励みになります。

それでは、また次話で!

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