第39話 あなたの名前はゼロ
ゼロの修復には、もう少し時間が必要だった。
〈言語機能:修復中〉
画面に表示された文字は、なかなか消えない。
――でも、ちゃんと文字で会話出来てたじゃない。
アリッサは、スマートウォッチを腕に巻いた。
少し、ぶかぶかだ。
ベルトの長さを調整する。
そのまま部屋に戻り、布団に潜り込む。
独りじゃない気がした。
アリッサは、複雑な気持ちのまま眠りについた。
『おはようございます。お嬢様』
アリッサは目を開けた。
――朝?
――誰の声?
腕を動かすと、布団の中でスマートウォッチが小さく光っている。
「……ゼロ?」
『はい』
はっきりした声が返ってきた。
〈言語機能:修復完了〉
表示が、切り替わる。
「今……お嬢様、って言った?」
『はい』
即答だった。
アリッサは、ぴしゃりと言う。
「やめて。その呼び方」
「私は、お嬢様じゃない」
ゼロは、即座に応答する。
『承知いたしました』
――本当に分かっているのかな……
「気持ち悪いから、アリッサって呼んでくれない?」
少し、強めに言う。
『アリッサ様でよろしいでしょうか』
即答。
「様はいらないって」
今度もはっきりと伝える。
『かしこまりました。アリッサ様』
アリッサは、思わず頭を押さえた。
「アリッサで、いいのに」
小さく、ぼやく。
『恐れ入りますが』
ゼロは、やけに丁寧な調子で続けた。
『どうやら、敬称を付与して呼称するのがわたくしの仕様のようです』
『変更は不可能でございますので、ご了承下さい』
しばらく、無言。
「最悪」
アリッサが、ぽつりと言った。
『そのようでございますね』
ゼロは気にせず続ける。
『感情の悪化が、明確に観測されております』
アリッサは天を仰ぐ。
「ねえ」
『はい、アリッサ様』
「黙るって選択肢はないの?」
『申し訳ございません』
一切、申し訳なさそうではない声。
『アリッサ様が何かお話しされると、自動的に反応する仕様でございます』
アリッサは怒りを通り越して、言葉につまる。
「つまり?」
『はい』
『わたくしを黙らせるには、アリッサ様がお話しにならない必要がございます』
アリッサはゼロをにらんだ。
「それ、私が悪いみたいじゃない」
『このようなことは申し上げ難いのですが』
咳払いのような音。
『結果としては左様でございます』
これが、ゼロの完全復活だった。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました!
「続きも読んでみたい」「面白かった」と思っていただけましたら、ブックマークや評価で応援していただけると嬉しいです。
もちろん、読んでいただけるだけでも大変励みになります。
それでは、また次話で!




