第50話 連鎖
シンディから返してもらった
スマートウォッチを手に、
アリッサは、
さっそく秘密基地に引きこもった。
「テン。
シンディはどこに行ってたの?」
さっそく、
尋問を始める。
『秘密でございます』
しれっと、テンが答える。
「それは、シンディが
秘密にしてって言ったのよね」
『左様でございます』
「じゃ、何を秘密にしてって言ったか、
教えてくれる?」
『それは……』
少し、間。
『シンディ様が
町の酒場に行かれた事かと存じます』
――え?
――飲みに行ってただけ?
「テンは何か聞かれた?」
『どちらかと言うと……
聞かされた方ではないかと……』
「どういうことよ」
『シンディ様は、かなり酔われまして、
わたくしに愚痴をこぼされておりました』
「どんな愚痴よ」
『主に、
メイトリックス様と
アリッサ様の悪口を……』
アリッサは、少し傷つく。
――でも。
あんな話の後だから、仕方ないか。
カサノバの澄ました顔を思い出して、
腹が立つ。
「他には?」
テンは、淡々と続ける。
『隣の席にも
酔い潰れた方がおりまして……』
――酔っ払いばかりね。
『残りの二人の姉妹を
見捨ててしまったと、
泣いておられました』
「テン、それ……誰の話?」
――二人の姉妹を見捨てた?
ということは……
――三人姉妹?
胸の奥に、
小さな引っかかり。
記憶を探る。
三姉妹。
名簿。
――魔法使い 三姉妹。
『その罰で、
自分に会いに来た魔法使いも
捕まったと……』
「え? 何よ、それ?」
アリッサの背中に、
冷たい物が走った。
ウルフィのつがいは、群れから追放された。
カール爺さんの杖屋の客も、捕まった。
三姉妹の生き残りに会いに来た魔法使いも――
捕まった。
点と点が、
ゆっくり繋がる。
きっかけは、みんな、
館からの帰還者だ。
ゼロは?いや、テンは?
これも帰還者だ。
――ゼロは自らを初期化したんだ……
私たちの情報を守るため。
そして、アリッサは気がついた。
――これを知ってるのは、
わたしだけだ。
その夜。
アリッサは、
ベッドに寝転びながら、
頭の中を整理してみた。
帝国は、
魔獣と魔法使いを捕まえ、
館行きにする。
魔法は、
合理的じゃないから。
館行きと呼ばれる、
忌まわしい処刑方法。
竜のクリツァは、
焼かれると言っていた。
でも、
どうやって。
そして――
砦で見た、
館行きの名簿。
【魔法使い 勇者の二人組】
【魔法の杖屋 店主】
【魔法使い 三姉妹】
【黒豹型の魔獣 十頭】
【狼型の魔獣 メス 一頭】
一行目は、
提督の罠だった。
でも。
狼型の魔獣――
ウルフィのつがいは、
館から帰ってきた。
そして、
黒豹。
前の隠れ家で、
襲ってきた黒豹型の魔獣も、
館にいたのだろうか。
首輪に、
機械の箱を下げていた。
帝国に、
操られていた黒豹。
「機械の……箱」
胸の奥が、
ひやりと冷える。
――あの箱は、
帝国に回収された。
――そして、私は帝国に狙われた。
魔法の杖屋で、
マギーが言っていた言葉が
蘇る。
「それでお店の中に、
帝国の装置がないか、
ずっと探してたの」
お店の中じゃなかった。
そうすると――
アリッサの体が、
小さく震えた。
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