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第43話 作戦準備

アリッサは、

町から帰った後も、

マギーに毎日会いに行った。


「マギーちゃんの所に行って来る」


そう言って、

パカラに跨がり、

魔法の杖屋へ向かう。


シンディは、

嬉しそうに言った。


「歳の近い友達が出来て、良かったじゃない」


素直に、喜んでいる。


しかし、

メイトリックスは

少しだけ目を細めていた。


アリッサが何かを企んでいるのを

疑っているようだった。


その日の夕方。


「ただいまー」


アリッサが戻って来る。


「マギーは元気だったかの?」


「うん。

 二人でお茶を飲みながら、

 お喋りして来たの」


聞かれていないことまで、

つけ足す。


少し、早口で。


メイトリックスは、

ますます怪しんだ。


「ゼロ、アリッサとマギーは

楽しそうだったかの」


試しにゼロにかまをかけてみる。


『メイトリックス様、

 それはもう。

 昔からの

 親友のようでございます』


と、ゼロが答える。


『お二人でドーナツを

 頬張っておりました』


また、聞いてないことまで

つけ足された。


「ドーナツですって?」


とシンディ。


「ねえ、ゼロ。

 どこのお店のドーナツ?」


『シンディ様、

 存じ上げておりません。

 でも、

 チョコレートと

 ピーナツバターの

 ドーナツでございました』


シンディが身を乗り出す。


「ゼロ、今度マギーちゃんに会ったら、

 ドーナツのお店の名前と場所を

 聞いてくるのよ」


アリッサが呆れて口を出す。


「そんなの、

 私に言えば

 マギーちゃんに聞いてくるわよ」


話がどんどんずれていく。


メイトリックスは、

そっとため息をついた。



次の日から、

アリッサは出かけるのを

パタっとやめた。


秘密基地に篭り、

何やらごそごそやっている。


「ごはんよー!」


シンディに呼ばれると、

急いで出てきて

ご飯をかき込み、

また秘密基地に戻って行く。


――何か作っているようじゃの。


メイトリックスの不安は

募るばかりだった。


しばらくして、

秘密基地での作業を終え、

アリッサは一人、山の上へ出た。


空気を吸う。

頭を空っぽにする。


あの雲、

メイトリックスの口髭みたい。


あれは、

シンディのフライパンに似てる。


少しだけ、笑う。


そのとき。

遠くに、

大きな影が見えた。


雄大な翼。


クリツァだ。

でも、ゼロにはクリツァは呼べない。

音声データが残ってないから。


だったら……


「ゼロ、私の声を大きくできる?」


『もちろんでございます。

 音声の拡声は可能です』


――ダメもとだけど、やってみるか。


「クリツァァァッ」

アリッサが大声で叫ぶ。


ゼロが拡声して、繰り返す。


竜の影が、ゆっくりと近づいてくる。


アリッサの真上を旋回する。


――やった!


クリツァは、

前に館が恐ろしい場所だと教えてくれた。


あのときの声は、嘘ではなかった。


きっと、

もっと色々知っているはずだ。


「ゼロ、通訳お願い」

「クリツァに、館について知ってることを聞いて!」


少し、間。


『アリッサ様、それは無理でございます……』


少し困ったような声。


『その質問をクリツァ様にお伝え出来ません』


「え?」


『わたくし、クリツァ様の言葉が分かりません』


アリッサは、肩を落とした。

ゼロには、通訳機能が付いていないのか……


仕方なく、

大きく手を振る。


「クリツァ、会えて嬉しかった。またね」


アリッサが叫び、ゼロが拡声する。


クリツァも、応える。


もう一度大きく旋回すると、

静かに飛び去っていった。


魔獣との会話は、もう出来ない。


それでも、

私の声は分かってくれた。

何も伝わらないよりはいい。


アリッサは、

その小さな希望を胸に刻み込んだ。



ダイニングに入ると、

メイトリックスとシンディが

座って寛いでいた。


アリッサは、手に何か持って、

メイトリックスに近づいて行った。


「これ、あげる」


メイトリックスに手渡す。

胸当ての飾りのプレート。


「ほお」


メイトリックスが、

驚いて顔を上げる。


「前のは、

 黒豹に壊されちゃったから」


アリッサが

照れ臭そうにうつ向く。


メイトリックスは

嬉しさで声が出ない。


シンディが気がついて、

どれどれと覗き込む。


「パカラの顔を彫ったのね。

 可愛いじゃない」


シンディの腕輪がカランと鳴った。


メイトリックスが一瞬だけ目を細める。


「そうじゃな」


少し、涙ぐんでいた。


――秘密で作っていたのは

これじゃったか。


アリッサは、

少し後ろめたくなった。


本当は、

秘密基地での作業の目的は

これじゃない。


でも、許してね、メイトリックス。


そして。


明日が、いよいよ決行日だ。

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