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第36話 ただいま

山の中の隠れ家は、

思っていた以上に遠かった。


まずは、

砦から一番近い町まで歩く。


そこから、

旅商人を探す。


事情は話さない。

ただ、

次の町まで乗せてほしいと頼む。


運よく見つかれば、

馬車に揺られ、

次の町へ。


着いたら、

また歩く。


そして、

また旅商人を探す。


それを、

何度も繰り返した。


夜は、

町外れの森や、

草原で眠った。


最初のうちは、

旅商人が

兵士たちに通報しないか、

気が気じゃなかった。


眠りも浅く、

物音がするたびに

目を覚ました。


けれど。


誰も、

何も言わなかった。


皆、

驚くほど普通で、

驚くほど優しかった。


余ったパンをくれたり、

干し肉を分けてくれたり。


深くは聞かず、

深くも踏み込まない。


ただ、

「気をつけな」と言って、

送り出してくれた。


それだけだった。


そして――

三日目。


ようやく、

山の中の隠れ家に

一番近い町に辿り着いた。


足は重く、

身体は疲れ切っていた。


それでも。


アリッサは、

立ち止まらなかった。



山の中の隠れ家は、

ひっそりとしていた。


入口をくぐると、

少し、

ほこりっぽい匂いがした。


――やっぱり。


誰も、

いない。


アリッサの心が、

静かに沈んだ。


――私が、

黙っていなくなったら。


あの二人は、

絶対に

私を探しに行く。


そんなことは、

分かっていたはずなのに。


分かっていて、

それでも

何も言わずに

出ていった。


胸の奥が、

ぎゅっと締めつけられる。


考えないようにしても、

二人の顔が浮かぶ。


――助けに行くんだ。


そのために、

ここへ戻ってきた。


オペレーターを、

復活させるんだ。


アリッサは、

一歩、

また一歩と

隠れ家の奥へ進んだ。



厩舎に行くと、

パカラがいた。


何事もなかったように、

ご飯を待っている顔。


――パカラ、お帰り。


そう言いかけて、

少しだけ考え直す。


「ただいま。」


ひひん、と

パカラが嬉しそうに鳴いた。


そして、

当然のように

アリッサのそばへ寄ってくる。


温かい体温。

穏やかな呼吸。


しばらく、

言葉もなく

パカラに触れた。


――生きてる。


それだけで、

胸の奥が

少しだけ緩んだ。


――何か、

食べ物をあげないと。


アリッサは、

自分とパカラの分の食事を探しに、

食料庫へ向かった。


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