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第29話 別れ

ダイニングに入ると、

メイトリックスが座って待っていた。

買い出しから戻ったようだ。


でも……様子が変だ。


シンディも、

メイトリックスも、

どこかよそよそしい。


「いただきまーす」


スプーンを握って、

ご飯を口に運ぶ。


美味しい。


「シンディ、

今日のご飯も最高!」


「……そ、そう?

ありがとう」


やっぱり、

変だ。


メイトリックスは

一言も発さず、

黙々と食べている。


アリッサは

首をかしげながらも、

食事を終え、

自分の部屋に戻った。


……でも。


気になる。


そっと、

ダイニングの方へ戻る。


ひそひそと、

話し声。


「……町でな」

「帝国の兵士たちが……」

「十二、三の女の子を……」


――え?


背筋が、

ひやりとした。


さらに、

一歩近づく。


「でも、

きっと

あの子じゃないわ」


「そうじゃな。

……でも、

気をつけんとな」


アリッサは

はっとして、

二人のいる部屋から

離れた。


どういうこと?


胸が、

どくどくと鳴る。


思わず、

スマホを取り出す。


……ここじゃ、

駄目だ。


聞かれちゃう。


その時、

画面が

赤く光っているのに気づいた。


会話履歴。


アリッサは

急いで秘密基地に

駆け戻った。


震える指で、

会話履歴を、

再生する。


――メイトリックスと、

大魔法使いサリーの会話。


……知ってた。


メイトリックスは、

ずっと知ってて

黙ってた。


「……オペレーター」


呼びかける。


返事はない。


代わりに、

文字が表示された。


〈会話安全レベル:最低値〉

〈危険です〉


……え?


慌てて、

スマホをしまい込む。


その瞬間、

視界の端に

筒が見えた。


壁から、

突き出している。


――会話用のパイプ。


「二人に……聞こえてた」


声にならない声。


アリッサは、

その場で、

震えた。


安全な場所を探して、

アリッサは

厩舎に辿り着いた。


馬が、

静かに擦り寄ってくる。


そのそばに、

座り込む。


一旦、

頭を整理しないと。


メイトリックスには、

スマホのことが

ばれている。


二人に聞かれた、

さっきの

オペレーターとの会話。


記憶を、

辿る。


――コロシアムの馬車。


あれは、

提督のものだった。


そのキャビンで、

オペレーターを

使った。


――提督に……

聞かれてた。


そして、

黒豹の魔物。


回収された機械の箱。


その中の戦いの記録に、

私の……十二、三歳の少女の姿が、

映っていたんだ。


……駄目だ。


胸が、

張り裂けそうだった。


でも、

時間がない。


アリッサは、

意を決して、

名前のない馬に

よじのぼる。


このままでは、

二人を

危険に

晒してしまう。


――出ていこう。


涙が、

止まらなかった。


アリッサは、

馬の手綱を握った。


ぎこちなく、

でも、

確かに。


南の出口へ向けて、

馬を歩かせる。


アリッサは、

トンネルを抜け、

そのまま

外へ出た。


どうしよう。


馬上で、

アリッサは

考え込んだ。


風が、

頬をかすめる。


馬の背中が、

小さく揺れる。


そして――

決めた。


――森に戻ろう。


あそこが、

私の家だ。


アリッサは、

馬の手綱を

ぎゅっと握りしめた。


大丈夫。


メイトリックスが

教えてくれた通りに

やればいい。


焦らず。

力を入れすぎず。


そっと、

手綱を緩める。


馬が、

それを理解したように、

一歩、踏み出した。


……その前に。


行くところが、

一つある。


シンディの家がある町。


アリッサは、

視線を前に向けた。


そして、

手綱を引く。


馬の速度が、

少しずつ、

上がっていった。


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