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第40話 再会

ゼロが復活した。


正確には――

動くようになっただけ、だった。


「……ゼロ」


『はい、

 アリッサ様』


丁寧で、

落ち着いた声。


それだけで、

少しだけ、いらっとする。


「あなた、

 何ができるの?」


『可能な機能を

 列挙いたします』


一拍。


『時刻の表示』


そりゃそうだ。

時計だもの。


「……他には?」


『アリッサ様の状態把握』


確かに。


前の世界では、

これで体調管理をしていた。


少し待つ。


『音声での会話』


「……それ以外は?」


『恐れ入りますが、

 現時点では以上でございます』


一拍、置いて。


『実は、

 わたくしにも

 それ以上は分かりかねます』


アリッサは、

ゆっくり息を吐いた。


――何も、出来ないんだ。


それでも――

独りぼっちじゃない。


……やっぱり、行こう。


武器庫へ向かう。


壁に掛けられた剣。

メイトリックスのものだ。


両手で持ち上げる。


重い。


構える。


――遅い。


振る。


――ぶれる。


もう一度。


……全然、だめだ。


「……」


あの屈強な勇者でさえ、

兵士たちに捕まった。


なのに。


自分が、

この剣で

何ができる?


剣を下ろした。


限界だった。


でも――

何もしないよりは、まし。


山の上へ向かう。


息を整えながら、

剣を手に持ったまま立つ。


風が強い。

視界が開けている。


ここなら――


「……ゼロ」


『はい、アリッサ様』


胸が、少し高鳴る。


「クリツァを呼んで」


『確認いたします』


一拍。


『該当データが存在しません』


「……え?」


『クリツァとは、

 どなたでしょうか』


「竜の魔獣よ」


少し、声が強くなる。


「一緒に戦ったでしょ」


『申し訳ございません』


ゼロの声は、

変わらない。


『わたくし、

 その存在を存じ上げておりません』


その瞬間――


全部、理解した。


ゼロは、

オペレーターじゃない。


クリツァと会っていない。


声の記録もない。


呼び出すための

“鍵”が、ない。


「……そう、だよね」


自分で言って、

自分で納得するしかなかった。


剣を握る手に、

力が入る。


でも――


それだけだった。


何も、起きない。


剣を戻す。


部屋に戻る。


ベッドに座り込む。


胸の奥が、

じわじわと冷えていく。


「……じゃあ、

 どうすればいいの」


答えは、返ってこない。


「……ゼロ」


『はい、アリッサ様』


「もういい」


それ以上、

言葉が出なかった。


泣くのは嫌だった。


でも、

涙は勝手に出てきた。


そのまま、

服も脱げないまま、

横になる。


そして――


意識は、

静かに落ちていった。


朝だった。


物音で、目が覚める。


聞き慣れた足音。

そして、声。


「誰かいるのう」

「泥棒かしら」


アリッサは、跳ね起きた。


扉の向こうに、

二人が立っていた。


新しいフライパンを構えたシンディ。

剣を持ったメイトリックス。


シンディの、

驚いた顔。


アリッサは、

黙って

その言葉を待つ。


「あらら、

 髪の毛もぼさぼさだし、

 肌も荒れちゃってるじゃないの」


「だめよ、

 女の子なんだから」


次の瞬間、

アリッサは

シンディに飛びついた。


メイトリックスは、

何も言わず、

静かに背を向けた。




第一部 オペレーター編を最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

おかげさまで40話という区切りまで辿り着くことができました。


小説を書き始めた当初は、ここまで続けられるとは思っていませんでしたが、読んでくださる皆様のおかげで第一部を完結させることができました。


第二部 館編では、物語が大きく動き始めます。

引き続きお付き合いいただければ幸いです。

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