エピソード 9
だけど、無駄だった。
振り向く間もなく。大きな音と共に、鈴姉の父さんの運転していた車が、ジャンボ機の巨大な翼の破片の下敷きになり、ペシャンコになっていた。それから、様々な翼の破片や車、水飛沫などが周囲に広がった。
「父さん?! ……」
「鈴姉! もう、鈴姉の父さんは間に合わない! 助からないんだ! ……見ろ! 破片と水がこっちにも飛んできた!」
落下してくる色々な破片は、どれも重量がある。それが、地面にぶち当たっていく音で、俺の叫び声と鈴姉の悲鳴が半ば掻き消されている。
俺はオーロラから、大量に捨てられてくるカプセルから、鈴姉と空港施設から安全なところに逃げ出そうとした。でも、辺り一面。アスファルトの地面は水浸しだった。
踏んでも大丈夫かわからないまま。近くでカプセルが落下していく。凄まじい噴水のような水飛沫も所々から上がって、いやというほど、鈴姉と俺は水を被った。
「くそ! こうなりゃ、俺が自動車を運転してやる!!」
俺は、駐車スペースまで走って、近くの無事な自動車を見つけると、ドアを開けてみた……「良かった! 鍵がかかっていない!」真っ青な顔で、突っ立っている鈴姉を引っ張り、自動車の助手席に押し込むと、混乱している頭を心の奥に仕舞って、運転席に乗り込んだ。
「無免許だけど、車の運転は前からしてみたかったんだ!」
俺はハイになって、吠えると、自動車をよく確認してみることにした。政府高官のおやじの乗っていた車とはまったく違う。スイフトスポーツというスポーツカーだ。でも、運転は同じだから、元々差し込まれていた鍵を回して、すぐに軽いエンジン音がしたら、アクセルを踏んだ。そのままハイスピードで駐車スペースを突っ切った。
駐車スペースの前方には、さっきまで鈴姉のお父さんが走っていた首都圏中央連絡自動車道がある。俺はこのまま星降埜神社へ行こうとした。




