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第63話 魔法陣

アリッサは、秘密基地に戻った。


ウルフィが置いていった機械は小さな円盤のような形をしていた。


――ウルフィのつがいの体内に、この機械が埋め込まれていたのか……


アリッサは血液で汚れた機械の表面を丁寧に布で拭って、表面を観察した。


機械の表面はツルツルしており、円盤の中央から何本ものケーブルが外に伸びていた。

そして、全てのケーブルの先端は切断されていた。


――電源用のケーブルかな。でも、電力はどうしてるんだろう。


アリッサは過去の記憶を探って、体内エネルギー発電の研究記事を思い出した。


――もしかすると、体内のエネルギーを電力源にする技術があるということ?


だとすると、バッテリーは不要で、埋め込まれた母体が生きている限り機械は動き続ける。


――こいつと同じ物が、カール爺さんや三姉妹の生き残り、そしてソゾポルの村人の体内にも埋め込まれていた。


そして、夜中の三時にブーンという音と共に、帝国に情報を送信していたのだろう。


アリッサの背筋が震えた。


立方体の機械は魔獣達を操っていた。

体内に埋め込まれた円盤状の機械は、情報を盗み取っていた。


この二つの機械は、大きさも機能も全く違う。しかし、共通しているのは帝国の悪意と技術力だ。


アリッサは、これ以上どうやって調べれば良いのか分からなくなった。


そして、テンを呼び出してみる。

「テン。この機械は電波を出して帝国と通信してるのよね」


「アリッサ様、恐らく、その推測は正しいかと存じます」

すかさずテンが答える。


「じゃあ、その受信側の場所を調べることは出来るの?」

「アリッサ様、それは無理でございます」

「何で?」

「受信側は電波を拾っているだけでございますから」

「電波を出さないと場所の特定は無理ということね」

「その通りでございます」


アリッサは、他に何か出来ないか一生懸命考えたが、いいアイデアが浮かばなかった。


こんな時は気晴らしが必要だ。


「マギーちゃんの所に行ってくる」

アリッサは、シンディとメイトリックスに声をかけて、パカラに跨がった。



アリッサは町に着くと、パカラを入り口の厩に預けた。


町の様子がいつもと違う気がした。

なんとなく落ち着かない。


人が多いのは相変わらずだが、どこか違和感を感じた。

誰かに見られている気がする。

――気のせいかな。


アリッサは、魔法の杖屋への道を急いだ。


魔法の杖屋に着くと、店内は暗くなっていた。

「閉店かな」

アリッサは、そっと扉を押してみる。

カランと音を立てて扉が開いた。


「マギーちゃん、いないの?」

返答はない。


――本当に留守なのかな。不用心ね。

――まさか、マギーちゃんに何かあったんじゃ……

そして、一気に不安に襲われた。


店内を覗き込みながら声を上げる。

「マギーちゃん、大丈夫?」


奥の方で何か気配を感じた。

アリッサは訝しげに店内に足を踏み入れる。


カチッ

何かを踏んだ気がした。


足元に目をやると、青白い円と記号が浮かび上がっていた。

「魔法陣?」

アリッサは、はっとして踵を返そうとする。

目の前が眩しい光に包まれた。


「アリッサ、逃げて!」

マギーちゃんの叫び声。


何か強い力がアリッサを襲った。

体が重い、動かない。


「確保しました」


どこからか、大勢の大人達が現れた。

そしてアリッサを取り囲んだ。


「子供だな」

「本当にこいつで合っているのか?」

「ちゃんと調べろよ」


大人達は口々に話している。


「確認できました」

「確かに、あの魔法使いの仲間です」


――あの魔法使い?シンディのこと?


アリッサはシンディの安否が気になった。

必死で力から逃れようと抵抗する。


「魔法陣の結界から逃げようとしても、無駄じゃよ」

老婆のような声。

「マギー、良くやってくれたね」

そして、しゃがれた笑い声。

「この子には、しばらく寝ていて貰おうかね」

強い光の矢。

アリッサは頭に強い衝撃を感じた。

意識が遠のいていく。


「そんな……アリッサは違うわ……」

どこか遠くで、マギーの啜り泣く声が聞こえた気がした。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました!


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もちろん、読んでいただけるだけでも大変励みになります。

それでは、また次話で!

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