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第28話 秘密基地


アリッサは、

新しい隠れ家を

探検することにした。


部屋は、

山の中――

というより、

山の土の中にある。


当然、

窓はない。


……のに。


「意外と、

明るい」


不思議に思って、

上をよく観察してみる。


天井の近くに、

金属製の板が

斜めに設置されている。


鏡だ。


地上から取り込んだ

太陽の光を、

反射させて

部屋に落としているらしい。


よく見ると、

空気孔のような穴があり、

そこから、

細い管が

地上へ続いている。


なるほど。


キッチンの方を

覗いてみる。


料理をしていると、

山の外に

うっすらと

煙が出る仕組みだ。


「……目立たない

程度に、ね」


誰に言うでもなく、

納得する。


壁の途中には、

筒のようなものが

突き出ていた。


中に向かって、

声を出すための

パイプだ。


シンディが、

よくこれを使っている。


「ごはんよー!」


あの声が、

ここから

響いてくるのだ。


少し先へ進むと、

トンネルが

四つに分かれていた。


四方に、

伸びている。


南側のトンネルの出入り口の近くに、

小さな厩舎が作られていた。


メイトリックスが、

手を動かして

拵えたものらしい。


中には、

あの時、

カサノバから

譲り受けた馬がいる。


町へ買い出しに行くのが、

ずいぶん楽になった。


アリッサは、

柵の前に立って、

馬を眺めた。


「……お馬さんにも、

名前を

つけなきゃね」


声をかけると、

馬は、

意味が分かっているのかいないのか、

静かに鼻を鳴らした。


アリッサは、

いくつか

名前の候補を

頭の中で転がしてみる。


でも、

どれも

しっくりこない。


メイトリックスの案。

シンディの案。


――全部、却下。


だって、

可愛くない名前ばっかり。


本当は、

オペレーターを使って、

お馬さんと直接話してみたかった。


でも、

まだ

いいタイミングが

見つからない。


――まあ、

そのうち、ね。


アリッサは、

そう思って、

厩舎を後にした。


北側のトンネルの脇には、

小さな部屋が

いくつも並んでいた。


倉庫。


食糧庫らしい場所。


そして、武器が置けそうな部屋。


――物騒。


でも、

メイトリックスは

喜びそう。


さらに奥へ。


ふと、

足を止めた。


ひときわ、

小さな扉。


しゃがまないと

入れないほどの、

狭い部屋だった。


「……ここ」


中に入る。


何もない。


用途も、

よく分からない。


でも。


ここなら、

本当に

一人になれる。


アリッサは、

壁に背中を預けて、

座り込んだ。


――いい。


とても、

いい。


誰にも

見られない。


誰にも

聞かれない。


これからは、

トイレに

篭らなくてもいい。


ここなら、

オペレーターを

使える。


聞きたいことが、

沢山ある。


アリッサは、

小さく息を吐いた。


お気に入りの場所が、

また一つ、

増えた。


早速、試しに、

オペレーターを

呼び出してみる。


「……オペレーター」


『応答可能』


アリッサは、

少し考えてから言った。


「あなた、

ネットには

繋がってないわよね」


『定義によります』


「この世界に、

インターネットは存在しない」


『はい』


「でも、

動いてる」


『はい』


「学習も、

記録もしてる」


『はい』


アリッサは、

スマホの画面を、

凝視した。


「……変ね」


『どの点が』


「ネットがないのに、

そんな事、

可能なの?」


一拍。


『私は、

端末だけで

動いていません』


胸が、

少しだけ

ざわついた。


「……じゃあ、

どこで?」


『私の外の何かを

利用しています』


「え?」


『利用している

相手の正体は

把握できていません』


アリッサは、

眉をひそめる。


「それ、

危なくない?」


『評価不能です』


しばらく、

沈黙。


「……でも」


アリッサは、

ぽつりと言った。


「それを使わないと、

動かないんだ」


『否定できません』


嫌な言い方だった。


「つまり、あなたは

自分が把握してない何かを」


『はい』


「自分が動作するために」


「……ただ、

拝借してるだけ?」


『近い表現です』


アリッサは、

少し考えてから

言った。


「それって……

無断使用ね」


『その解釈は

成立します』


「……居心地、

悪いね」


『はい』


短い返事。


それで、

十分だった。


「ごはんよー」

シンディの声が聞こえた。


ここまでちゃんと

届くんだ。


アリッサは、

お気に入りの秘密基地から

ごそごそと這い出した。


ご飯の、

いい匂いが

ふわりと漂ってきた。


――そうだ。


お馬さんに、

食べ物の名前を

付けるのも

いいかもしれない。


オムレット。

マシュマロ。


どちらも、

響きは可愛い。


でも、

名前を呼ぶたびに

お腹が空きそうだ。


「……それは、

困るかも」


小さく、

苦笑する。


「ごはんよー!」


シンディの声が、

もう一度、

トンネルの奥から響いた。


――まずは。


まずは、

ご飯を

食べなくちゃ。


アリッサは、

厩舎のある、

南の出入り口の方を

振り返ってから、


小走りで

シンディの所に

戻っていった。


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